【連載】輸液製剤がわかる! なぜ、その輸液製剤が使われるのか?
サードスペースってなに? 術後の輸液管理はナゼ難しい?
- 公開日: 2014/9/9
輸液管理にはさまざまな確認事項があります。ここでは、輸液を行う看護師が確実に押さえておきたい内容をまとめて解説します。
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サードスペースって何?
術後の患者さんの輸液管理では、サードスペースに移動した水分量の把握と、利尿期の輸液量に注意が必要となります。
そもそも、サードスペースとは何でしょう?
生体は、外傷や手術などの侵襲(ストレス)を受けると、生体炎症反応やストレスホルモンの分泌によって血管透過性が亢進されます。
これは血管壁の隙間が大きくなった状態で、通常は血管内にとどまっているはずの水やNaが血管外へ漏出し、細胞内でも血管内でもない場所に溜まる現象が起こります。それらが貯留している部分を「サードスペース(third space)」と呼びます。
術中~術後半日はサードスペースへの移動が続き(侵襲期)、この時期は全身に浮腫が生じて、循環血液量が減少し、結果として尿量も減少します。
そして、手術侵襲後2~3日で炎症反応が沈静化すると、サードスペースに貯留していた水とNaは血管内に戻り、尿量が増加します(下図)。これを「利尿期」または「リフィリング(refilling)」といいます。
図 侵襲による非機能的細胞外液の流れ
まずは、サードスペースに水分が移動しているという生体の仕組みを理解した上で、尿量や術前~術後に至る周術期のIN/OUTバランスをしっかりと確認します。循環血液量を保つという輸液の本来の目的を踏まえて、輸液の必要性を考えることが大切です。