冬と疾患の関連性
- 公開日: 2016/11/23
今回は、気象条件が身体にどんな影響を与えるのか、また、冬に発症・増悪のリスクが高まる疾患について解説します。
気象の変化と身体のしくみ
気温の変化による影響
まず、気温が下がると、血圧は上昇します。その要因には、「寒い」と感じること自体がストレスになること、寒冷刺激により血管が収縮することで血管抵抗が増え、かつ末梢の血液が中心に集まり、心臓の拍出力が増大することが考えられます。逆に、温度が上がると末梢血管が拡張するので、血圧は下がります。このとき、人体には血圧を調整するオートレギュレーション(自動調節機能)が働き、血管に柔軟性がある若年者の場合では、急激に気温が低下してもすぐにその変化に順応できます。
しかし、動脈硬化が進んだ高齢者では血管がなかなか拡張せず、元の血圧に戻りにくいために、高血圧による脳心血管イベントが起こりやすくなります。
さらに、気温の変化は自律神経に影響を与えます。寒さを感じると、身体は体温を一定に保つために体温を上げようとします。すなわち、交感神経を優位にして末梢血管を収縮させて、身体の中心に血液を集めようとします。また、交感神経が優位になると、体内ではリンパ球が減り、副交感神経が優位になるとリンパ球は増えます。
つまり、平均気温が低い冬場はリンパ球が減少することで、ウイルスや細菌への抵抗力が下がり、感染症にかかりやすくなります。逆に、暖かくなる春先は副交感神経が優位になりやすく、体調を崩すとうつ病などの疾患を発症しやすくなります(文献3参照)。
脳動脈瘤の破裂にも、気温は大きく影響しています。私たちは4℃の水に片手を30秒間つけるだけで、血圧が50mmHg程度上昇します。冬場の気温の低い時季に、急に寒冷刺激を加えることが発症のリスクにつながるのは、こうした血圧の変動があるからです。
気圧の変化による影響
台風などによって気圧が低下すると、身体にかかる圧力が弱まることで、身体はわずかに膨張します。その変化に対して、体内ではヒスタミンという炎症物質を放出して対応します。関節リウマチや関節痛の患者さんが、気圧が下がると痛みを訴えるのはそのためです。