気管切開とは? 気管切開の看護
- 公開日: 2017/6/21
気管切開の適応・目的
気管切開の適応・目的は以下の3つがあります。
① 長期人工呼吸器管理が必要
② 気道分泌物が多い
③ 上気道の閉塞
具体的には
① 脳卒中などの中枢神経障害や難病の神経変性障害、または抜管出来ないくらい呼吸状態が悪い
② 分泌物が多い基礎疾患、自力で痰を出すことが出来ない
③ 口から声帯までの間に何らかの異物や腫瘍、構造的な異常があって空気の通過障害がある、反回神経麻痺が両側に出た場合
という状態を指します。
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気管切開は目的により一時的なものと永久的なものに分かれます。永久的気管切開は気管粘膜を完全に皮膚と縫合してしまうので、自然閉鎖をせず発声が永久に不可能となります。一方、一時的気管切開は条件が整えば閉鎖することが可能です。カニューレのサイズを少しずつ小さくしていく方法や、カニューレに蓋をする時間を長くしていく方法があります。
気管挿管から気管切開に切り替えるまでの平均期間は8~20日と国や施設の違いによってばらつきがあり、現状では、明確な見解はありません。
気管切開の種類と位置
気管切開は手技的要素から、外科的気管切開と経皮的気管切開の2つに分けられます。どのような違いがあるのか、どの位置に作るのかを知っておきましょう。
外科的気管切開:外科的な訓練が必要とされ、気管を露出させて直視下で第2-4気管軟骨間を切開します
経皮的気管切開:簡易キットを用いて穿刺し、その穴を使って気管切開孔を作成します。
ドラマなどでよくみられる気管切開は、輪状甲状軟骨穿刺・切開といい、気管切開とは異なる位置で行われるより簡易的な方法です。
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気管切開のメリットとデメリット
■<気管切開のメリット>
・自発呼吸、人工呼吸器使用時の両方で呼吸負担が減少
・経口挿管と比べると死腔が少ない
・呼吸器との同調性が良い
・患者さんの不快感が少ない
・痰や口腔内の管理が行いやすい
・嚥下訓練が可能(嚥下機能が障害されていない場合)
・発声訓練が可能
・人工呼吸器関連肺炎の減少
■<気管切開デメリット>
・創部の感染が多い
・外科的手技が必要
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合併症
発症時期によって術中、術後早期、術後晩期に分けられ、内容も多岐にわたります。気管切開を受ける患者さんは全身状態が悪いことが多く、特に緊急性が高い場合には状況が悪い環境で行われることもあるため、合併症が増えることが考えられます。
術後すぐは、分泌物が増えることによる誤嚥性肺炎、血液の凝固による上気道閉塞が考えられます。晩期ではカフの圧迫による粘膜の虚血やびらんにより気道狭窄がみられることもあります。チューブの事故抜去も問題となることが多く、緊急時には至急ドクターコールを行います。
チューブの種類
気管切開チューブは目的に応じて使い分けをします。
カフ付き、カフ上部吸引付(気管切開直後、陽圧式の人工呼吸器を使用している場合に使用)
分泌物、血液が気管内に流れ込んでくるのを防ぎ、カフと気管支を密着させて呼吸器から送られてくる吸気ガスが漏れないようにします。この際、気管切開チューブはできる限り太いほうが低いカフ圧で確実に上気道と下気道を分離できます。分泌物が多い患者さんの場合は、カフ圧自動調整機能付きの特殊なチューブを使用することもあります。
カフ付き、カフなし(人工呼吸器から離脱を進める段階、離脱が成功した場合に使用)
人工呼吸器を装着していない時間が増えると、チューブ内の分泌物が乾燥し閉塞のリスクが高まります。離脱が成功してからも長期にわたり気管切開チューブを留置することがあり、その場合には二重管という内筒と外筒に分かれているチューブを使用することがあります。内筒のみを取り外して洗浄することが出来、交換頻度も他チューブに比べて少なく出来ます。
一方弁付きチューブ、または付けられるもの(発声訓練を行う場合に使用)
気管切開をしたまま発声訓練を行う場合、自分で気管切開チューブから空気を吸い、声帯から口腔に流して発声します。その際、呼気を声帯に流すためにカフを脱気、またはカフなしのチューブに変更します。一時的にでも陽圧人工呼吸器が必要な場合には、内筒を入れた状態ではカフ付きチューブとなり、内筒を抜いて一方弁を装着することが出来る二重管チューブを使用します。
完全に陽圧人工呼吸器から離脱しており、誤嚥による障害が生じない場合にはスピーチカニューレを使用します。カフなしで一方弁がついており、一方弁を取り外すと吸引することが出来ます。
*カフ内の空気圧は気管壁の毛細血管の血圧を越えない20~25mmHgが適切
徐々に空気が抜ける構造になっており適宜調整が必要
*経口挿管より太めのチューブを使用するのが標準
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気管切開時の吸引
吸引は、呼吸仕事量と呼吸困難感を軽減し、肺胞でのガス交換を維持・改善するために行います。そのため、定期的に行う必要はなくその都度必要性を評価することが大切です。
・バイタルサインに変化はないか(頻脈、SpO2低下)
・気管支にある喀痰は移動できるか(咳嗽の有無、体位ドレナージの必要性)
・酸素化の状態(チアノーゼ、顔色不良、表情、呼吸パターンの変化、努力呼吸の有無)
これらをもとに総合的に判断し吸引を行います。
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吸引は酸素化を悪化させる恐れがあるため、気管支に痰貯留音が聞かれたときもすぐに吸引せず、必要であれば先に高濃度の酸素を投与するなどしてから吸引を行う必要があります。人工呼吸器を使用している場合は、100%酸素を数分間投与する専用のボタンがついていることもあります。
また、痰が乾燥していると十分に吸引できないので必要時には加湿を行います。ネブライザー(インスピロン)や人工鼻(HME)を使用することで吸気の乾燥を防ぎます。
吸引は侵襲的な手技であるため、必要最低限の範囲で実施します。喀痰が気管の先の方にある場合はまず圧をかけずに進め、十分な深さまで挿入した後に圧をかけながら引き抜きます。呼吸状態が不良であるほど負荷がかかるので、時間もできるだけ短時間で行います。痰が多い場合は、末梢の痰を可能な限り中枢に集めて行うか、短時間の吸引を頻回に行うことで対応します。
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