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胃ろう・PEGとは|造設術や管理・看護のポイント(まとめ)

  • 公開日: 2020/2/18

 胃ろうやPEG(ペグ)は、在宅医療や高齢者医療などでよく耳にする言葉です。それぞれの言葉の意味や種類、看護についてみていきましょう。


胃ろう・PEGとは

胃ろうとは

 栄養の摂取方法には、経口摂取、経管栄養法、静脈栄養法などがあります。脳血管障害や嚥下障害などによって、経口摂取が困難な場合に、胃ろう、腸ろう(PEJ)などの経管栄養法や、PPN(末梢静脈栄養療法)やTPN(中心静脈栄養療法)が選択されます。

 胃ろうは、直接胃から栄養を摂取するための医療措置です。多くは、腹部に開けた孔から消化管にチューブを通し固定します。この胃ろうを造る手術のことをPEG(Percutaneous Endoscopic Gastrostomy:経皮内視鏡的胃瘻造設術)と呼びます。

目的

 胃ろうの目的は、栄養や水分を非経口的に摂取すること、胃液などの消化液を体外に排出すること、消化管減圧ドレナージなどです。

【関連記事】
胃ろうを含む経管栄養全般に関する説明はこちら
・経腸栄養(経管栄養)とは|種類・手順・看護のポイント

特徴

 胃ろうは、内視鏡を使って5~10分程度の短時間で造設でき、患者さんの負担が少なくて済むのが特徴です。また、同じ経管栄養法の経鼻経管栄養法と比べて、患者さんがチューブを引き抜く恐れが低く、食事のたびにチューブの位置を確認する必要がないため、管理が比較的簡単です。

【関連記事】
胃ろう造設術について、さらに詳しくはこちら
・第5回 内視鏡的胃瘻造設術:PEG

適応

 胃ろうの適応としては、
・脳血管疾患や認知症、神経筋疾患などで経口摂取ができない場合
・誤嚥性肺炎を繰り返す場合
・消化管の減圧ドレナージが必要な場合
などが挙げられます。また、4週間以上、経腸栄養を施行する場合はPEGの適応とされています。

禁忌

 胃ろうの禁忌としては、
・イレウス
・難治性の下痢
・循環動態の不安定
などが挙げられます。腸で栄養素の消化や吸収ができるかが問題になります。

メリット

 腸管を使用するため、腸管の萎縮が起こらず腸管粘膜が維持できます。さらに、腸内細菌も維持されるため、免疫力の低下を防ぐことができます。

 胃ろうで使用される半固形化栄養剤は、胃の蠕動運動を促し、栄養剤の胃食道逆流を予防できるため、誤嚥性肺炎の予防につながります。また、静脈栄養に比べて栄養剤にかかる費用が廉価で、経済的負担を軽減できます。

 静脈栄養で起きやすいカテーテル感染の心配がなく、長期管理しやすいのも大きなメリットです。

【関連記事】
胃ろうで使用される半固形化栄養剤についてはこちら
・第4回 半固形化栄養剤(semi-solid)

静脈栄養法との比較はこちら
・第18回 中心静脈カテーテルは定期的に入れ換える必要がある?

デメリット

 PEG造設後1~2週間は、創感染やカテーテルの抜去に注意が必要です。胃ろうカテーテルを(自己)抜去した場合、胃内容液が腹腔内に漏れ出し、腹膜炎を起こす危険があります。

 PEGを固定しているボタンやバルーン、バンパーによる過度な締め付けによって、瘻孔周囲炎や壊死性筋膜炎、バンパー埋没症候群などの合併症のリスクがあります。

【関連記事】
胃ろうの適応と利点について、さらに詳しくはこちら
・第1回 経腸栄養療法の特徴と適応

胃ろうの造設

PEGの種類

図1-1 バルーン・ボタン型

バルーン・ボタン型
特徴
・バルーンに蒸留水を入れて膨らませることで体内に固定する
・蒸留水を抜けば抜去できるため交換しやすい
・カテーテルが短く汚れにくい
・ボタンが小さいため高齢者などは開けづらい
・ボタンが小さく自己抜去しにくい

図1-2 バルーン・チューブ型

バルーン・チューブ型
特徴
・バルーンに蒸留水を入れて膨らませることで体内に固定する
・蒸留水を抜けば抜去できるため交換しやすい
・カテーテルが長く汚れやすい
・カテーテルが長く栄養チューブと接続しやすい
・カテーテル部分を引っ張り自己抜去しやすい

図1-3 バンパー・ボタン型

バンパー・ボタン型
特徴
・体内固定板がバンパーである
・多くは内視鏡下での交換になる
・カテーテルが短く汚れにくい
・ボタンが小さいため高齢者などは開けづらい
・ボタンが小さく自己抜去しにくい

図1-4 バンパー・チューブ型

バンパー・チューブ型
特徴
・体内固定板がバンパーである
・多くは内視鏡下での交換になる
・カテーテルが長く汚れやすい
・カテーテルが長く栄養チューブと接続しやすい
・カテーテル部分を引っ張り自己抜去しやすい

 PEGは、胃内固定板と体外固定板で留められ、抜けないようになっています。体外固定板はボタン型とチューブ型、胃内固定板はバルーン型とバンパー型があり、4つの組み合わせの中から最適なカテーテルが選択されます。

造設術

造設術の分類
 胃ろう造設術は、プル法、プッシュ法、イントロデューサー法の3種類があり、イントロデューサー法の変法としてセルジンガー法とダイレクト法が開発されています。内視鏡での造設になるため、開腹術を行う必要がなく、侵襲が最小限で済みます。

図2 プル/プッシュ法

ガイドワイヤー
プル/プッシュ法
1)経皮的に胃内に挿入したガイドワイヤーを内視鏡により経口で引き出す。
2)ガイドワイヤーを伝い、胃ろうカテーテルを胃内から引き出すのがプル法、口から刺し込むのがプッシュ法となる。

図3 イントロデューサー法(原法)

イントロデューサー法
1)経皮的にトロカール針を胃内に挿入し、内視鏡下で固定版を用いて胃壁と腹壁を2か所で固定する。
2)トロカール針の内筒を抜いてバルーン型の胃ろうカテーテルを挿入する。

 出血などの合併症が術後数時間内に認められなければ、内服薬は胃ろうから注入することが可能です。胃ろうカテーテルの交換は、在宅や外来でも行うことができます。

【関連記事】
胃ろう造設術の種類と術後の管理・観察についてはこちら
・経皮的内視鏡下胃瘻造設術(PEG)――術後の管理・観察のポイント

PEG造設術後の合併症についてはこちら
・第13回 胃瘻の管理と合併症

術前の看護

 胃ろう造設術前には、アレルギーの有無、既往歴・現病歴の確認、常用薬の確認を行います。特に抗凝固薬・抗血小板薬の休止が確実に行われているか確認します。めがねや指輪などの着用の有無も観察しておきます。

 手術を受けても問題ない状態かを確認するために、血液検査やレントゲンなどの術前検査が行われます。術前にそれらの検査結果がそろっているのかを確認します。

 食事の指示を確認し、当日は朝から絶飲食が守られるように本人やご家族に説明します。

 手術当日には、浣腸・下剤内服、口腔ケア、抗菌薬の投与などを行います。

術後の看護

 術後に問題となるのが、創部の感染や腹膜炎などです。それらの徴候がないか、バイタルサインやPEGカテーテルからの排液の性状・排液量、創部からガーゼへの出血量などを観察します。また、血液検査や胸部・腹部単純X線などの検査が行われます。消毒・ガーゼ交換の必要はありません。

 感染や肺炎予防のため、可能な限り口腔ケアを実施します。トラブルがなければ、術後2日目からシャワー浴を開始します。

 術後3日目までは末梢点滴による栄養補給を行い、栄養剤の投与開始は、術後1~3日目頃に少量の投与から開始します。患者さんの上体を起こし、ゆっくり投与することで嘔吐や誤嚥がしにくくなります。

 退院に向けて胃ろうのケアや経管栄養の指導を行います。多くは在宅療養へ向けた家族への指導となります。

【関連記事】
造設術の術後の管理や観察のポイント、合併症についてはこちら
・第5回 内視鏡的胃瘻造設術:PEG
・第13回 胃瘻の管理と合併症

造設時の合併症と看護

出血
 胃壁など消化管の内壁に展開する血管を傷つけることにより出血を生じることがあります。PEG造設の際には内視鏡で目視することにより、血管の多い部位を避けて穿刺しますが、部位によっては血管を傷つけ出血を生じます。

 止血は医師の処置になりますが、看護師は出血傾向となる抗凝固薬などの休薬が正しく行われているか事前に確認することが大切です。

多臓器穿刺
 胃ろう造設時には、横行結腸や肝臓などへの多臓器穿刺のリスクがあります。胃を穿刺しようとして横行結腸や肝臓を誤って損傷するケースです。結腸への穿刺では、栄養剤が直接腸内へ注入されるため、激しい下痢を起こします。肝臓への穿刺では多くは無症状のまま経過し、画像検査などの際に発見されることが多くなります。

肺炎
 術後、1~2週間は感染に注意が必要です。特にプル法、プッシュ法は口腔内をカテーテルが通るため、誤嚥を起こすと肺炎の感染リスクが高まります。術前からの口腔ケアにより、口腔内細菌を減少させておくことが大切です。

腹膜炎
 胃ろう造設時に胃壁や腸壁の誤穿刺を起こした場合、この炎症がもととなり腹膜炎に至ることがあります。また、結腸への穿刺部から便汁が腹腔内に漏れると腹膜炎となります。

 ろう孔が完成する3~4週間以前にカテーテルを早期抜去してしまった場合にも、胃内容液が腹腔内に漏れ出すと腹膜炎を起こすリスクとなるため、事故や自己抜去に注意が必要です。

 急性腹膜炎では致命的となることも多いため、腹痛、発熱、腹膜刺激症状など感染徴候の早期発見が重要です。

バンパー埋没症候群
 胃ろうカテーテルのバンパーが胃粘膜に強く接することによって、胃壁ろう孔内に埋没した状態です。創部の発赤、圧痛、排膿、カテーテルからの血性逆流などがみられます。またカテーテルの回転や上下がしにくくなります。カテーテルの再留置が必要になりますので、徴候の早期発見が大切です。

図4 バンパー埋没症候群

バンパー埋没症候群

ボールバブル症候群

 バルーンでチューブ型のカテーテルを留置したとき、十二指腸内でバルーンを膨らませたり、胃蠕動によって送り込まれるなどして、十二指腸にバルーンがはまり込んでしまった状態です。栄養剤は注入できているにもかかわらず繰り返される胃液が多い嘔吐、ろう孔からの液漏れなどがみられます。内視鏡下でのバルーン再留置が必要になりますので、徴候にいち早く気づくことが大切です。

図5 ボールバルブ症候群

ボールバルブ症候群

胃潰瘍
 術後に長期に胃から出血が続く場合、バンパーの圧迫や胃ろうカテーテルの先端が胃粘膜を圧迫してるなどして、胃潰瘍を発症することがあります。また造設術そのものがストレスとなっての発症もありえます。カテーテルからの出血、吐血・下血のほか、頻脈、冷汗など貧血症状にも注意します。

事故・自己抜去
 何らかの原因により胃ろうカテーテルが抜けてしまうことを事故抜去、患者さんが自分で引き抜いてしまうことを自己抜去といいます。胃ろうの固定が不十分であったために、完成前に早期抜去が起こることがあります。胃内容物が腹腔内へ漏出すると腹膜炎を招くリスクが高いため、速やかな外科的処置が必要です。意識状態の悪い患者さんやせん妄を来した患者さんなどでは、無意識に自己抜去を起こすことがあり注意が必要です。

肉芽形成
 造設直後の肉芽形成は、造設による物理的刺激により起こる正常な生体反応です。ただし痛みや出血などを伴う不良肉芽は、ストッパーの締めすぎや不十分な皮膚切開を原因としていることがあります。この場合は外科処置が必要となります。

【関連記事】
PEGの術後合併症と観察のポイントについてはこちら
・第13回 胃瘻の管理と合併症
・経皮的内視鏡下胃瘻造設術(PEG)――術後の管理・観察のポイント

胃ろうの管理と交換

胃ろうカテーテルの管理

 胃ろうが完成したあと、トラブルなく安全に胃ろうカテーテルを長持ちさせるためには、日々の管理が大切です。

 胃ろうカテーテルは1日に1回程度、回転させ、ろう孔との間に適度なゆるみをもたせます。また、皮膚とストッパーの間には1~2cmのゆるみをもたせて過度な圧迫を避けましょう。胃ろうカテーテルのチューブが皮膚面に対して垂直であるかどうかも大切です。斜めの場合、ろう孔をストッパーなどが圧迫していることがありますので注意して観察します。

バルーンの水

 バルーン型カテーテルの場合、バルーン内の水は自然に減少し、徐々に固定が甘くなります。1-2週間に1回は、バルーンの水の量をチェックし、交換します。バルーン内の水は、生理食塩水や水道水を使うと、変質して抜けなくなることがあるため必ず蒸留水を使います。

ろう孔周囲のスキンケア

 ろう孔やストッパーの周囲は常に清潔を保ちます。ろう孔が完成する前は、過酸化水素水と微温湯を同量に混ぜた液に浸した綿棒でストッパーを拭き取ります。ろう孔が完成した後は、微温湯に浸したガーゼで皮膚やストッパーに付着する栄養剤などの汚れを拭き取ります。

図6 胃ろう周辺のスキンケア

PEGのスキンケア
綿棒やガーゼに微温湯を浸して指に巻いて優しく拭き取る

胃ろうカテーテルの交換

器具の寿命と交換
 胃ろうカテーテルは、内部を栄養剤が通るので雑菌が繁殖しやすくなり、劣化します。そこで定期的な交換が必要です。

 交換のめやすは、ボタン・バルーン型とチューブ・バルーン型では、24時間を過ぎると交換時に保険が適用となりますが、実際には1~2か月程度で交換しています。ボタン・バンパー型とチューブ・バンパー型は4か月の使用で保険適用となりますが、実際には4~6か月程度で交換しています。

交換後の看護

 胃ろうカテーテルの交換後には誤挿入がないか観察が必須です。腹腔内誤挿入に気づかず栄養剤を注入することで、腹腔内に漏れて腹膜炎を起こすことがあります。誤挿入の確認には、カテーテル内をシリンジで引いて胃液の逆流があるか、空気を注入して聴診器で送気音の確認、内視鏡、X線撮影などが行われます。

【関連記事】
胃ろうの日常的な管理についてはこちらにも
・第13回 胃瘻の管理と合併症
・経腸栄養(経管栄養)とは|種類・手順・看護のポイント

栄養剤注入と看護

観察項目

注入前
 顔色、バイタルサイン、ろう孔周囲の皮膚の状態を確認し、話せる患者さんであれば現在の気分を確認します。可能であれば上半身を30~90度にベッドアップし、痰の貯留がありそうであれば吸引します。注入前には、カテーテル内をシリンジで引いて胃液の逆流を確認し、患者さんの氏名と栄養剤の照合を行います。

注入中
 注入容器のチューブと胃ろうカテーテルを接続してからクレンメを開け、注入速度を調節します。注入のめやすは200ml/時間程度です。

 注入中は、顔色、バイタルサイン、気分、悪心・嘔吐、むせ込み、栄養剤の注入速度を確認します。

注入後
 顔色、バイタルサイン、気分、悪心・嘔吐、ろう孔周囲の状態を観察します。また食後30分~1時間は、食道への逆流を防ぐため横にならないようにします。

 注入後の胃ろうカテーテルは、微温湯を注射器で注入してフラッシュします。イルリガートルやボトル、ルートを使用した場合は、中性洗剤を使って洗浄し、次亜塩素酸ナトリウム溶液(ミルトンなど)に浸けて乾燥させます。また、胃ろうカテーテルには、酢酸水を満たしたままにしておくと、比較的清潔が保たれます。

【関連記事】
経腸栄養法の必要物品、栄養剤の注入、水分と薬剤投与についてはこちら
・第9回 在宅経腸栄養法
・第8回 経腸栄養に必要な器具とその管理 ~ボトル、チューブ、注入ポンプなど~
・第14回 経管栄養時の水分投与と薬剤投与
・第12回 経腸栄養療法の合併症とその管理
・第11回 経腸栄養時の管理 (栄養剤の調整、器具の洗浄、フラッシュ等)

栄養剤の種類

 経腸栄養剤は、天然濃厚流動食、人工濃厚流動食の2種類に分けられます。人工濃厚流動食には、半消化態栄養剤、消化態栄養剤、成分栄養剤の3つがあります。

 疾患や病態に合わせて作られた病態別経腸栄養剤もあり、肝不全、腎不全、糖尿病、呼吸不全などの患者さん用に市販されています。
 
【関連記事】
経腸栄養剤の種類と分類について、詳しくはこちら
・第2回 経腸栄養剤の種類と分類
・第3回 病態別経腸栄養剤

口腔ケア

 PEGを造設する患者さんは嚥下状態が悪い場合が多く、唾液の誤嚥は嚥下性肺炎のリスクとなります。そこで口腔内を清潔に保つことは大変重要です。口から食事を摂取していない患者さんであっても、食事の前後には必ず口腔ケアを実施します。

【関連記事】
口腔ケアについては「口腔ケアまとめ」へ
・口腔ケア|目的と手順、看護の注意点、観察項目、症状別ケア(総まとめ)

胃ろうのトラブル

 胃ろうによるトラブルには、胃食道逆流、悪心・嘔吐、下痢などの消化器系のトラブル、事故・自己抜去、肉芽形成、スキントラブルなどがあります。

胃食道逆流

 栄養注入後は、胃食道逆流や嘔吐を起こすことがあります。そこで食後30分~1時間は上半身を挙上した姿勢を保ちます。

悪心・嘔吐

 消化管の蠕動運動が低下している場合や高齢者で胃の噴門が緩んでいる場合、食道裂孔ヘルニアを起こしている場合に嘔吐が起こりやすくなります。ガス抜きがうまくできず、胃内にガスが溜まっている場合にも悪心・嘔吐を生じることがあります。

下痢

 栄養剤の温度や注入速度などによって下痢を起こしやすくなります。注入速度を緩める、栄養剤を人肌に温めるなどの方法を実施して観察します。それでも治まらない場合は栄養剤の注入を中止し、消化管を休めることもあります。

事故・自己抜去

 意識状態が悪い患者さん、認知症の患者さん、何らかの原因によりせん妄を起こした場合などに、胃ろうカテーテルを患者さん自身が自己抜去してしまうことがあります。事故抜去では、移動や体位変換の際などにチューブやカテーテルが何かに引っ掛かり、引き抜かれるなどがあります。

 いずれにしても腹膜炎の危険がありますので、ろう孔の損傷程度を速やかに確認し、すぐ医師による処置に入ることが必要です。

肉芽形成

 造設直後ではない時期の肉芽形成は、ろう孔付近になんらかの物理的刺激が加わっていることを示します。ストッパーを緩める、カテーテルを垂直に固定する、カテーテルを引っ張らないように注意するなどを試みます。ステロイド軟膏の塗布、外科的切除などを行うこともあります。

図7 肉芽形成の原因

肉芽形成
(1)曲がった固定板によるろう孔部のめくれ
(2)固定板の接触
(3)固定板による圧迫 など

スキントラブル

 器具の洗浄不足などの不潔状態は、スキントラブルの原因になります。また瘻孔の拡大によってカテーテルの脇から栄養剤や胃液が漏れている場合も原因になります。ストッパーの締めつけによる過剰な圧迫、胃ろうカテーテルが垂直でないための物理的刺激などもスキントラブルにつながります。原因を見極め取り除くこととともに、ろう孔周囲を清潔に保つスキンケアを行うことが大切です。

【関連記事】
胃ろうの各種合併症についてはこちらも
・第12回 経腸栄養療法の合併症とその管理
・経皮的内視鏡下胃瘻造設術(PEG)――術後の管理・観察のポイント

胃ろうの中止と余命

 胃ろうは、経口摂取ができない状態でも栄養状態の維持や改善ができ、多くの患者さんの全身状態の改善に役立っています。しかし、経口摂取ができない患者さんのなかには、超高齢者、遷延性意識障害、末期の認知症患者さんなども含まれます。

 このように本人が胃ろうを拒否したり、やめるという意思表示ができない場合では、本人の意思なくむやみに生存期間を延ばしてしまう状態が続くこととなり、問題視されるようになってきています。患者さんとご家族が最善の答えが出せるよう、看護師としてどう援助していくかは大きな課題となります。

【関連記事】
終末期の意思決定について詳しくはこちら
・第31回 人生の終わりを締めくくる意思決定について考える


参考資料

株式会社メディコン:胃ろうって?(2019年12月6日閲覧)https://www.crbard.jp/ja-JP/Patients-Caregivers/Percutaneous-Endoscopic-Gastrostomy/What-is-PEG

Abbot:安心・安全な栄養療法をめざして 経管栄養の手引き(2019年12月6日閲覧)
http://products.abbott.co.jp/general/library/pamphlet/keikan_eiyou.pdf

NPO法人PDN:胃ろう入門 Q1.PEG(胃ろう)ってなんですか?(2019年12月6日閲覧)http://www.peg.or.jp/eiyou/QA/q01.html

日本静脈経腸栄養学会:part1栄養療法の種類と選択 静脈経腸栄養ガイドライン 第3版 日本静脈経腸栄養学会 照林社 2014 p17
照林社:静脈経腸栄養ガイドライン(2019年12月6日閲覧)http://minds4.jcqhc.or.jp/minds/PEN/Parenteral_and_Enteral_Nutrition.pdf

NPO法人PDN:胃ろう入門 胃ろう(PEG)とは?(2019年12月6日閲覧)
http://www.peg.or.jp/eiyou/peg/about.html

NPO法人PDN:胃ろう入門 Q6.交換は必要ですか?(2019年12月6日閲覧)
http://www.peg.or.jp/eiyou/QA/q06.html

NPO法人PDN:PDNレクチャー Chapter1 PEG 3.造設 2.術前術後管理(2019年12月9日閲覧)http://www.peg.or.jp/lecture/peg/03-02.html

高橋美香子:内視鏡的胃瘻造設術のコツとトラブル対策 日本消化器内視鏡学会雑誌 2014;56(7): 内視鏡的胃瘻造設術のコツとトラブル対策:2206-2207
https://www.jstage.jst.go.jp/article/gee/56/7/56_2198/_pdf/-char/ja

認定病院患者安全推進協議会:チューブ類挿入患者の自己(事故)抜去防止対策(2019年12月9日閲覧)
https://www.psp-jq.jcqhc.or.jp/post/proposal/714

日本コヴィディエン株式会社:PEGスキンケアポケットブック(2019年12月9日閲覧)
https://www.cardinalhealth.jp/content/dam/corp/web/documents/patient-recovery-jp/brochure/cardinal-health-jp-peg-skin-care-pocket-book.pdf

日本リハビリテーション医学会:リハビリテーション医学会研修施設における胃瘻カテーテル交換に対する実態調査(2019年12月9日閲覧)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/45/5/45_5_291/_pdf/-char/ja

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