手術室看護師(オペナース)とは ―看護師の役割、業務、関連学会など―
- 公開日: 2020/4/19
手術室看護師(オペナース)とは
手術室看護師(オペナース)とは、周術期にある患者さんが安全安楽に手術に臨めるよう、患者さんの立場に立った介入を行い、手術が円滑に遂行えるよう手術室内外で介助を行う看護師のことです。
手術室看護師(オペナース)の役割
手術室看護師(オペナース)には、役割ごとに器械出し看護師と外回り看護師があります。
器械出し看護師
器械出し看護師は、手術がスムーズに進行するよう術者を介助します。
具体的には、患者さんの術式に合わせて器材・物品を準備し、術中には展開を行います。また手術の進行状況を見ながら次に必要な物品を術者に速やかに渡せるように用意すること、術野を汚染しないよう物品を適切に扱えることなどが求められます。
表1 器械出し看護師
項目 | 内容 |
---|---|
役割 | 術式に合わせて手術がスムースに進行するよう、術者の直接介助を行う |
主に働く場所 | 術野周囲 |
業務内容 | 器材・物品の準備、滅菌期限の確認、器材・物品の展開、術者への適切な手渡しと受取り、検体の受取・保管、器材・物品の整理など |
必要なスキル | 感染予防の理解、清潔操作、術式の理解、手術の進行の見極め、器材・物品の名称・用途の理解、操作方法の理解、検体の取り扱いなど |
主にかかわる相手 | 患者さん、術者(医師) |
外回り看護師
外回り看護師は、周術期全般にかかわります。術前の患者説明・アセスメントから術中の手術全般へのサポート、術後の申し送りまでを担います。
麻酔介助・看護記録・患者さんの全身状態の観察などを行います。手術の進行状況に応じて不足物品の補充を行うこともあり、ほかの医療スタッフと連携を図りながら手術の円滑な進行をサポートします。
表2 外回り看護師
項目 | 内容 |
---|---|
役割 | 周術期全般にかかわり、手術を間接的に介助する |
主に働く場所 | 手術室全般、外来・病棟など |
業務内容 | 術前説明・アセスメント、患者の精神的支援、病棟との申し送り、看護計画の立案・実施・評価、経過記録、患者さんのモニタリング、手術台・器材など室内準備、室内環境の整備、患者さんの体位固定・体位変換、麻酔医の介助など |
必要なスキル | 感染予防の理解、清潔操作、術式の理解、手術室全般の管理、患者さんの状態把握、看護計画の立案と実施、麻酔と麻酔介助への理解など |
主にかかわる相手 | 患者さん、病棟看護師、麻酔科医など周術期スタッフ全般 |
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手術室看護師(オペナース)の業務
表3 手術室業務と主な担当看護師
業務 | 担当看護師 |
---|---|
看護計画 | 外回り看護師 |
術前オリエンテーション | 外回り看護師 |
器械・物品の準備 | 器械出し看護師 |
手術室の環境整備 | 外回り看護師 |
患者さんの受け入れ・申し送り | 外回り看護師 |
器械・物品の展開 | 器械出し看護師 |
器械出し | 器械出し看護師 |
モニタリング | 外回り看護師 |
麻酔介助 | 外回り看護師 |
看護記録 | 外回り看護師 |
患者さんの送り出し | 外回り看護師 |
業務の実際
看護計画
手術が決まると、主に外回り看護師が患者さんの看護計画を立案します。手術室看護はこの看護計画に沿って行われることが望ましいといえます。
<主な業務>
・患者さんの病状の把握
・患者さんと家族の状態の理解
・術式、術前術後のリスク、合併症など周術期全般への理解
・問題点の抽出、看護計画の立案、実施プロセスの決定
・(術後の)分析・評価
患者さんの術前の状態を正しく把握し、術式や患者さんのニーズに応じた術中看護計画を立案し、手術記録に記載します。この手術記録には、術前オリエンテーションから術後訪問までの周術期の様子を記します。ケアの実際の証明や継続看護を実践するための手段として有効です。
患者さんへの看護計画の説明は、主に術前オリエンテーションで行います。事前説明を通して患者さんが手術室看護師(オペナース)の行うケアをイメージできるようにすることで、手術に対する不安の軽減が図れるといえるでしょう。
術中は、看護計画に基づいたケアの実践を行い術中の経過と評価を看護記録に記入します。術中の皮膚トラブルや術直後の不穏といったイレギュラーに対しても、適宜看護計画を追加し対応していきます。
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術前オリエンテーション
術前には、主に外回り看護師が、患者さんや家族に向けて術前オリエンテーションを実施します。手術外来で行うこともあります。主な業務は次の通りです。
<主な業務>
・患者さんの状態のアセスメント
・医師が行う手術説明への理解の確認
・医師が行う術後合併症等への理解の確認
・術前術後の流れの説明
・禁煙指導
・術前術後の呼吸訓練指導
・術前術後の栄養指導
・服薬状況と休薬等の指導と確認
・コミュニケーションと心理的支援
術前オリエンテーションは、患者さんが抱く不安の軽減と術後の合併症予防を目的に行います。患者さんだけでなく家族も含めた情報収集を行い、在宅-病棟-手術室-病棟-在宅の継続看護に努めます。また、合併症予防として、禁煙指導、栄養指導、呼吸訓練などを開始します。術後の状態や起こり得る事態に対する対処法などをあらかじめ説明しておくことで、患者さんが自分の状態をイメージできるように関わることが大切です。
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器械・物品の準備
手術の前には、主に器械出し看護師が術式や手術部位に合わせた器材・物品の準備を行います。主な業務は次の通りです。
<主な業務>
・患者さん・術式・手術部位に合わせた器機・物品の準備
・滅菌状態の確認・滅菌期限の確認
・破損などのチェック
・個数チェック、ガーゼカウント
術式の理解とそれに見合った器械・物品を把握することが求められます。何千種類とある器具・物品の中から、患者さんや手術部位に合わせた器械・物品を過不足なく準備し、手術の進行状況に応じて術者に必要な器械や物品を渡せるようにするためです。
器械・物品の個数チェックやガーゼカウントも大切な業務です。外回り看護師とダブルチェックで行うとよいでしょう。
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手術室の環境整備
手術室の室温・騒音・照明などは、侵襲を受ける患者さんの心理面や身体状態に影響を与えます。手術室の環境整備は主に外回り看護師が担います。
<主な業務>
・術式に合わせた手術台やモニター等の医療機器の点検と適切な配置
・室温調整(26~28℃程度)
・騒音調整(音楽を流す等)
・照明(無影灯)の配置調整
手術中はモニターなどの医療機器のコードや配置などが術者の術野や行動の妨げにならないように注意し、適切な位置に配置することが大切です。また、ほぼ裸の状態で無影灯の照射を受け続けながら手術を受ける患者さんの体温調節を考え、あらかじめ室温を調整することが大切です。
局所麻酔などの場合は、患者さんにも周囲の音や声がよく聞こえ、不安を増強させる恐れがあるため、騒音の遮断とともに音楽を流す等の配慮が有効です。
患者さんの受け入れ
病棟から手術室に送られる患者さんの受け入れ時、状態について病棟看護師から申し送りを受けます。これは主に外回り看護師の役割です。
<主な業務>
・患者さんの病状
・患者さんの病態や手術への理解
・手術への受容度の理解
・術前検査・処置・訓練などの進捗度
・術前術後のリスクの確認
・患者さんの心理状態の把握と援助など
患者さんの状態をよく理解し、安全安楽な状態で安心して患者さんが手術に臨めることを目指します。術前検査・処置・訓練などの進捗度を把握し、手術や術後合併症に対するリスクを事前につかむことも目的の1つです。また、手術に挑む強い不安を抱えている患者さんの心理状態を理解し、タッチング・声がけなどで心理的支援をはかります。
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器械・物品の展開
術中の看護師の大きな業務の1つとして、器械・物品の展開があります。これは器械出し看護師の中心的な業務です。
<主な業務>
・器械・物品の使用順に沿った配置
・使用する器械の組み立て
・摩耗や劣化・緩みなどの確認
・個数チェック、ガーゼカウント
器械出し看護師は、術中に器械・物品を展開し、手術がスムーズに進行するように支援します。無菌操作で器械・物品を開封し、術式に従い、使用する順番に従って配置します。その際、摩耗や劣化、緩みなどにも注意します。また急な術式変更なども視野に入れて準備を進めます。
器械出し
術中は、手術がスムーズに進行するように、術式をよく理解して術者に器械出しを行います。これは器械出し看護師の中心的な業務です。
<主な業務>
・必要な器械・物品の術者への提供
・手術の進行の見極め(予測に沿った器械・物品の準備と提供)
・術者とのコミュニケーション
・術野の観察
・個数チェック、ガーゼカウント
手術中は、術者とつねにコミュニケーションをはかり、適切なタイミングで適切な器械出しを行うことが手術の成功に影響を及ぼします。そのためには、器械出し看護師は、術野がよく把握できる場所に位置し、状況を把握しながらその後の手術の予測を行っていくことが必要になります。
生体情報のモニタリングモニタリング
手術中は各種生体情報モニターにより、患者さんの状態をモニタリングし続けます。これは主に外回り看護師の役割です。
<主な業務>
・患者さん状態の把握に基づくモニタリング
・生体情報モニター(パルスオキシメータ、血圧モニタ、心電図モニタ、脈拍モニタ、呼吸数モニタなど)のモニタリング
・急変徴候や急変の発見と報告
手術中の患者さんの生体情報モニタリングは、外回り看護師の役割です。手術がスムーズに進むよう、術中の患者さんの生体情報のモニタリングを常に行い、記録を行います。また急変徴候などがあった場合は、すみやかに術者に伝えます。
麻酔介助
患者さんへの麻酔がスムーズに行われるよう、外回り看護師は麻酔導入時に、麻酔科医の介助を行います。
<主な業務>
・麻酔に伴うリスク(意識障害、嘔吐、呼吸困難、咽頭痙攣など)
麻酔にあたっては、麻酔方法や患者さんの身体状態により、合併症のリスクが生じます。そこで外回り看護師は、麻酔方法と患者さんが抱えるリスクをよく理解し、合併症の防止に努めることが大切です。また麻酔の介助にあたっては、麻酔科医とのコミュニケーションをはかり、麻酔のスムーズな実施を支援します。
周術期看護記録
周術期の記録は、主に外回り看護師が行います。看護記録には一般的な経過記録とともに、急変時には時系列に沿った看護記録が重要な役割を果たします。
<主な業務>
・経過記録
・急変時には急変を認識した時点から経時記録
・経時記録には、処置・治療の担当者・施術と日時を記録
患者さんの送り出し
主に外回り看護師の業務となります。手術を終えた患者さんを病棟看護師に注意事項とともに申し送りします。
<主な業務>
・手術の結果
・術後の注意点
・予測される予後・合併症と注意点
手術が終了した患者さんの送り出しでは、病棟看護師へ申し送りを行います。具体的には、患者さんのアセスメントと看護計画、術中の経過と問題点、継続看護に必要な情報などです。病棟看護師は手術中の患者さんの様子がわからないため、術中・術直後の経過をきちんと申し送ることで、シームレスな医療が可能となります。
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手術室看護師(オペナース)になるには
手術室看護師(オペナース)になるためには、手術室に配属されることが必要です。看護師免許を取得していれば誰でも可能性はありますが、状況を先読みして動けるスキルや緊迫した状況のなかで他職種と協働できるコミュニケーションスキルなどが求められやすいといえるでしょう。
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手術室看護師(オペナース)としてのスキルアップ
手術室看護師(オペナース)としてスキルアップしたい場合は、手術看護認定看護師を目指す道もあります。そのためには、5年以上の実務経験と手術看護分野で3年以上の研修を積み、認定看護師教育課程の修了が必要です。そして、認定看護師認定審査に合格すると日本看護協会の認定が受けられます。2020年度からは、新たな認定看護師教育として特定行為研修を組み込んだプログラムがスタート予定です。
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手術室看護師(オペナース)が関連する学会
手術室看護師(オペナース)に関連する学会には、「日本手術看護学会」や「日本手術医学会」があります。これらの学会ではさまざまな研究テーマの論文や文献などが多数発表されており、研究助成や教育セミナーの開催も行われています。
・日本手術看護学会:http://www.jona.gr.jp/
・日本手術医学会:http://jaom.kenkyuukai.jp/information/
参考文献
・徳山薫他:手術医療の実践ガイドライン第3版 第6章.周術期看護最終稿(1104)(2019年12月24日閲覧).日本手術医学会:http://jaom.kenkyuukai.jp/images/sys%5Cinformation%5C20181120155508-DC22337D3B43F1134509959A816640791F08779816FC125E6E6A8CAA670C8342.pdf
・2025年に向けた看護の挑戦 看護の将来ビジョン.いのち・暮らし・尊厳を守り支える看護(2019年12月24日閲覧).日本看護協会:https://www.nurse.or.jp/home/about/vision/pdf/vision-4C.pdf
・新たな認定看護師制度 制度設計(2019年12月24日閲覧).日本看護協会:https://www.nurse.or.jp/nursing/cn/kiban/pdf/seido.pdf
・日本手術医学会:http://jaom.kenkyuukai.jp/information/
・日本手術看護学会:http://www.jona.gr.jp/index.html
イラスト提供:イラストAC