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【連載】睡眠時無呼吸症候群の病態とケア

6.睡眠時無呼吸症候群のためのCPAP治療に関するQ&A

  • 公開日: 2021/4/25
 事例 追突事故を起こしたAさんは、S病院の内科で検査を受けて睡眠時無呼吸症と診断されました。治療に乗り気ではありませんでしたが、医師から睡眠時無呼吸症を放置することによって、持病の高血圧や糖尿病が悪化するだけでなく脳血管疾患の危険性が高まると説明され、CPAPの処方を受けました。外来で説明を受けて外来に通院して3カ月になります。

最終回なので、今回はこのような患者さんからよく質問されることや、医療者側の疑問などにお答えします。


無呼吸症候群を放置するとどうなるかについてはこちら
2.睡眠時無呼吸症候群の合併症(睡眠時無呼吸症候群を放置するとどうなるか)について知ろう


睡眠時無呼吸症候群のためのCPAP治療に関するQ&A

患者さん:毎月受診するように言われたけど、だいたいどのくらい通院したら治療が終了しますか?



治療して完治が見込める無呼吸症候群もまれにありますが、無呼吸にならずに眠るためには、継続した治療が必要となります。以下のように患者さんに具体的に説明しましょう。


 睡眠時無呼吸症候群は、閉塞性ならば喉や鼻の形態が原因で、中枢性ならば何らかの中枢神経の問題が原因で起こります。近眼の人が眼鏡をかけると見えるようになるけど近眼は治らないように、CPAP療法は無呼吸という症状が起こらないようにする「対症療法」なので、病気の原因を直す治療ではないのです。だから、無呼吸にならずに眠るためにはずっと継続して治療が必要です。


 治療して完治が見込める無呼吸症候群もまれにあります。例えば扁桃腺が大きく腫れている方や、始めたときに肥満がひどかった方などは、CPAPの治療を開始する前にその他の治療のオプションについて医師から説明があったと思います。思い出せない方は、遠慮なくもう一度医師に尋ねてみてください(聞きづらければ私からちょっと声をかけてみましょうか、という対応も大切です)。


 無呼吸の原因が治療できない場合、CPAPによる対症療法の必要性は人によって違います。例えば心臓の疾患などを持っていて、無呼吸から起こる低酸素血症が持病の悪化を招く危険がある方は、できるだけ治療を継続することで心臓の疾患の悪化を防ぐことができます。また、職業が自動車や作業機械の運転など眠気によって重大な危険をもたらす可能性がある場合も治療の中断は勧められません。


 ただし、無呼吸の重症度も軽症から重症まであり、そこから自分の健康状態に及ぼす影響も人によって違います。「治療がつらい」と感じる場合には、主治医やその他の医療者になぜCPAPを続けることがつらいのかを説明し、口腔内装具など他の治療法についても検討して自分に合った方法を相談して決めていきましょう。


患者さん:別の病気で検査入院するときにはCPAPを持っていくように言われたけど、呼吸と関係ない病気のときは家に置いていってよいですよね。



CPAP療法を行っている場合は、検査入院でも基本的にCPAPを持っていってもらうように伝えます。患者さんには次のように説明しましょう。



 結論からいうと、どんなときでもCPAPは持ち歩いていただく方があなたの身体のためになります。特に検査入院であれば身体のコンディションを整えて検査を受けていただくほうがよいでしょう。予定を立てて入院することになった場合には、CPAPを持参することをあらかじめ伝えておくとスムーズです。自分で設置して使用できる場合でも、電源が必要であることや、多少の作動音があるため、入院に際しては医師や看護師に「入院中、CPAPを使います」と伝えることが大切です。


 緊急入院などでCPAPを持参できなかった場合には、できるだけ早く「自宅ではCPAP療法をしている」ということを病院のスタッフに伝えてください。病院内にはいろいろな医療機器がありますが、睡眠時無呼吸の治療用のCPAPは専用機なので同じ機材がすぐに手配できるとは限らないので注意が必要です(専用機のほうが睡眠中の呼吸に合わせやすいように調整されています)。


患者さん:花粉症があるので鼻詰まりがひどく、その時期はこういう治療は無理だと思います。



花粉症等のアレルギー症状がある方には、具体的な対策を伝えます。患者さんへの説明は次のようにするとよいでしょう。



 鼻のアレルギー症状がある方にとってCPAP療法はつらいことも多いです。花粉症の方であれば帰宅した直後は症状がひどいと思いますので、寝室に花粉のついているコートなどの服を持ち込まないような対策が大切です。また、就寝前に使用する点鼻薬などはCPAPを装着後に効果が出て、安眠につながります。早めの受診で適切な薬物療法を受けて症状をコントロールしましょう。


 鼻詰まりの症状がひどい場合には、その時期だけ口呼吸が可能なCPAPマスクを使います。マスクの変更は提供している業者によって対応が違います。時間がかかる場合もありますので、早めに相談窓口に電話するか、または病院で受診の際に相談してください。


 機種によってはCPAPの機器花粉用のフィルターを付けられるものがあります。フィルターは自費で購入になりますが、症状がひどい方は業者の電話相談窓口へ連絡してご自分の機器がフィルター対応かどうかを確認しましょう。


患者さん:冬の間はCPAPの機器の近くに加湿器を置いてよいですか?



花乾燥が気になる患者さんには、加温加湿器の使用を勧めます。



 冬期間の乾燥はつらいものですが、外気の気温が低い冬期は室内に設置する加湿器でどんなに加湿しても十分な加湿効果は得られにくいのが現実です。CPAP装置には一体型または別添えで加温加湿器という専用の高性能加湿装置を設置できるものが多くありますので、室内に置くよりもこちらをお勧めします。加温加湿器を付けるには医師の処方箋が必要なので、受診時に医師に希望を伝えてください。専用の加温加湿器を取り付けられない場合には、取り付けられる機器に変更していただくことをお勧めします。この場合にも処方箋が必要になります。


 加温加湿器を装着するとCPAPのホース内に温かく湿った空気が流れるため、寝室の気温が低い場合には結露しやすいという問題が生じます。その場合にはホースを温めることで解決できます。簡単な方法はホースを布団の中に引き込んで、自分のおなかや胸の上を通るようにして温めることです。ホースにタオルなどでカバーをつけてもよいでしょう。また、機器によってはホースの周りにヒーターが組み込んであるものを加温加湿器と一緒に使えますので、これで解決できます。


看護師:CPAP療法の患者さんは予約のキャンセルや無断で受診しない方が多くて困っています。結局やめてしまう人が多いのですが、未受診の対策はどうしたらよいでしょうか。



受診できなかった当日、または翌日にでもフォローの電話をするようにしましょう。



 睡眠時無呼吸症候群の患者さんの多くは成人から老年期の初期にあり、発達段階の特徴から見ても社会的に責任のある立場であることが多く、心理的に自律した行動をする時期です。つまり自分の健康管理に関しても「自分で考え、自分で決め」ます。そのため、医師などの指示にそのまま従うということはなく、その治療は自分にとって良いか悪いか、受け入れやすいかどうか、やらないとどうなるのか、などを考えて決めます。もし、治療がうまくいかない場合でも、医師やその他の医療職者から指導を受けただけでは行動が変わらない人も多くいます。


 自律した成人である患者さんは、自分に必要だと考えればどうやったらそれができるかを考え、調整する力を持っています。まずは、患者さんとのコミュニケーションを通して、疾患と合併症について、治療法とトラブル時の対策について、何が不足している情報なのかを引き出して確認し、そのうえで必要な情報を提供しましょう。


 無断未受診はそのままでは解決できません。患者さん側に「連絡しづらい理由」があることも多いので、可能な限り当日のうちに、ダメでも翌日には一度電話などで連絡し、様子を尋ねて予約の取り直しをしてください。患者さん側も連絡できなかったことを心苦しく思っていることが多いので、土壇場でのキャンセルをとがめるよりも“心配してましたよ”という流れで連絡することが大切です。「連絡がついてよかったです。体調不良ではありませんか? よろしかったらこの電話で予約を取り直しましょう」と積極的に勧めましょう。


 このような電話は、誰がかけるか決めておかないと、当日の対応はできません。私の経験上、看護師よりもできるだけ事務職員がかけるほうが全体的にスムーズに進みます。電話でマスクの相談などが始まると時間がかかるだけでなかなか解決にはつながりません。事務員さんがあくまでも安否確認と予約の取り直しというスタンスで電話をし、マスクフィッティングや病態に関する相談など複雑なことはできるだけ「来院して専門職に」相談するようにしてもらいます。「電話をいただければ何度でも予約を取り直ししますよ」という姿勢で対応するとよいでしょう。


看護師:最近入院の際にCPAPを持参してくる患者さんがときどきいますが、患者さんが自分で操作しているから私はどうしたらよいかわかりません。任せて大丈夫なのでしょうか。



患者さんご自身に設定してもらってかまいません。ただし、ケアを提供する看護師としてある程度の知識はもっておくことが大切です。また、トラブルが起こったときに備えて、臨床工学技士にも伝えておくとよいでしょう。



 基本的には患者さんご自身に設定していただいて大丈夫です。ただ、中には「業者さんが自宅にセットしてくれてから一度も動かしたこともない」、という患者さんもいますので、その場合には注意が必要です。入院した患者さんには全員に「自宅でCPAPなどの医療機器を使用しているか」と確認する必要があります。自分で取り扱うことが心配ならば、患者さんやご家族から業者に連絡して病室にセッティングを依頼してもらいましょう。


 入院患者さんが自分で持参した医療機器を病室内で使用する場合、病院の臨床工学技士に連絡をするようになっている施設もあると思います。そのような取り決めがない施設でも、万が一のトラブルに備えて一報しておくことをお勧めします。


 患者さんが持参するCPAP装置について、ある程度のことを知っておくことは病棟でケアを提供する看護師として大切なことです。機械には連絡先が明記されていることが多いので、そちらに連絡をすれば業者が機器の説明をしてくれます。連絡先が見つからない場合には、まず院内の臨床工学技士に相談してみましょう。業者への連絡先を探してくれたり、臨床工学技士が説明をしてくれることもあるでしょう。それも難しければ、患者さんにCPAPを処方してもらっている医療機関を聞き、そちらに連絡して患者さんにCPAPを提供している業者を確認し、連絡してみてください。


 業者さんや臨床工学技士がCPAPの説明会を開いてくれたら、自分が患者になったつもりで「どこがスイッチか」「外したらどうやって止めるのか」「水はどこから入れるのか」「途中で外れたらどうするのか」など、詳しく聞いてみましょう。患者さんの気持ちになるためにはマスクの試着も大切です。一番弱い圧力にしてもらい、マスクを着けて軽い呼吸をして、眠ったような状態となって体験しましょう。


 患者さんによって「CPAPを着けるとよく眠れる」とポジティブに受け止めている人と、「CPAPはつらいけど仕方がない」ととらえている人がいます。CPAPを使った感触を知ることで、患者さんへの受け答えがしやすくなるでしょう。


 6回にわたって主に閉塞性睡眠時無呼吸症候群の治療に使用するCPAP療法について、病態・検査・治療まで、順に説明してきました。慢性疾患の中では比較的新しい治療法なので、まだ必要な患者さんすべてに行き渡っているとは言えませんし、医療従事者も十分理解できていないことも多い治療法です。これからも快適で安全な治療を目指して、興味を持って取り組んでいきましょう。




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