1. トップ
  2. 看護記事
  3. 医療・看護技術から探す
  4. 疼痛ケア・疼痛管理
  5. 術後痛に対してペンタゾシンを頻用している患者さんへの注意点は?

【連載】術後疼痛管理のQ&A! 皆さんの疑問にお答えします!

術後痛に対してペンタゾシンを頻用している患者さんへの注意点は?

  • 公開日: 2023/7/1

Q 術後数日経っても患者さんがペンタゾシン静注を希望しています。頻用することでの注意点はありますか?

A 強力な鎮痛効果がありますが、ある程度の量を入れても鎮痛効果には限界(天井効果)があります。また鎮静や呼吸抑制の副作用にも注意が必要ですし、長期間の投与では薬物依存を起こす可能性があります。

 ペンタゾシン(商品名:ペンタジン®︎、ソセゴン®︎)は非麻薬性オピオイドで、主にκオピオイド受容体に作用し、μ受容体には拮抗的(もしくは部分的)に作用します。この特徴から最大投与量を超えて投与しても、その鎮痛効果には有効限界(上限があるので、天井効果と呼ばれます)があります。

 オピオイドのμ受容体、κ受容体への薬理作用ですが、双方とも鎮痛効果を示しますが情動への影響としてμ受容体では多幸感を有するのに対し、κ受容体では不快・嫌悪感を生じると言われています。また呼吸抑制作用はμ受容体に比べκ受容体のほうが弱いと言われています。モルヒネやフェンタニルなどの麻薬性オピオイドはμ受容体に作用します。

 今回のような症例ではマルチモーダル鎮痛の観点から、アセトアミノフェンやNSAIDsの使用をベースに、必要時ペンタジンの投与を検討するのが望ましいと考えられます。また連日ペンタジンを3〜4時間ごとに投与を要するような強い創部痛がある患者さんには、鎮痛効果の面ではより強力な麻薬性オピオイド(フェンタニルやモルヒネ)によるIV-PCA(Intravenous Patient Controlled Analgesia)に変更した方が望ましいケースもあります。ペンタジンの連用が続きそうな場合には、早めに医師に相談してみましょう。またペンタジンとモルヒネを併用すると作用が拮抗することがあるので注意が必要です。

 通常術後患者さんへの使用は短期間なので問題になりませんが、慢性膵炎や術後慢性痛など長期間使用した場合には薬物依存(精神依存や身体依存)を起こす可能性があります。モルヒネなど麻薬に比べると依存は少ないものの、非麻薬製剤のため医師が処方しやすい点もあり漫然と連用されると依存に繋がる可能性もあります。術後にペンタジンの使用を要求してくる患者さんは時折おりますが、依存が懸念されるのであれば患者さんの痛みの訴えに加えて医療者目線でも客観的な痛みの評価をしましょう。またエビデンスに基づいたケアの視点からも、他の鎮痛薬を併用する必要性や短時間の鎮痛効果であることなどを患者さんに伝えながら、より良い術後疼痛管理が目指せれば理想です。


この記事を読んでいる人におすすめ

カテゴリの新着記事

ふらつきがみられる患者さんへの看護計画

術後に起立性低血圧が生じてふらつきがみられている患者さんへの看護計画  起立性低血圧が生じると、ふらつきやめまいといった意識が朦朧としたり意識消失が生じることがあります。立ち上がった際に見られるもので、軽度であれば数秒から数分で症状は消失しますが、起立性低血圧が改善しない場

2024/9/17