再生不良性貧血の重症度基準
- 公開日: 2023/8/9
再生不良性貧血の重症度基準は何を判断するもの?
再生不良性貧血の重症度基準は、再生不良性貧血の重症度を評価するためのスケールです。
再生不良性貧血は、汎血球減少と骨髄低形成を引き起こす疾患です。成因により、先天性と後天性に大別され、後天性はさらに、原因不明の特発性と薬剤・化学物質・放射線などによる二次性とに分けられます。予後や治療方針は重症度によって異なり、輸血や重症感染症予防が必要になるケースもあります。重症な場合には命にかかわるおそれもあり、再生不良性貧血の重症度基準を用いて正しく重症度を評価し、適切な治療につなげていくことが大切です。
なお、再生不良性貧血の重症度基準は、医療費助成制度の対象になるかを確認する際の指標としても活用されています※。
※医療費助成制度の対象については、「再生不良性貧血の重症度基準(平成16年度修正)」が用いられている1)
再生不良性貧血の重症度基準はこう使う!
再生不良性貧血の重症度基準では、血液検査の結果(網赤血球、好中球、血小板数)から再生不良性貧血を軽症~最重症にスケーリングします(表)。
表 再生不良性貧血の重症度基準(平成29年度修正)
stage 1 | 軽症 | 下記以外で輸血を必要としない |
---|---|---|
stage 2 | 中等症 | 以下の2項目以上を満たし、 |
a | 赤血球輸血を必要としない | |
b | 赤血球輸血を必要とするが、その頻度は毎月2単位未満 | |
網赤血球 60,000/μL未満 | ||
好中球 1,000/μL未満 | ||
血小板 50,000/μL未満 | ||
stage 3 | やや重症 | 以下の2項目以上を満たし、毎月2単位以上の赤血球輸血を必要とする |
網赤血球 60,000/μL未満 | ||
好中球 1,000/μL未満 | ||
血小板 50,000/μL未満 | ||
stage 4 | 重症 | 以下の2項目以上を満たす |
網赤血球 40,000/μL未満 | ||
好中球 500/μL未満 | ||
血小板 20,000/μL未満 | ||
stage 5 | 最重症 | 好中球 200/μL未満に加えて、以下の1項目以上を満たす |
網赤血球 20,000/μL未満 | ||
血小板 20,000/μL未満 |
かつては、軽症・中等症・やや重症・重症・最重症の5段階にスケーリングされていましたが、平成29年に行われた基準の改定によって、stage2が輸血を全く必要としない「stage2a」と輸血を要する「stage2b」の2つに分けられることになりました2)。
また、stage5の最重症例のなかには、好中球を増やすために顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)を投与しても反応がみられず、好中球が実質0のケースがあります。分類としては記載されていませんが、このようなケースは劇症型と定義され2)、3)、重症感染症を合併している場合が多く、まずは抗菌薬や抗真菌薬による感染症の治療が必要となります4)。
再生不良性貧血の重症度基準の結果を看護に活かす!
再生不良性貧血は重症度により治療方法が異なるため、患者さんの看護にあたるときは重症度を正しく把握するようにしましょう。
Stage1と2aは日常生活を送るうえでほとんど支障がないことから、以前は無治療での経過観察が勧められていました。しかし、現在では積極的に治療することが重要とされ、早期からシクロスポリン(CsA)の投与などが検討されます5)。
Stage2b~5では、年齢(40歳未満か40歳以上か)、造血幹細胞移植(骨髄移植)の希望や適応の有無などで治療方法が異なり、移植を実施する場合は身体的・心理的負担がより一層大きくなることが考えられます。患者さんや家族が不安に思っていることをしっかりと聴取し、医師からの説明でわからないことがあれば改めて説明の場を設けるなど、細やかな支援が求められます。
引用文献
2)厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業 特発性造血障害に関する調査研究班(研究代表者 三谷絹子):再生不良性貧血診療の参照ガイド 令和4年度改訂版.p.3-4.(2023年7月20日閲覧) http://zoketsushogaihan.umin.jp/file/2022/Aplastic_Anemia.pdf
3)日本造血細胞移植学会:造血細胞移植ガイドライン 再生不良性貧血(成人) 第2版.p.1(2023年7月20日閲覧) https://www.jstct.or.jp/uploads/files/guideline/02_04_apla02.pdf
4)日本造血細胞移植学会:造血細胞移植ガイドライン 再生不良性貧血(成人) 第2版.p.5(2023年7月20日閲覧) https://www.jstct.or.jp/uploads/files/guideline/02_04_apla02.pdf
5)厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業 特発性造血障害に関する調査研究班(研究代表者 三谷絹子):再生不良性貧血診療の参照ガイド 令和4年度改訂版.p.12-20.(2023年7月20日閲覧) http://zoketsushogaihan.umin.jp/file/2022/Aplastic_Anemia.pdf