1. トップ
  2. 看護記事
  3. 診療科から探す
  4. 皮膚科
  5. スティーヴンス・ジョンソン症候群および中毒性表皮壊死症の重症度分類

【連載】スケール・評価基準を使いこなそう!

スティーヴンス・ジョンソン症候群および中毒性表皮壊死症の重症度分類

  • 公開日: 2023/9/3

スティーヴンス・ジョンソン症候群および中毒性表皮壊死症の重症度分類は何を判断するもの?

 スティーヴンス・ジョンソン症候群(Stevens-Johnson syndrome:SJS)および中毒性表皮壊死症(toxic epidermal necrolysis:TEN)の重症度分類は、SJSの重症度を評価するためのスケールです。

 SJSは皮膚粘膜眼症候群とも呼ばれ、難病の一つに指定されています。高熱や全身倦怠感とともに、全身の発疹と表皮の壊死を伴う疾患で、SJSが進展したものを「SJS進展型TEN(TEN with spotsあるいはTEN with macules)」といいます。主な原因は薬剤の副作用ですが、感染症に続発することもあり、はっきりとした発症メカニズムは解明されていません。

 SJSを発症すると、多臓器不全や敗血症などを合併するケースがあるほか、皮膚や粘膜の瘢痕化、失明、呼吸器障害といったさまざまな後遺症を残す可能性があります。発生頻度は人口100万人当たり年間で1~6人1)、2)とされる珍しい疾患ですが、発症した場合はSJSおよびTENの重症度分類を用いて重症度を正しく評価し、速やかに適切な治療を開始することが大切です。

スティーヴンス・ジョンソン症候群および中毒性表皮壊死症の重症度分類はこう使う!

 SJSおよびTENの重症度分類では、粘膜疹、皮膚の水疱・びらん、38℃以上の発熱、呼吸器障害、表皮の全層性壊死性変化、肝機能障害の有無を評価し、それぞれのスコアを合算してスケーリングを行います(表)。

 合計点が2点未満を「軽症」、2点以上6点未満を「中等症」、6点以上を「重症」と評価します2)。ただし、角膜・結膜の上皮欠損(びらん)あるいは偽膜形成が高度なもの、SJSやTENに起因する呼吸障害がみられるもの、びまん性紅斑進展型と考えられるものは、スコアによらず重症に分類します3)

 また、中等症以上で医療費助成の対象となりますが、Ⅰ度やⅡ度でも、高額な医療の継続が必要な場合は対象となることもあります3)

表 スティーヴンス・ジョンソン症候群および中毒性表皮壊死症の重症度分類

1.粘膜疹
眼病変結膜充血1
偽膜形成1
眼表面の上皮欠損(びらん)1
視力障害1
ドライアイ1
口唇・口腔内病変
口腔内広範囲に血痂、出血を伴うびらん1
口唇の血痂、出血を伴うびらん1
広範囲に血痂、出血を伴わないびらん1
陰部びらん1
2.皮膚の水疱、びらん
30%以上3
10%以上 30%未満2
10%未満1
3.38℃以上の発熱1
4.呼吸器障害1
5.表皮の全層性壊死性変化1
6.肝機能障害(ALT>100 IU/L)1
*慢性期の後遺症としての視力障害、ドライアイを指す。急性期所見としては選択しない

厚生労働省:スティーヴンス・ジョンソン症候群(指定難病38).(2023年8月9日閲覧)https://www.nanbyou.or.jp/wp-content/uploads/upload_files/File/038-201804-kijyun.pdfより引用

スティーヴンス・ジョンソン症候群および中毒性表皮壊死症の重症度分類の結果を看護に活かす!

 SJSは薬剤が原因となることが多く、発症した場合は、原因と考えられる薬剤の使用を速やかに中止します。全身管理、炎症反応の抑制、感染予防なども必要となるため、入院して皮膚科専門医による治療を受けることが推奨されています4)

 薬物療法としては、ステロイド薬の全身療法が第一選択となっています4)。ステロイド薬の投与では、感染症、骨粗鬆症、糖尿病、食欲亢進、体重増加などといった副作用が生じる可能性があります。副作用が出現していないか観察を行うのとあわせて、患者さんには気になる症状がみられたらすぐに相談するように伝えます。

 SJSは多臓器不全や敗血症を合併することもあるため、バイタルサインの変化など、初期段階の重症度よりも進行していると疑われる場合は、速やかに医師に報告します。

引用・参考文献

1)Berthold Rzany,et al:Epidemiology of erythema exsudativum multiforme majus, Stevens-Johnson syndrome, and toxic epidermal necrolysis in Germany (1990–1992):Structure and results of a population-based registry.Journal of Clinical Epidemiology 1996;49(7):769-73.
2)E Schopf,et al:Toxic epidermal necrolysis and Stevens-Johnson syndrome. An epidemiologic study from West Germany.Arch Dermatol 1991;127(6):839-42.
3)厚生労働省:スティーヴンス・ジョンソン症候群(指定難病38).(2023年8月9日閲覧) https://www.nanbyou.or.jp/wp-content/uploads/upload_files/File/038-201804-kijyun.pdf
4)重症多形滲出性紅斑ガイドライン作成委員会:重症多形滲出性紅斑 スティーヴンス・ジョンソン症候群 中毒性表皮壊死症 診療ガイドライン.日皮会誌 2016;126(9):1643-5.
●厚生労働省:重篤副作用疾患別対応マニュアル スティーヴンス・ジョンソン症候群 (皮膚粘膜眼症候群)平成18年11月 (平成29年6月改定).(2023年8月9日閲覧) https://www.pmda.go.jp/files/000218908.pdf

この記事を読んでいる人におすすめ

カテゴリの新着記事

国際的天疱瘡重症度基準(Pemphigus Disease Area Index:PDAI)

PDAIは何を判断するもの?  国際的天疱瘡重症度基準(Pemphigus Disease Area Index:PDAI)とは、天疱瘡の重症度を評価するためのスケールです。  天疱瘡は、表皮細胞同士の接着を助けるデスモグレインと呼ばれるタンパク質に対する自己抗体が形成さ

2024/4/15

アクセスランキング

1位

心電図でみる心室期外収縮(PVC・VPC)の波形・特徴と

心室期外収縮(PVC・VPC)の心電図の特徴と主な症状・治療などについて解説します。 この記事では、解説の際PVCで統一いたします。 【関連記事】 * 心電図で使う略語・用語...

250751
2位

【血液ガス】血液ガス分析とは?基準値や読み方について

血液ガス分析とは?血液ガスの主な基準値 血液ガス分析とは、血中に溶けている気体(酸素や二酸化炭素など)の量を調べる検査です。主に、PaO2、SaO2、PaCO2、HCO3-、pH, ...

249974
3位

吸引(口腔・鼻腔)の看護|気管吸引の目的、手順・方法、コ

*2022年12月8日改訂 *2022年6月7日改訂 *2020年3月23日改訂 *2017年8月15日改訂 *2016年11月18日改訂 ▼関連記事 気管切開とは? 気管切開...

250001
4位

人工呼吸器の看護|設定・モード・アラーム対応まとめ

みんなが苦手な人工呼吸器 多くの人が苦手という人工呼吸器。苦手といっても、仕組みがよくわからない人もいれば、換気モードがわからないという人などさまざまではないでしょうか。ここでは、人工呼...

250017
5位

採血|コツ、手順・方法、採血後の注意点(内出血、しびれ等

採血とは  採血には、シリンジで血液を採取した後に分注する方法と、針を刺した状態で真空採血管を使用する方法の2種類があります。 採血の準備と手順(シリンジ・真空採血管) 採血時に準備...

250858
6位

心電図の基礎知識、基準値(正常値)・異常値、主な異常波形

*2016年9月1日改訂 *2016年12月19日改訂 *2020年4月24日改訂 *2023年7月11日改訂 心電図の基礎知識 心電図とは  心臓には、自ら電気信...

250061
7位

第2回 小児のバイタルサイン測定|意義・目的、測定方法、

バイタルサイン測定の意義  小児は成人と比べて生理機能が未熟で、外界からの刺激を受けやすく、バイタルサインは変動しやすい状態にあります。また、年齢が低いほど自分の症状や苦痛をうまく表現できません。そ...

309636
8位

術前・術後の看護(検査・リハビリテーション・合併症予防な

患者さんが問題なく手術を受け、スムーズに回復していくためには、周手術期をトラブルなく過ごせるよう介入しなければなりません。 術前の検査  術前は、手術のための検査と、手術を受ける準備を...

249741
9位

サチュレーション(SpO2)とは? 基準値・意味は?低下

*2019年3月11日改訂 *2017年7月18日改訂 *2021年8月9日改訂 発熱、喘息、肺炎……etc.多くの患者さんが装着しているパルスオキシメータ。 その測定値である...

249818
10位

第2回 全身麻酔の看護|使用する薬剤の種類、方法、副作用

【関連記事】 *硬膜外麻酔(エピ)の穿刺部位と手順【マンガでわかる看護技術】 *術後痛のアセスメントとは|術後急性期の痛みの特徴とケア *第3回 局所浸潤麻酔|使用する薬剤の種類、実施方...

295949