JTAS(緊急度判定支援システム)
- 公開日: 2024/1/19
JTASは何を判断するもの?
緊急度判定支援システム(Japan Triage and Acuity Scale:JTAS)は、カナダで使用されているCTAS(Canadian Triage and Acuity Scale)をベースに開発されたもので、救急外来や夜間外来などで、緊急度や待ち時間を判断するために用いられます。
救急外来や夜間外来には、さまざまな状態の患者さんが訪れます。救急車で搬送されてきた場合でも緊急度・重症度が高いとは限らず、一見状態が安定していて独歩で来院した患者さんのなかに、直ちに診察・治療を必要とする患者さんがいることもあります。そのため、来院方法や主観にとらわれず、すべての患者さんにトリアージを行うことが重要です。
JTASによるトリアージは、救急の看護師が行うことが多いですが、救急救命士が行う場合もあります。適切な評価を行えるようになるには、ある程度の経験と教育が必要で、日本救急看護学会でも研修会を実施しています。なお、評価には、ある程度の時間を要する(3~5分程度)ため、災害現場での使用には向いていません。
JTASはこう使う!
JTASでは、1人の患者さんに対して1人の担当者(主に救急の看護師)が観察と判定を行います。まず、顔色が悪い、呼吸が促迫している、冷汗や四肢の冷感がみられるなど、第一印象でおおよその緊急度を判断し、そのまま待合室で待ってもらうか、すぐに処置室に入ってもらうかといった区分をします。
明らかに緊急度が高い状態でなければ、バイタルサインズの測定、主訴や病歴の聞き取りなどを行い、その結果に基づき、「JTAS緊急度判定支援システム」を使って判定していきます。このシステムはアプリ化されていて、患者さんの状態に当てはまる項目を選択していくことで、緊急度が「レベル1:蘇生(青)」「レベル2:緊急(赤)」「レベル3:準緊急(黄)」「レベル4:低緊急(緑)」「レベル5:非緊急(白)」の5段階に判定されるしくみになっています(表)。具体的には、次のような方法で緊急度を判定していきます。
STEP1
アプリを起動し、患者さんの年齢が15歳以上であれば成人、15歳未満であれば小児を選択します。
STEP2
症状リストから、該当する項目を選択します。成人の症状リストは、17カテゴリー(呼吸器、心血管、消化器、産婦人科、泌尿器、整形、外科系、眼科系、神経系、メンタル、薬物乱用、鼻、耳、その他耳鼻科、外傷、環境因子、一般)と、各カテゴリーに紐づけられた合計165症状で構成されています。例えば、消化器のカテゴリーには、腹痛、食思不振、便秘、下痢、嘔吐・嘔気、吐血、血便・下血などの症状が選択肢として設けられています。
該当するカテゴリーと症状を選ぶと、患者さんの容態に関する選択肢が示されるため、該当する項目を選択します。また、症状だけでなく、バイタルサインズや痛みの強さ、受傷機転など補足因子の確認を行い、緊急度を決定します。
STEP3
緊急度判定の結果に合わせて、診察の順番を調整します。「蘇生」の場合は、直ちに診察・治療を受けられるようにします。「緊急」の場合は15分以内、「準緊急」は30分以内、「低緊急」は1時間以内、「非緊急」は2時間以内に診察・治療が必要とされます。
STEP4
緊急度判定で示された時間内に、診察・治療を受けられているか確認します。時間内に診察・治療が行われなかった場合は、各レベルで決められた時間ごと(緊急:15分ごと、準緊急:30分ごと、低緊急:1時間ごと、非緊急:2時間ごと)に再評価を行います。
表 JTASの緊急度判定レベル
JTASを看護に活かす!
JTASでは、いつまでに診察が必要か評価することができますが、看護師は、緊急度判定で示された時間内に診察が行われるよう医師に働きかける必要があります。時間内に診察が行われなかった場合は、前述したように再評価を行い、患者さんの状態に変化がないか確認します。
緊急度の判定においては、実際の状態よりも重症または緊急度が高いと判断されるオーバートリアージや、反対に軽症または緊急度が低いと判断されるアンダートリアージが起きる可能性があります。重症と判断した患者さんが、診察をしたら緊急度はそれほど高くなかったというオーバートリアージは実際にもありうることで、ある程度は許容されます。
しかし、アンダートリアージは、迅速に適切な治療を受ける機会を奪ってしまう重大な問題です。この程度の状態なら多少は待てるだろう、これくらいの症状であれば大丈夫だろうという主観から、緊急度を低く判断してしまうようなことは避けなければなりません。その意味でも、JTASを使うには一定の経験と教育が重要といえます。