【連載】臨床の知識をおさらい!|看護師国家試験を元に基礎知識を解説
緩和ケアの目標ってなんだっけ?
- 公開日: 2024/10/31
看護師国家試験112回-午前-必修6
緩和ケアの目標で正しいのはどれか。
1.疾病の治癒
2.余命の延長
3.QOLの向上
4.在院日数の短縮
3回答
問題の解説
緩和ケアとは疾患によるさまざまな全人的苦痛を緩和して生活の質を向上させるケアのことをいいます。ここからわかるとおり、緩和ケアの対象となる人やその時期は限定されていません。患者さんの場合もあれば、その家族が対象となることもあります。また、終末期になったら緩和ケアが始まるわけではなく患者さんやその家族によっては疾患が診断されたときから必要になる場合もあります。
以上を踏まえて選択肢を見てみると、緩和ケアは患者さんやその家族を対象にしたケアであるため、病院を対象にしていると考えられる選択肢4は除外できるでしょう。また、選択肢2は終末期に限定されていますし、緩和ケアでは生活の質(QOL)を重要視しているため除外できるでしょう。選択肢1に関しても緩和ケアは疾病の治癒ではなく生活の質(QOL)の向上に向けたケアですので除外できるでしょう。したがって、選択肢3が正解となります。
緩和ケアについておさらい
緩和ケアとは、がんという特定の疾患に限定されているわけではなく、心不全や間質性肺炎などさまざまな疾患による苦痛の緩和を図ることで生活の質を向上させるケアのことを指します。その対象となる人は患者さんだけでなくその家族も対象になります。また、苦痛は4つに分類され身体的苦痛、精神的苦痛、社会的苦痛、スピリチュアルな苦痛に対してアプローチされます(図1)。図 全人的な苦痛
日本緩和医療学会をはじめとする複数の学術団体によって「WHO(世界保健機関)による緩和ケアの定義(2002)の定訳」が作成されており、「緩和ケアとは、生命を脅かす病に関連する問題に直面している患者とその家族のQOLを、痛みやその他の身体的・心理社会的・スピリチュアルな問題を早期に見出し的確に評価を行い対応することで、苦痛を予防し和らげることを通して向上させるアプローチ」1」と定訳されています。その中には、「痛みやその他つらい症状を和らげる」だけでなく、「生命を肯定し、死にゆくことを自然な過程と捉える」や「患者が最期までできる限り能動的に生きられるように支援する体制を提供する」、「患者の病の間も死別後も、家族が対処していけるように支援する体制を提供する」など医療者として知っておくべき内容が記載されています。
イラスト/ふるやますみ