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【連載】ここを見直そう! 排痰ケア

スクイージングとは? 禁忌は? 排痰効果の上がる方法【写真解説】

  • 公開日: 2014/6/9

排痰ケアで肺理学療法の必要性を理解している看護師さんが「知りたい!」と関心を持っているのが「スクイージング」です。
スクイージングは、「湿度」「重力」「呼吸量と呼気の速度」という排痰法の原理原則のうち、「呼吸量と呼気の速度」にあたり、体位ドレナージとともに排痰を誘導するためのステップの1つです。


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スクイージングとは

圧迫によって痰を喀出する徒手的な手技

体位ドレナージに加えて、排痰の効果アップを狙う排痰法がスクイージングです。痰が溜まっている胸郭の部位に手掌を当てて、絞り込むように圧迫して痰を喀出する徒手的な手技で、空気を吐き出す力を利用し、さらに圧迫を加えることによって貯留した痰を中枢気道へと移動させます。

呼気の最初は軽く圧迫し、少しずつ圧迫を強め、最後は絞り出すように少し強い圧迫を加えます。そして、呼気が終わり、吸気が始まるときに圧迫を緩めます。絶対的な時間はありませんが、通常は数分程度行い、実施後はその効果をアセスメントします。

こうした方法によって、例えば無気肺が改善した様子がレントゲン検査などで確認でき、効果を実感している看護師も多いと思われます。

スクイージングの注意点と限界を理解しておこう

スクイージング実施中に注意したい点

圧迫が患者さんの呼吸とぶつかると、よけいに苦しくなるケースがあることです。

スクイージングは侵襲を与える可能性もある処置であり、あまり慣れていない医療者が行うと、心臓マッサージのような圧迫になってしまい、不整脈の誘発や肋骨骨折の危険性も生まれます。適正なスクイージングの手技を普段から同僚と練習しておくことが大切です。

スクイージングが有効でないケース

痰が末梢肺胞にあり、肺もつぶれているような状態にあると、スクイージングによる圧迫だけでは痰はなかなか移動しません。無理に行うと、気管支や肺へのダメージも発生しかねません。

スクイージングが禁忌となるケース

1)昇圧剤の投与などによって循環動態が安定しない
2)脳圧が亢進している重症の脳疾患
3)胸部の骨折
4)未処置の気胸

これらの場合は逆効果になることがあるため、回避したほうがいいでしょう。

体位ドレナージとの併用が基本

スクイージングは、排痰体位を保持することが前提ですので、重力を利用した体位ドレナージと組み合わせて行うのが基本です。

ただし、両者の目的は異なります。体位ドレナージが重力を利用した排痰誘導であるのに対して、スクイージングは限定的な圧迫による排痰誘導になります。

スクイージングだけで排痰を促そうとする傾向もみられますが、スクイージングだけでは効果的な排痰は期待できません。

スクイージングを第一選択にしないこと、つまり、加湿・重力を利用した上で、次のステップとして呼気量と呼気速度の改善によるスクイージングを行うことが大切です。

優先的に実施すべきは体位ドレナージ、より効果を期待する場合にはスクイージングを補助的に併用することが実践的なアプローチといえます。

スクイージングの実施方法

1.体位を整える

スクイージングは基本的に体位ドレナージを行う際に併せて実施します。

まず、痰の貯留部位をアセスメントするとともに、患者さんに適応があるかを判断します。

肺の区域が確定したら、その部位が上になるよう体位を整えます。後肺底区の場合、修正排痰体位は腹臥位ですが、臨床現場ではリスクを考慮して前傾側臥位で対応することが多いです。

2.痰の貯留部位に手掌を当てる

痰が貯留する部位に相当する胸壁に手掌を広げて置きます。

上葉……第4肋骨より上部に手掌を当て、呼気に合わせて胸郭を少し引き下げるように体全体を使って圧迫します(写真1)。

第4肋骨より上の胸郭に手を置き、圧迫する、実践写真

(写真1)第4肋骨より上の胸郭に手を置き、圧迫する

中葉および下葉……片側の肺下葉に痰が貯留しているときは、貯留部位を上にした側臥位になります。第8肋骨と中腋窩線の交点より上部に下部胸郭を覆うように手掌を置きます。呼気時に腹部に向かって絞るように圧迫します(写真2)。

側臥位になってもらい、第8肋骨と中腋窩線の交点より上部を圧迫する、実践写真

(写真2)側臥位になってもらい、第8肋骨と中腋窩線の交点より上部を圧迫する

後肺底区……下肺に痰が貯留している場合に行います。第10肋骨の上部に手掌を置き、両手を下方に引き下げるようにして圧迫します(写真3)。

側臥位になり、第10肋骨より上部の胸郭を圧迫する、実践写真

(写真3)側臥位になり、第10肋骨より上部の胸郭を圧迫する

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痰のアセスメント(貯留部位の特定)5つのポイント

3.呼気に合わせて圧迫する

圧迫の際は、肺の区画(肺葉)によって異なる胸郭の動きとタイミングに合わせて行うのがポイントです。

呼吸時、肺の上部肋骨は前後に、下部肋骨は内外側方へと動きます。また、背側は前後・頭尾側方向に動くため、その動きに合わせて圧迫を加えます。

4.吸気で圧迫を解放する

患者さんが吸気に移行すると同時に圧迫を解放します。吸気時には、胸郭の拡張を妨げないように注意します。

うまく行えていれば、患者さんが通常より深く吸気を行えていることを感じることができます。実施中は患者さんの様子をみながら、痛みや苦痛を感じていないか確認します。

5.スクイージング実施後の評価

1)気道分泌物の除去によって肺胞の換気が改善しているか
2)呼吸音は改善しているか
3)PaO2またはSpO2が改善しているか

(『ナース専科マガジン』2014年6月号より転載)

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