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【連載】がん化学療法による副作用のケア

がん化学療法中の患者さんの下痢の原因と下痢を抑える薬剤

  • 公開日: 2016/12/26

がん化学療法の副作用の下痢には早発性下痢と遅発性下痢がある

がん化学療法中に起こる下痢には、抗がん剤投与直後~24時間以内に発生する「早発性下痢」と、投与後24時間を過ぎてから起こる「遅発性下痢」があります。
早発性下痢は、抗がん剤のコリン作動性により、腸管の副交感神経刺激が起こることが原因です。これにより、腸管の蠕動運動が亢進して、腸管内の水分が十分に吸収される前に排泄されてしまい、下痢が起こります。早い人では、抗がん剤の点滴中に下痢を起こすこともあります。なかには下痢便にはならず、ガスだけが出る人もいますし、腹痛、流涙、鼻汁などのコリン症状を随伴することもあります。いずれの症状も、抗コリン薬によって比較的短時間におさまります。

遅発性下痢は、抗がん剤や抗がん剤の代謝物によって引き起こされる腸管粘膜障害が原因で起こります。腸管粘膜が障害を受けると、腸管内に貯留している物質との浸透圧差から、水分が腸管内腔に呼び込まれて、便の水分量を増やしていき、浸透圧性下痢が起こります。遅発性下痢の発症時期は、抗がん剤による骨髄抑制で好中球が減少している時期と重なるため、感染症を併発しないよう注意が必要です。重症の下痢のときには、骨髄抑制を伴うことが多く、腸管粘膜バリアの破綻による敗血症にも留意するようにしましょう。

また、心理的ストレスによって、下痢の症状が出現することもあります。抗がん剤投与後に一度激しい下痢を経験すると、「またあのような下痢を起こすのではないか」という不安が生まれます。そのストレスから腸管粘膜が過敏になって、下痢を起こしてしまいます。

下痢を起こしやすい主な薬剤

下痢を起こしやすい抗がん剤として、イリノテカンがあります。この薬剤では遅発性下痢だけではなく、早発性下痢も起こります。
フルオロウラシル、カペシタビンといったフッ化ピリミジン系の抗がん剤、タキサン系のパクリタキセル、ドセタキセルでも下痢の副作用がみられます。

近年登場した分子標的薬、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ソラフェニブなどでも下痢を起こすことがあります。これらは経口薬ですから、患者さんは来院中ではなく、自宅に帰ってから下痢を体験することになります。患者さんが在宅時に困らないよう、あらかじめ下痢に対するセルフケア支援や、止痢薬の使い方などを十分に説明しておこくことが大切です。

早発性下痢、遅発性下痢では使用する薬剤が違う

早発性下痢には、腸管蠕動を抑制するはたらきをもつ薬剤として、抗コリン薬のブチルスコポラミン臭化物などが処方されます。

遅発性下痢では、非麻薬性合成アヘン様化合物のロペラミド塩酸塩が第一選択となります。腸管の蠕動運動を抑え、腸内輸送を遅らせることにより水分吸収を促し、さらに腸管内への水分・電解質の腸管への分泌を抑え体内に移行させることで、強力な止痢作用をもつ薬剤です。感染を伴わない下痢に用いられます。

 下痢を起こす可能性の高い抗がん剤を使用したがん化学療法を行う場合には、あらかじめ止痢薬がレジメンに組み込まれていることもあります。

患者さんのための日常生活のアドバイス詳細

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