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【連載】今さら聞けない! 基礎看護技術をおさらい

看護問題リスト・看護計画の書き方|看護記録書き方のポイント2

  • 公開日: 2018/6/14

ここでは一般的な看護記録を解説しています。また、看護診断名にNANDA-I看護診断を使用しています。実際の記録は院内の記録規定に従いましょう。


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看護問題リストの書き方

 看護問題リストとは、患者さんが抱える(もしくは抱えるだろう)問題(看護問題)を抽出し、優先順位を付けて列挙したものです。この看護問題をもとに看護計画を立案していきます。

看護診断名を使用する

 看護問題は、「看護診断」ともいいます。医師が疾患名をつけるように、看護師は患者さんが抱える問題に対して、看護診断名を付けます。

 看護診断は疾患名と同様、誰もが共通した認識がもてるように、表現を統一しなければなりません。現在、多くの施設ではNANDA-Iの看護診断が使用されていると思います。なお、他にカルペニートの看護診断があります。


NANDA-Iって?

 NANDA-Iとは「the North American Nursing Diagnosis Association internationalの略で、北米看護診断協会(NANDA :the North American Nursing Diagnosis Association)が提唱する看護診断です。臨床現場では「ナンダ」などとよばれています。

 NANDA-Iでは、診断ラベル(診断名)は13の領域に分類され、定義、診断指標、関連因子、危険因子といった要素によって構成されています。

 定期的に改訂が行われ、最新版は「NANDA-I看護診断 定義と分類 2018-2020」(2018年4月現在)です。しかし、電子カルテの更新作業などの問題から、最新版を使用するとは限らず、施設ごとに使用する版が異なっているのが現状です。

 なお、最新版では、72の看護診断が改訂されたうえ、新しい看護診断が7つ追加され、各診断に「ハイリスク群」「関連する状態」が新設されています。


優先順位は#(ナンバー)で表す

 看護問題リストは、優先順位の高い順に看護問題を挙げていきます。もっとも優先順位が高いものを#1としてリストの一番上に記載し、あとは順番に数を振って記載していきます。

 ちなみ、#の記号は一般的にはシャープとよばれますが、看護記録上ではナンバーといいます。

【例】
#1 非効果的気道浄化*1
#2 安楽障害*2

*1 T. ヘザー・ハードマン,編 上鶴 重美,訳:NANDA-I看護診断 定義と分類 2018-2020 原書第11版.医学書院,2018,p.487.
*2 T. ヘザー・ハードマン,編 上鶴 重美,訳:NANDA-I看護診断 定義と分類 2018-2020 原書第11版.医学書院,2018,p.568.

看護問題の抽出のポイント

重要な問題を2~3つ挙げる

 患者さんの病態、入院の目的、アセスメントなどの情報から、患者さんの全体像を俯瞰して、看護問題を挙げていきます。

 多くの場合、複数の看護問題が存在します。すべての問題を挙げてもケアができないので、2~3つの重要な問題に絞って抽出していくことが必要です。
 また、看護が介入できない問題を看護問題として挙げないようにしましょう。


優先順位をつける

 抽出した問題から、優先して積極的に介入したほうがよい問題を考え、順位をつけていきます。優先度の高い問題として、生命に直結する問題、治療に関連する問題があります。医師の治療方針も参考にするとよいでしょう。

 例えば、肺炎で入院した患者さんで、発熱がみられ、痰の貯留があるものの、自身で排痰ができない、食事があまり摂れていないという場合は、発熱、痰、低栄養に関連した看護問題が考えられます。

 いろいろな考え方がありますが、痰の貯留は、気道の閉塞や低酸素血症により生命の危機にかかわり、また無気肺や呼吸器合併症につながるため、看護問題を「非効果的気道浄化」として、優先順位を一番にします。


看護問題は定期的に見直す

 施設の規定にもよりますが、看護問題リストは入院から24時間以内に記録します。少ない情報の中から考えなければならないため、不適切な看護問題を抽出してしまうこともあります。

 そのため、看護問題は定期的に見直し、必要があれば看護問題の修正や追加、優先順位の修正を行っていきましょう。


あまり悩まないことも大切

 慣れないうちは、看護問題の抽出に時間がかかってしまうかもしれません。そもそも看護問題は、看護師の経験や考え方によって異なるものです。

 カンファレンスなどで、抽出した看護問題について、スタッフが意見を出し合う機会もあります。違うと思ったら修正をするというスタンスで、あまり悩まずに取り組むことも大切です。


共同問題について

 潜在的な合併症(検査や治療によって生じる可能性がある身体的問題)など、看護師・医師両方の介入が必要な看護問題を共同問題(Collaborative. Problems: CP)としてあげることがあります。
 共同問題は、カルペニート(carpenito)により定義されました。


看護計画の書き方

 看護計画は、抽出した看護問題ごとに、「患者目標」、「計画」を記述します。

 記述したあとは、患者さん・家族に書面を見せながら看護計画について説明し、同意を得るようにします。同意が得られれば、看護計画の用紙にサインしてもらいます。

看護記録フォーマット例


1 看護問題の欄

 看護問題リストの看護問題を転記します。


2 患者目標の欄

 看護問題に対し、患者さんに「どんな状態になってほしいか」という目標と、目標を達成する期日として、評価日を記します。

・主語は患者さん
 患者さんを主語にして、目標を記述します。看護師を主語にしてしまいがちです。注意しましょう。

間違った例:看護師が主語
「転倒させない」

正しい例:患者さんが主語
「転倒しない」

・曖昧な表現をしない

 「できるだけ」「ある程度」などの曖昧な表現は使わないようにします。数値を用いて、時間・回数・量などの単位で、具体的に表現しましょう。

間違った例:曖昧な表現
「できるだけ長い時間、車椅子で過ごすことができる」

正しい例:具体的な表現
「1日に20分間、車椅子で過ごすことができる」

・短期間と長期間の目標を立てる
 忙しい臨床現場ではなかなか難しいですが、できれば、短期的な目標と長期的な目標を立てるとよいでしょう。
 例えば、退院までの目標が立位であれば、長期的な目標を「立位をとることができる」であれば、短期的目標をベッドに「端坐位になることができる」とします。

・達成が困難な目標を設定しない
 患者さん・家族の希望をそのまま目標にすると、実現不可能なものになる場合があります。例えば、大腿骨骨折の高齢患者さんで、患者さん・家族の希望は、元のように歩くことだったとします。しかし、高齢者ではしばらく臥床していると筋力が衰え、入院中に歩くことができるようになるのは難しいと思われます。

 目標は、患者さんの現状に即して設定しましょう。


3 計画内容の欄

 ここには、目標を達成するための具体的な計画を、「観察計画(O-P)」「援助計画(T-P)」「教育計画(E-P)」の観点から記入します。

・観察計画O-P(Observation Plan)
目と耳と鼻と指で得られた情報を記述する。

例:血液検査データ、バイタルサイン、皮膚や爪の状態、下痢や嘔吐の有無、咳嗽や喘鳴の有無、排泄物の色・性状など

・援助計画T-P(Treatment Plan)
手で実施するケアを記述する。
バイタルサインの測定、輸液交換、トイレ介助、体位変換など

・教育計画E-P
口を使って説明することを記述する。患者さんの意識状態や認知機能が低下している場合は、家族に説明を行う。
例:「トイレに行くときは、ナースコールを押して看護師を呼んでください」

看護計画記述


引用・参考文献

1)大口祐矢:看護の現場ですぐに役立つ看護記録の書き方.秀和システム,2015.
2)T. ヘザー・ハードマン,編 上鶴 重美,訳:NANDA-I看護診断 定義と分類 2018-2020 原書第11版.医学書院,2018.

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