SB チューブ(胃食道バルーンタンポナーデ)挿入と管理|看護のポイント
- 公開日: 2021/4/3
SBチューブ(胃食道バルーンタンポナーデ)とは(目的)
食道および胃静脈瘤破裂に伴う出血に対し、緊急圧迫止血するための医療機器です。バルーン付きのチューブで、このバルーンを膨らませることで出血部位を圧迫し止血を図ります。この治療法を「バルーンタンポナーデ法」といいます。
SBチューブには、食道静脈瘤止血用、胃静脈瘤止血用、食道・胃静脈瘤止血用の3タイプがあります。
対象疾患
食道または胃噴門部の静脈瘤破裂による出血
挿入時の手順
必要物品
手順
基本的にSBチューブの挿入は医師が行い、看護師は介助・観察を行います。
①医師が患者さん、家族にこれから行う処置について説明し、同意を得る。看護師は、医師の説明の補足と説明内容の確認を行う。
②患者さんのバイタルサイン、全身状態の観察を行う。出血によりショック状態になっている場合には、モニター心電図や救急カート等の準備をしておく。
挿入時の体位は半座位で行います。ショック状態の患者さんでは、側臥位あるいは仰臥位で行うこともあります。
③SBチューブの挿入準備とバルーンが膨らむかを確認する。
スタイレットハンドルをSBチューブ内に押し込み、スタイレットワイヤーがチューブの先端で止まっていることを確認し、チューブ内にワイヤーを固定します。次にシリンジ接続端子から空気を注入して、バルーンが正常に膨らむかを確認します。
看護師は物品を渡す等の介助とショック症状をはじめとした全身状態の観察を行います。
④チューブの先端及びバルーン部全体にキシロカインゼリー等の潤滑剤を塗布する。
医師が準備をしている間、看護師は患者さんの状態を観察します。
⑤鼻孔および咽頭後部に表面麻酔剤を噴霧し、チューブを挿入していき食道内へ進める。
成人の場合、少なくとも50cmの目盛近くまで、チューブを挿入しなければなりません。看護師は、患者さんのバイタルサイン等を観察します。
⑥医師は、胃バルーンが胃内に入ったところで、スタイレットハンドルを吸引用端子から外し、スタイレットハンドルを引いて、チューブ内からスタイレットワイヤーを抜く。
⑦胃の内容物を吸引し、送気チューブにシリンジを接続し、空気を入れ、胃バルーンを膨らませる。
SBチューブ(胃食道バルーンタンポナーデ)の管理
(1)観察項目
バイタルサイン、意識状態、呼吸状態、表情や顔色、出血量、吸引物の性状、疼痛の有無と程度、胸部不快感、チューブ固定部(鼻)の状態、チューブの固定位置と長さ、バルーン圧、圧迫時間、体位
(2)注意点
①チューブ挿入後は数時間にわたり圧迫止血を行います。止血が確認されたら、医師が食道バルーンの圧力を通常3時間ごとに5mmHgずつ下げていきます。食道内バルーンの圧力が25mmHgの状態で止血が維持できる場合、このままの圧力を12~24時間維持して経過をみます。看護師は、止血の確認と食道内のバルーンの圧力が25mmHgを維持しているか観察します。
②合併症の発生など必要時以外は、チューブを20~24時間動かさないようにします。
③チューブ挿入は違和感や苦痛を伴います。これらの状態を緩和するために、必要に応じて医師に相談し、鎮痛薬や鎮静剤の投与を考慮します。
④チューブの位置がズレないよう、患者さんに安静の必要性を説明します。状況に応じて抑制を検討します。
⑤出血が制御できない場合、他の治療・介入方法を考慮する必要があるため、出血量の観察は怠らないようにしましょう。
(3)合併症
(4)トラブル対応
①意識レベルの低下やバイタルサインに変化が生じた際は直ぐに医師に報告します。
②胃バルーン減圧に伴う食道バルーンのズレといったチューブトラブル時、速やかにチューブを切断できるようベッドサイドに切断用の外科用はさみ(クーパー)を準備しておきます。
【関連記事】
●悪心・嘔吐のアセスメント
●皮膚状態・腹部の観察、腹部の聴診法|消化器のフィジカルアセスメント(1)
●腸蠕動音の4つの分類と聴診のコツ