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【連載】スケール・評価基準を使いこなそう!

cancer dyspnea scale:CDS

  • 公開日: 2022/3/13

CDSは何を判断するもの?

 cancer dyspnea scale(CDS)は、がん患者さんの呼吸困難の程度を評価するためのスケールです。

 呼吸困難は、進行がんを中心に多くのがん患者さんが訴える症状の一つです。身体機能にも大きな影響を及ぼすほか、社会生活や生きる意欲、治療にもかかわってくると考えられています。そのため、がん患者さんが抱える呼吸困難感の程度を正確に評価し、適切な対処へとつなげていくことが求められます。

 CDSは日本で提唱されたもので、「呼吸努力感」「呼吸不快感」「呼吸不安感」の3つの分野の合計12項目に対して、患者さん自身が評価を行ってスケーリングされます。回答に要する時間は約2分とされており、簡便に回答できるため、多くのがん患者さんに使用することが可能です。

 なお、現在のところ、このスケールの内容性妥当と信頼性については検証が進められている段階であり、今後のさらなる普及や改良が期待されています。

CSDはこう使う!

 CDSは、がん患者さんが自身の呼吸の状態について各設問に回答し、その合計点で呼吸困難感を評価するスケールです。具体的には、呼吸努力感に関する5項目、呼吸不快感に関する3項目、呼吸不安感に対する4項目の計12項目をそれぞれ5段階で評価して点数化し、得点が高いほど呼吸困難感も強いと評価します(図)。

図 CDS

Tanaka K,et al:Development and validation of the Cancer Dyspnoea Scale: a multidimensional, brief, self-rating scale. British Journal of Cancer. 2000;82(4):800-5.より引用
(国立がん研究センターの許諾を得て掲載)

 CSDは、簡単な質問票を患者さん自身が回答する方法でスケーリングするため、主観的な呼吸困難感を把握することが可能です。患者さんが抱える呼吸困難感は画像検査や呼吸機能検査などの結果のみでは測れない部分もあるため、主観的な評価を行うことで患者さんへのアプローチに大いに役立つと考えられます。

CDSを看護に活かす!

 CDSは、がん患者さんに特化した呼吸困難感を評価するスケールであり、患者さん自身が回答を行うことで主観的な状態を評価することが可能です。

 呼吸困難感は、進行がんの患者さんが訴える症状の中でも「耐え難い」と表現される症状の一つとされています。また、活動性や精神状態にも影響を及ぼすため、何らかの呼吸困難感がみられる患者さんには適切な医学的介入や介助が必要となります。

 呼吸困難感を訴えるがん患者さんの対応にあたった際には、このスケールを用いて患者さんの主観的な呼吸状態を評価し、状態に合わせたケアを計画するのもよいでしょう。

 また、スケールでの評価は一度だけでなく定期的に行い、呼吸困難感が悪化している場合はケア計画を見直す必要があります。呼吸状態に明らかな変化がみられた場合も再評価を行い、急激な悪化が認められた場合は呼吸機能や精神状態などの異常が原因の可能性があるため、速やかに医師に報告します。

参考文献

●国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED):支持療法・緩和治療領域研究ポリシー(各論)呼吸困難.(2022年2月4日閲覧)https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/division/icsppc/030/Policy_Dyspnea_Breathlessness_ver1.0.pdf
●橋本晴美,他:「がん患者の呼吸困難感」の概念分析.日本看護研究学会雑誌 2017;40(1):45-56.
●日本緩和医療学会 緩和医療ガイドライン作成委員会 編:呼吸困難の評価.がん患者の呼吸器症状の緩和に関するガイドライン 2016年版.金原出版,2016,p.25-30.(2022年2月4日閲覧)https://www.jspm.ne.jp/guidelines/respira/2016/pdf/02_04.pdf

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