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【連載】最新情報がわかる! 学会・セミナーレポート

テゼスパイアによる重症喘息治療への貢献

  • 公開日: 2022/12/10

2022年10月24日、アストラゼネカ主催のメディアセミナーが開催されました。ここでは、「テゼスパイアによる重症喘息治療への貢献」と題した、昭和大学病院 院長/昭和大学 医学部 内科学講座 呼吸器・アレルギー内科学部門 教授 相良博典先生の講演をレポートします。


日本における喘息治療の変遷

 1993年、日本で初めて「喘息予防・管理ガイドライン」(以下、ガイドライン)が作成され、吸入ステロイド薬(ICS)を中心とした治療介入が行われるようになりました。

 それ以降、ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)、長時間作用性β2刺激薬(LABA)、ICS/LABA配合剤、抗IgE抗体といったさまざまな薬剤が登場し、治療法も、まずICSを使用して効果が不十分であれば、LABAを併用するといったステップアップ方式に移行しています。早く気道を広げ、炎症をしっかり抑える治療に変わってきたということがいえます。

 喘息治療において注目すべき細胞に、白血球の一つである好酸球があります。喘息の病態悪化に関与しているのではないかといわれており、この好酸球を制御することで炎症はコントロールできると考えて開発されたのが、抗IL-5抗体をはじめとする生物学的製剤です。ガイドラインでは治療ステップ3や治療ステップ4、つまり、主に重症喘息患者さんに使用されています。

重症喘息患者さんが抱える問題

 気道粘膜の炎症が長期にわたると気道粘膜は硬くなり、狭窄した状態のまま元の状態に戻りきらなくなってしまいます(気道のリモデリング)。リモデリングは難治性喘息や重症喘息に移行する要因となるため、リモデリングに至らないよう炎症を抑えたり、気道の収縮を避ける治療が必要とされています。

 重症喘息患者さんでは、経口ステロイドや生物学的製剤などによる治療が行われていますが、約4割の患者さんが年に1回以上の増悪を経験している1)ことから、現在の治療では不十分であることも考えなければいけません。この際、一つのバイオマーカーだけでなく、複数のバイオマーカーを確認して、総合的に炎症を捉えていく必要があります。

 また、血中好酸球値や呼気中一酸化窒素濃度(FeNO)などの数値が低いと、喘息をコントロールできているのではないかと考えてしまいますが、現時点で問題がなくても2~3日後に高くなっている可能性もあります。バイオマーカーは容易に変動する点にも注意が必要です。

気道炎症につながる外的因子

 気道炎症を引き起こす外的因子は、ウイルスや細菌、花粉、ハウスダスト、大気汚染物質など多岐にわたりますが、この外的因子の刺激により、上皮サイトカインが産生されます。

 外的因子の刺激で産生される上皮サイトカインには、IL-25、IL-33、TSLPがあり、中でもTSLPは気道炎症の起点であると同時に、さまざまな病態と関連しており、呼吸機能の低下を引き起こしたり、気道のリモデリングを進行させたり、ステロイド反応性の低下を招いたりします。そのため、TSLPを阻害する薬剤の登場が望まれていました。

テゼスパイアの登場

 テゼスパイアは、TSLPを標的とした生物学的製剤です。炎症の起点となるTSLPを阻害することで、複雑な炎症経路(アレルギー性炎症、好酸球性炎症など)を同時に抑制し、臨床的改善効果をもたらすことが期待されています。

 テゼスパイアの検証的試験(NAVIGATOR試験)は、コントロール不良な重症喘息を有する成人及び12歳以上の小児患者1061名を対象に実施されました。テゼスパイア群とプラセボ群を無作為に割り付け、それぞれ4週間に1回の間隔で52週間投与したところ、テゼスパイア群で血中好酸球数、FeNO、血清総IgE値の大幅な減少を認めており、そして、かなり早い段階で炎症反応が抑制できている点も重要といえます。

 年間喘息増悪率に関しては、プラセボ群2.10に対してテゼスパイア群は0.93となっており、炎症が抑えられたことで、結果として増悪に至る患者さんも少なくなっています。日本人だけを取り出したサブグループ解析においても同様に、増悪を抑制した結果が出ています。また、呼吸機能や症状についても、テゼスパイア群では早期の改善がみられています。

 前述したように、テゼスパイアは複数の炎症経路の起点となるTSLPを阻害する薬剤です。TSLPが関与していると推定される以下の喘息患者さんについては、テゼスパイアの投与を検討し、病態が複雑化する前に早期治療介入を行うことが必要です。

◆テゼスパイアの検討が必要な患者さん
●血中好酸球数、FeNO、血清総IgE値のうち、2つ以上のバイオマーカーが陽性あるいは上昇している
●血中好酸球数が300/μ未満
●外的因子による刺激で増悪を繰り返している

 テゼスパイアが登場したことで、現在の重症喘息患者さんのコントロールにつながっていくのはもちろん、将来的に、重症または難治性の喘息患者さんを増やさないことにも寄与していくのではないかと考えています。

引用・参考文献

1)Wang E,et al:Characterization of Severe Asthma Worldwide:Data From the International Severe Asthma Registry.Chest 2020;157(4):790-804.

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