潰瘍性大腸炎の臨床的重症度による分類
- 公開日: 2023/5/1
潰瘍性大腸炎の臨床的重症度による分類は何を判断するもの?
潰瘍性大腸炎の臨床的重症度による分類は、潰瘍性大腸炎の重症度を臨床所見から分類するスケールです。
潰瘍性大腸炎は、大腸や小腸の粘膜に炎症や潰瘍を引き起こし、慢性的な経過を辿る疾患で、若年成人に多くみられます。寛解と再発を繰り返し、大腸がんを合併するリスクも高くなるため、状態を正しく評価し、適切な治療を速やかに開始することが大切です。
潰瘍性大腸炎の臨床的重症度による分類は、治療方法を選択する際に活用されているほか、医療費助成制度の対象(中等症以上)かどうかを判断する指標としても用いられています。
潰瘍性大腸炎の臨床的重症度による分類はこう使う!
潰瘍性大腸炎の臨床的重症度による分類では、排便回数・顕血便・発熱・頻脈・貧血・赤沈またはCRPの6つの所見から、潰瘍性大腸炎の重症度をスケーリングします(表)。
表 潰瘍性大腸炎の臨床的重症度による分類
重症 | 中等症 | 軽症 | |
---|---|---|---|
1)排便回数 | 6回以上 | 重症と軽症との中間 | 4回以下 |
2)顕血便 | (+++) | (+)〜(-) | |
3)発熱 | 37.5度以上 | (-) | |
4)頻脈 | 90/分以上 | (―) | |
5)貧血 | Hb10g/dL以下 | (―) | |
6)赤沈 またはCRP | 30mm/h以上 3.0mg/dL以上 | 正常 正常 |
潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針.厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(久松班)令和4年度分担研究報告書.p.5.(2023年4月18日閲覧)http://www.ibdjapan.org/pdf/doc15.pdfより引用
6つの項目すべてを満たすものを軽症、1)および2)のほかに全身症状である3)または4)のいずれかを満たし、かつ6項目のうち4項目以上を満たすものを重症、軽症と重症の中間にあたるものを中等症と評価します。
さらに、重症のなかでも特に症状が強く重篤で、次の5項目を満たす場合を劇症とします1)。劇症は発症の経過により、急性劇症型(急性電撃型)と再燃劇症型に分かれます。
①重症基準を満たしている
②15回/日以上の血性下痢が続いている
③38℃以上の持続する高熱がある
④10,000/mm3以上の白血球増多がある
⑤強い腹痛がある
治療開始後に重症度を評価するときは、適切な医学的管理下で治療が行われている状態において、直近6カ月で最も悪い状態を医師が評価します2)。
潰瘍性大腸炎の臨床的重症度による分類の結果を看護に活かす!
潰瘍性大腸炎は、頻回な排便や腹痛、発熱などにより、日常生活に大きな支障を来す疾患です。潰瘍性大腸炎の患者さんの看護にあたるときは、潰瘍性大腸炎の臨床的重症度による分類のスケーリングを正しく把握し、状態観察やケアなどに活かしましょう。
中等症以上では、ステロイド治療が行われることが多くなりますが3)、ステロイドは少量投与であっても、副作用が生じるおそれがあります。副作用の発現時期、起こりうる副作用を理解したうえで、観察とケアを行うことが大切です。
潰瘍性大腸炎は重症度が変化しやすい疾患でもあります。重症度が変わると治療方針の見直しが必要になることもあるため、変化が疑われるときは速やかに医師に報告するようにします。
引用・参考文献
2)厚生労働省:97 潰瘍性大腸炎.(2023年4月18日閲覧) https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000089875.pdf
3)潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針.厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(久松班)令和4年度分担研究報告書.p.10.(2023年4月18日閲覧)http://www.ibdjapan.org/pdf/doc15.pdf
●日本消化器学会,編:炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2020(改定第2版).南江堂,2020.