ベーチェット病の重症度基準
- 公開日: 2023/5/4
ベーチェット病の重症度基準は何を判断するもの?
ベーチェット病の重症度基準は、ベーチェット病の重症度を臨床症状から5つの段階に分類するスケールです。
ベーチェット病は、口腔粘膜のアフタ性潰瘍、外陰部潰瘍、皮膚症状、眼症状を主症状とする全身性炎症性疾患で、寛解と再発を繰り返すのが特徴です。主症状以外にも、副症状として関節炎、血管病変、消化器病変、神経病変、副睾丸炎などを示し、適切な治療を継続しないと重篤な後遺症を残すこともあるため、発症した場合は的確な診断と迅速な治療開始が必要です。
ベーチェット病の重症度基準を用いて、臨床症状から重症度を分類することで、治療方針の速やかな決定につながるだけでなく、医療費助成制度の対象(StageⅡ以上)になるかを確認する際の指標としても役立ちます。
ベーチェット病の重症度基準はこう使う!
ベーチェット病の重症度基準では、ベーチェット病による臨床症状から重症度をスケーリングします(表)。治療開始後の重症度についても評価することができますが、その際は、適切な医学的管理下で治療が行われている状態において、直近6カ月間で最も悪い状態を医師が判断します1)。
表 ベーチェット病の重症度基準
Stage | 内容 |
---|---|
Ⅰ | 眼症状以外の主症状(口腔粘膜のアフタ性潰瘍、皮膚症状、外陰部潰瘍)のみられるもの |
Ⅱ | StageⅠの症状に眼症状として虹彩毛様体炎が加わったもの |
StageⅠの症状に関節炎や副睾丸炎が加わったもの | |
Ⅲ | 網脈絡膜炎がみられるもの |
Ⅳ | 失明の可能性があるか、失明に至った網脈絡膜炎およびその他の眼合併症を有するもの 活動性、ないし重度の後遺症を残す特殊病型(腸管ベーチェット病、血管ベーチェット病、神経ベーチェット病)である |
Ⅴ | 生命予後に危険のある特殊病型ベーチェット病である 中等度以上の知能低下を有す進行性神経ベーチェット病である |
Ⅵ | 死亡(a. ベーチェット病の症状に基づく原因、b.合併症によるものなど、原因を記載すること) |
注2:失明とは、両眼の視力の和が0.12以下もしくは両眼の視野がそれぞれ10度以内のものをいう。
注3:ぶどう膜炎、皮下血栓性静脈炎、結節性紅斑様皮疹、外陰部潰瘍(女性の性周期に連動したものは除く)、関節炎症状、腸管潰瘍、進行性の中枢神経病変、進行性の血管病変、副睾丸炎のいずれかがみられ、理学所見(眼科的診察所見を含む)あるいは検査所見(血清CRP、血清補体価、髄液所見、腸管内視鏡所見など)から炎症兆候が明らかなもの。
ベーチェット病の重症度基準の結果を看護に活かす!
眼症状を認めない場合や特殊病型でないかぎり、ベーチェット病は基本的に予後良好な疾患です。ただし、眼症状がなく、特殊病型でもないStageⅠの患者さんであっても、増悪と再発を予防するために治療を継続していくことは重要です。
ベーチェット病の治療では、ステロイドやコルヒチンが多く用いられますが2)、いずれも症状が改善したからといって中断せず、医師の指示どおりに服薬するよう伝えます。
また、主症状の1つである口腔粘膜のアフタ性潰瘍は、ほぼすべての患者さんに起こり、再発を繰り返します。歯磨きやうがいで口腔内を清潔に保つこと、う歯予防のために定期的な歯科受診を促すことが大切です。
引用・参考文献
2)日本ベーチェット病学会:ベーチェット病診療ガイドライン2020.(2023年4月18日閲覧)https://minds.jcqhc.or.jp/docs/gl_pdf/G0001177/4/behcet’s_disease.pdf
●日本循環器学会,他:血管炎症候群の診療ガイドライン(2017年改訂版).(2023年4月18日閲覧) https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/02/JCS2017_isobe_h.pdf
カテゴリの新着記事
国際的天疱瘡重症度基準(Pemphigus Disease Area Index:PDAI)
PDAIは何を判断するもの? 国際的天疱瘡重症度基準(Pemphigus Disease Area Index:PDAI)とは、天疱瘡の重症度を評価するためのスケールです。 天疱瘡は、表皮細胞同士の接着を助けるデスモグレインと呼ばれるタンパク質に対する自己抗体が形成さ
-
-
- ニコチン依存度のスクリーニングテスト(Tobacco Dependence Screener:TDS)
-
-
-
- Mayoスコア
-
-
-
- 加齢黄斑変性の看護|分類、症状、検査、硝子体内注射(抗VEGF薬治療)・光線力学的療法のケアなど
-
-
-
- 糖尿病網膜症の看護|分類、検査、治療、術前・術後のケア(点眼指導、血糖コントロール、体位管理、褥瘡予防、疼痛管理)など
-
アクセスランキング
心電図でみる心室期外収縮(PVC・VPC)の波形・特徴と
心室期外収縮(PVC・VPC)の心電図の特徴と主な症状・治療などについて解説します。 この記事では、解説の際PVCで統一いたします。 【関連記事】 * 心電図で使う略語・用語...
【血液ガス】血液ガス分析とは?基準値や読み方について
血液ガス分析とは?血液ガスの主な基準値 血液ガス分析とは、血中に溶けている気体(酸素や二酸化炭素など)の量を調べる検査です。主に、PaO2、SaO2、PaCO2、HCO3-、pH, ...
吸引(口腔・鼻腔)の看護|気管吸引の目的、手順・方法、コ
*2022年12月8日改訂 *2022年6月7日改訂 *2020年3月23日改訂 *2017年8月15日改訂 *2016年11月18日改訂 ▼関連記事 気管切開とは? 気管切開...
人工呼吸器の看護|設定・モード・アラーム対応まとめ
みんなが苦手な人工呼吸器 多くの人が苦手という人工呼吸器。苦手といっても、仕組みがよくわからない人もいれば、換気モードがわからないという人などさまざまではないでしょうか。ここでは、人工呼...
採血|コツ、手順・方法、採血後の注意点(内出血、しびれ等
採血とは 採血には、シリンジで血液を採取した後に分注する方法と、針を刺した状態で真空採血管を使用する方法の2種類があります。 採血の準備と手順(シリンジ・真空採血管) 採血時に準備...
心電図の基礎知識、基準値(正常値)・異常値、主な異常波形
*2016年9月1日改訂 *2016年12月19日改訂 *2020年4月24日改訂 *2023年7月11日改訂 心電図の基礎知識 心電図とは 心臓には、自ら電気信...
第2回 小児のバイタルサイン測定|意義・目的、測定方法、
バイタルサイン測定の意義 小児は成人と比べて生理機能が未熟で、外界からの刺激を受けやすく、バイタルサインは変動しやすい状態にあります。また、年齢が低いほど自分の症状や苦痛をうまく表現できません。そ...
術前・術後の看護(検査・リハビリテーション・合併症予防な
患者さんが問題なく手術を受け、スムーズに回復していくためには、周手術期をトラブルなく過ごせるよう介入しなければなりません。 術前の検査 術前は、手術のための検査と、手術を受ける準備を...
サチュレーション(SpO2)とは? 基準値・意味は?低下
*2019年3月11日改訂 *2017年7月18日改訂 *2021年8月9日改訂 発熱、喘息、肺炎……etc.多くの患者さんが装着しているパルスオキシメータ。 その測定値である...
第2回 全身麻酔の看護|使用する薬剤の種類、方法、副作用
【関連記事】 *硬膜外麻酔(エピ)の穿刺部位と手順【マンガでわかる看護技術】 *術後痛のアセスメントとは|術後急性期の痛みの特徴とケア *第3回 局所浸潤麻酔|使用する薬剤の種類、実施方...