Beecham分類
- 公開日: 2023/5/12
Beecham分類は何を判断するもの?
Beecham分類とは、子宮内膜症の病変の広がりや状態を内診所見に基づいて分類するスケールです。内診所見のみで簡便にスケーリングを行えることから初診時などに用いられ、腹腔鏡検査が普及する以前に広く使用されていました。
しかし、Beecham分類には患者さんの自覚症状などに関する評価項目は入っておらず、あくまで内診所見から病巣の広がりを評価するスケールであるため、治療方針は、腹腔鏡検査所見に基づくR-ASRM分類などによるスケーリング、症状の種類や程度などから、総合的に決定されます。
Beecham分類はこう使う!
Beecham分類では、子宮内膜症の病変の広がりや状態を内診所見によって第Ⅰ~Ⅳ期に分類し、進行度を評価します(表)。
表 Beecham分類
第Ⅰ期 | 骨盤内臓器、漿膜面に散在する1~2mmの病変、開腹時のみ発見される。 |
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第Ⅱ期 | 仙骨子宮靭帯、広靭帯、子宮頸部後壁あるいは卵巣に限局性の硬結を触れ、癒着のないもの。 |
第Ⅲ期 | 卵巣が少なくとも正常の2倍以上に腫大し、仙骨子宮靭帯、子宮後壁直腸、付属器に癒合が存在し、子宮の移動性が制限されているもの。 |
第Ⅳ期 | ダグラス窩が閉塞し、骨盤内臓器が癒着のため一塊となり、個々の臓器を区別できないもの。Frozen pelvisの例。 |
先述したように、Beecham分類は内診所見のみで病変の広がりや状態を評価するため、詳細な骨盤内の観察が可能な腹腔鏡検査よりも評価の精度が落ちます。
特に、卵巣腫大などは内診所見のみでは正確な評価が難しいケースも多く、過小に評価されるリスクもあります。そのため、病変が広がっていると考えられる子宮内膜症に対しては内診だけでなく、腹腔鏡検査を行って、より精度の高い進行度分類を行うのが一般的です。
Beecham分類の結果を看護に活かす!
子宮内膜症の患者さんの看護を行う際は、Beecham分類などによる客観的な進行度を把握することが大切ですが、Beecham分類は内診所見のみで評価するため、スケーリングと患者さんが感じている症状の種類や程度は、必ずしも一致するとは限りません。早期段階であっても、自覚症状の程度が強いケースも少なくないことから、患者さんの訴えを的確に聴取して、適切なケアにつなげることが求められます。
また、子宮内膜症は不妊の原因になる疾患です。特に、挙児希望がある進行患者さんに対応するときは、精神的なケアにも留意できるとよいでしょう。
参考文献
●武谷雄二:研修医のための必要知識 (3)子宮の腫瘍・類腫瘍 ②子宮内膜症.日本産科婦人科学会雑誌 2003;55(6):N-141-7.
●亀田隆,他:子宮内膜症における各種臨床進行期分類の比較検討.日本産科婦人科内視鏡学会雑誌 1988;4(1):82.