IOIBDスコア|クローン病の重症度を判断
- 公開日: 2023/6/17
IOIBDスコアは何を判断するもの?
IOIBD(the international organization for study of inflammatory bowel disease)スコアとは、クローン病の活動性(重症度)を判断するためのスケールです。
クローン病は、10~20歳代の若年者に好発する炎症性腸疾患で、活動期と寛解期を繰り返します。主な症状として、腹痛、下痢、体重減少、肛門病変、発熱がみられ、進行すると腸管狭窄や腸閉塞などさまざまな合併症を引き起こすため、IOIBDスコアで迅速にクローン病の活動性を評価し、適切な治療を開始する必要があります。
また、クローン病は明確な発症メカニズムが解明されておらず、日本では難病に指定されており、IOIBDスコアが2点以上の場合は、医療費助成の対象となることが定められています1)。
IOIBDスコアはこう使う!
IOIBDスコアでは表にある10項目について、当てはまる場合は1点、当てはまらない場合は0点でそれぞれスケーリングします。0~1点でCRPが陰性であれば寛解期、2点以上で活動期と評価します2)、3)。治療開始後に評価する場合は、適切な医学的管理下で治療が行われている状態において、直近6カ月間で最も悪い状態を医師が判断します1)。
表 IOIBDスコア
1 | 腹痛 |
---|---|
2 | 1日6回以上の下痢あるいは粘血便 |
3 | 肛門部病変 |
4 | 瘻孔 |
5 | その他の合併症(ぶどう膜炎、虹彩炎、口内炎、関節炎、皮膚症状(結節性紅斑、壊疽性膿皮症)、深部静脈血栓症等) |
6 | 腹部腫瘤 |
7 | 体重減少 |
8 | 38℃以上の発熱 |
9 | 腹部圧痛 |
10 | ヘモグロビン10g/dL以下 |
IOIBDスコアの結果を看護に活かす!
現時点でクローン病を完治させる治療法はなく、活動性をコントロールして寛解状態を維持するために、内科的治療(薬物療法、栄養療法など)や外科的治療が行われます。
薬物療法では、ステロイドをはじめ免疫抑制を伴う薬剤を使用することが多く、患者さんは易感染状態となります。帰宅後は手洗い・うがいをしっかり行う、マスクを着用する、人混みは避けるなど、感染には十分注意するよう指導します。治療が長期にわたることから、患者さんの不安に寄り添い、精神面での支援を心がけることも大切です。
また前述したように、クローン病は活動期と寛解期を繰り返し、進行するとさまざまな合併症を引き起こします。クローン病患者さんのケアを行う際は、IOIBDスコアを考慮したうえで、それぞれの状態に合ったケアを実施できるとよいでしましょう。
引用・参考文献
2)Myren J,et al:The O.M.G.E. multinational inflammatory bowel disease survey 1976-1982. A further report on 2,657 cases. Scand J Gastroenterol 1984;95:1-27.
3)松井敏幸:Ⅲ.炎症性腸疾患の診断 1.診断と病型・重症度分類.日本内科学会雑誌 2009;98(1):31-6.
●厚生労働省:潰瘍性大腸炎・クローン病診断基準・治療指針 令和4年度改訂版.(2023年5月26日閲覧) http://www.ibdjapan.org/pdf/doc15.pdf
●厚生労働省研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業 難治性炎症性腸管障害に関する調査研究(鈴木班):炎症性腸疾患の疾患活動性評価指標集.第2版.(2023年5月26日閲覧) http://www.ibdjapan.org/pdf/doc07.pdf