国際重症度分類(糖尿病網膜症)
- 公開日: 2024/7/1
国際重症度分類は何を判断するもの?
国際重症度分類(糖尿病網膜症)とは、糖尿病網膜症の進行度を評価するためのスケールです。眼科医と内科医の連携を促進することを1つの目的として作成されたもので、現在でも世界的に広く使用されています。
糖尿病網膜症は糖尿病の3大合併症の1つで、日本における視覚障害の原因疾患の第3位です1)。高血糖の持続により、網膜の細小血管が障害されることで引き起こされ、1年間で糖尿病患者さんの約4%が糖尿病網膜症を発症するとされています2)、3)。また、糖尿病罹患期間が長いほど、糖尿病網膜症の有病率および重症度は上昇し、糖尿病に罹患して5年以上経過すると発症リスクが高くなるというデータもあります3)。
糖尿病網膜症を発症すると、眼底に点状出血や白斑がみられるようになり、適切な治療を行わずに血糖コントロールが悪い状態が続くと、硝子体出血や網膜前出血、牽引性網膜剥離などを来し、最終的に失明に至るおそれもあります。一方で、かなり進行しても自覚症状が認められず、何らかの異常を自覚して眼科を受診したときには、すでに重症化しているケースも少なくありません。
そのため、自覚症状の有無にかかわらず、定期的な眼科受診を促すとともに、国際重症度分類を用いて進行度の評価を行い、糖尿病網膜症を発症していない場合は発症予防に努め、すでに発症している患者さんについては、適切な治療・管理で進展抑制につなげることが重要です。
国際重症度分類はこう使う!
国際重症度分類では、眼底所見から糖尿病網膜症の重症度を5つの段階に分類します(表)。具体的には、網膜症なし・非増殖網膜症・増殖網膜症の3つに大別し、非増殖網膜症については、さらに軽症・中等症・重症のいずれかに分けます。
前述したように、自覚症状の有無にかかわらず、糖尿病患者さんは定期的に眼科を受診することが重要ですが、国際重症度分類は、眼科の受診間隔を検討する際にも役立ちます。『糖尿病網膜症診療ガイドライン』では、網膜症なしの場合は1年に1回、軽症~中等症の非増殖糖尿病網膜症では6カ月に1回、重症の非増殖糖尿病網膜症では2カ月に1回、増殖糖尿病網膜症に関しては1カ月に1回の間隔で眼科を受診することが望ましいとしています4)。
表 国際重症度分類
眼底所見 | |
---|---|
網膜症なし | 異常所見なし |
軽症非増殖網膜症 | 毛細血管瘤のみ |
中等症非増殖網膜症 | 毛細血管瘤以上の病変が認められる重症非増殖網膜症よりも軽症のもの |
重症非増殖網膜症 | 眼底4象限で20個以上の網膜内出血 2象限での明瞭な静脈数珠状拡張 明確な網膜内細小血管異常 上記のいずれかを認める 増殖網膜症の所見を認めない |
増殖網膜症 | 新生血管または硝子体出血・網膜前出血のいずれかを認めるもの |
引用・参考文献
2)Sasaki A,et al:Development of diabetic retinopathy and its associated risk factors in type 2 diabetic patients in Osaka district, Japan:a long-term prospective study. Diabetes.Diabetes Res Clin Pract 1990;10(3):257-63.
3)Kawasaki R,et al:Japan Diabetes Complications Study Group:Incidence and progression of diabetic retinopathy in Japanese adults with type 2 diabetes:8 year follow-up study of the Japan Diabetes Complications Study(JDCS). Diabetologia 2011;54(9):2288-94.
4)日本糖尿病眼学会診療ガイドライン委員会:糖尿病網膜症診療ガイドライン(第1版).日本眼科学会雑誌 2020;124(12):971-2.(2024年6月12日閲覧) https://www.nichigan.or.jp/Portals/0/resources/member/guideline/diabetic_retinopathy.pdf