多汗症疾患重症度評価度(Hyperhidrosis disease severity scale:HDSS)
- 公開日: 2024/6/11
多汗症疾患重症度評価度は何を判断するもの?
多汗症疾患重症度評価度(hyperhidrosis disease severity scale:HDSS)とは、原発性局所多汗症の重症度を評価するためのスケールです。HDSS以外にも、重症度を評価するスケールとしては発汗量測定法などがありますが、一般的にはHDSSが広く臨床の場で使用されています。
多汗症は過剰な発汗を認める疾患で、全身の発汗が増える全身性と身体の一部の発汗が増える局所性に大別されます。さらに、全身性と局所性のいずれも、原因が明らかでない原発性(特発性)、他疾患が原因となって引き起こされる続発性に分かれます。
局所性多汗症のうち、原因が明らかでないものを原発性局所多汗症といい、『原発性局所多汗症診療ガイドライン2023年改訂版』では、「頭部・顔面、手掌、足底、腋窩に温熱や精神的な負荷、またそれらによらずに大量の発汗がおこり、日常生活に支障をきたす状態」と定義されています1)。
日本人の約10%が原発性局所多汗症であるとのデータもあり2)、発症年齢は10~20歳代前半と若いのが特徴です3)。発症者の約半数が日常生活に支障をきたすほどの発汗が生じるとされる一方で、原発性局所多汗症で医療機関を受診する患者さんは5~6%程度、医療機関を受診した場合でも継続して治療を行っている患者さんは1%未満と非常に少なく2)、3)、適切な治療を受けられていない患者さんが多いことが考えられます。
治療を行わないまま放置すると、日常生活に支障が出るだけでなく、精神面にも悪影響が及ぶ可能性もあるため、初診時からHDSSを用いて重症度を評価し、治療の計画を立てていくことが大切です。
多汗症疾患重症度評価度はこう使う!
HDSSでは、患者さんの自覚症状から、原発性局所多汗症の重症度を4つの段階にスケーリングします(表)。数字が大きくなるほど重症度も高く、HDSSが3以上の患者さんのうち、約20%が学業・仕事に支障を感じているとされており、希望の職種・職業をあきらめた経験がある患者さんは約7%にも上るとのデータもあります4)。
原発性限局多汗症の治療には、塩化アルミニウムを用いた外用療法、抗コリン薬による内服療法、ボツリヌス毒素製剤の局所投与、交感神経遮断術といった、さまざまな方法があります。重症度により治療方法や用法・用量などが変わる場合があるほか、治療効果には個人差があるため、定期的に重症度の変化を確認していくことが必要です。
表 多汗症疾患重症度評価度(HDSS)
自覚症状 | |
---|---|
1 | 発汗は全く気にならず、日常生活に全く支障がない |
2 | 発汗は我慢できるが、日常生活に時々支障がある |
3 | 発汗はほとんど我慢できず、日常生活に頻繁に支障がある |
4 | 発汗は我慢できず、日常生活に常に支障がある |
引用・参考文献
2)FujimotoT,et al:Questionnaire-based epidemiological survey of primary focal hyperhidrosis and survey on current medical management of primaryaxillaryhyperhidrosisin Japan,,Arch Dermatol Res 2022;315(3):409-17.
3)FujimotoT,et al:Epidemiological study and considerations of primary focal hyperhidrosis in Japan:from questionnaire analysis.J Dermatol 2013;40(11):886-90.
4)藤本智子,他:腋窩多汗症の患者意識調査:インターネットアンケート調査608人の結果報告.日本臨床皮膚科医会雑誌 2022;39(3):431-9.