自己免疫性肝炎の重症度分類
- 公開日: 2023/6/23
自己免疫性肝炎の重症度分類は何を判断するもの?
自己免疫性肝炎の重症度分類は、自己免疫性肝炎の重症度を臨床所見と臨床検査所見から評価するスケールです。
自己免疫性肝炎は中年以降の女性に発生する頻度が高く、初発症状として倦怠感、黄疸、食思不振などを認めます。適切な治療を継続すれば予後は概ね良好ですが、適切な治療が行われない場合は、早期に肝硬変や肝不全へと進行します。そのため、重症度を正しく評価して、速やかに適切な治療につなげていくことが大切です。
また、自己免疫性肝炎の重症度分類は、医療費助成制度の対象(中等症以上)になるかを確認する際の指標としても活用されています※。
※ 医療費助成制度の対象については、「自己免疫性肝炎診療ガイドライン(2013年)重症度判定」を用いて判断する1)
自己免疫性肝炎の重症度分類はこう使う!
自己免疫性肝炎の重症度分類では、2つの臨床所見と3つの臨床検査所見から、自己免疫肝炎の重症度を重症・中等症・軽症の3つの段階にスケーリングします(表)。以前は、画像検査所見も評価項目の一つでしたが、現在では画像検査所見は評価項目に入っていません。
重症の場合は、速やかに肝臓専門医がいる医療機関への紹介が検討され2)、中等症でも、黄疸が高度な場合、60歳以上の高齢者である場合は、専門の医療機関への紹介が推奨されています2)。
表 自己免疫性肝炎の重症度判定
臨床所見 | 臨床検査所見 |
---|---|
①肝性脳症あり ②肝萎縮あり | ①ASTまたはALT>200U/I ②総ビリルビン>5mg/dL ③プロトロンビン時間(PT-INR)≧1.3 |
重症 次のいずれかがみられる 1.臨床所見:①または② 2.臨床検査所見:③ |
中等症 臨床所見:①、②、臨床検査所見:③がみられず、臨床検査所見:①または②がみられる |
軽症 臨床所見:①、②、臨床検査所見:①、②、③のいずれもみられない |
自己免疫性肝炎の重症度分類の結果を看護に活かす!
自己免疫性肝炎では、原則としてステロイドによる薬物療法が行われます。ステロイド投与が長期にわたることに加え、自己免疫性肝炎が中年以降の女性に好発することから、合併症として骨粗鬆症が起こるリスクが高くなります。カルシウムやビタミンDの摂取、適度な運動を促すとともに、定期的に検診を受けるよう指導します。
治療により状態が安定すると、ステロイド投与の終了が検討されますが、ステロイド投与を終了したほとんどのケースで再燃がみられるとされています3)。治療終了後も経過観察を行うとともに、治療が再開された場合は、患者さんが継続的に取り組めるよう支援していくことが大切です。
引用文献
2)厚生労働省:自己免疫性肝炎(AIH)診療ガイドライン(2021年).p.15.(2023年5月26日閲覧) http://www.hepatobiliary.jp/uploads/files/AIH%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%B32021%E7%89%88%20%E6%9C%80%E7%B5%82%E7%89%882022.3.23.pdf
3)厚生労働省:自己免疫性肝炎(AIH)診療ガイドライン(2021年).p.29-30.(2023年5月26日閲覧) http://www.hepatobiliary.jp/uploads/files/AIH%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%B32021%E7%89%88%20%E6%9C%80%E7%B5%82%E7%89%882022.3.23.pdf