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【連載】スケール・評価基準を使いこなそう!

自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の重症度分類

  • 公開日: 2023/10/3

自己免疫性溶血性貧血の重症度分類は何を判断するもの?

 自己免疫性溶血性貧血(autoimmune hemolytic anemia:AIHA)の重症度分類は、AIHAの重症度を評価するためのスケールです。

 AIHAは、何らかの原因で赤血球膜上の抗原に対する自己抗体が産生されることで赤血球が傷害され、溶血が亢進することで貧血を来す疾患の総称です。温式AIHA、寒冷凝集素症(cold agglutinin disease:CAD)、発作性寒冷ヘモグロビン尿症(paroxysmal cold hemoglobinuria:PCH)の大きく3つの病型に分類され、それぞれ症状も異なります。経過や予後については、病型のほかに、急性か慢性か、小児か成人か、どの程度の重症度かなどによっても変わるため、これらを適切に評価して、個々の患者さんに合った治療や管理方針を決めていく必要があります。

 なお、AIHAは難病の一つに指定されており、重症度分類のStage3以上(薬物療法を行っていてヘモグロビン濃度10g/dL以上の場合は対象外)で医療費助成の対象となります

※医療費助成制度の対象については、「温式自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の重症度基準(平成16年度修正)」が用いられている1)

自己免疫性溶血性貧血の重症度分類はこう使う!

 AIHAの重症度分類では、治療の必要性(薬物療法、輸血)とヘモグロビン濃度によって、AIHAの重症度をStage1~4までの4段階で評価します(表)。

 ここでの薬物療法とは、副腎皮質ステロイド薬や免疫抑制薬、抗体医薬などによる治療を指しますが2)、CADの場合は寒冷回避と保温が原則で、副腎皮質ステロイド薬などの薬物療法は一般的に無効とされています。そのため、薬物療法が必要な場合でも、適切な治療法を選択できないことがあり、評価を行う際は注意が必要です。

 また、AIHAの重症度分類は、治療後の臨床状態の変化を比較するために用いることも可能で、患者のQOLや生命予後の予測にも役立つと考えられています。

表 AIHAの重症度分類

Stage1軽症薬物療法ならびに輸血を必要としない
Stage2中等症薬物療法が必要で、ヘモグロビン濃度10g/dL以上
Stage3やや重症薬物療法または輸血が必要で、ヘモグロビン濃度7〜10g/dL
Stage4重症薬物療法および輸血が必要で、ヘモグロビン濃度7g/dL未満
※診断基準及び重症度分類の適応における留意事項
1.病名診断に用いる臨床症状、検査所見等に関して、診断基準上に特段の規定がない場合には、いずれの時期のものを用いても差し支えない(ただし、当該疾病の経過を示す臨床症状等であって、確認可能なものに限る)。
2.治療開始後における重症度分類については、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態であって、直近6か月間で最も悪い状態を医師が判断することとする。
3.なお、症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが、高額な医療を継続することが必要なものについては、医療費助成の対象とする。
4.CADについては寒冷回避が原則で、副腎皮質ステロイドが一般的に無効であるため、薬物療法が必要でも適切な治療法を選択し得ない場合がある。

厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業 特発性造血障害に関する調査研究班(研究代表者 三谷絹子):自己免疫性溶血性貧血診療の参照ガイド 令和4年度改訂版.p.13.(2023年9月13日閲覧) http://zoketsushogaihan.umin.jp/file/2022/Autoimmune_hemolytic_anemia.pdfより引用

自己免疫性溶血性貧血の重症度分類の結果を看護に活かす!

 前述したように、AIHAは病型によって症状の現れ方が異なります。それぞれで予測される状態変化などを正しく把握して、日々の観察やケアに活かすようにしましょう。

 AIHAの治療には、副腎皮質ステロイド薬、免疫抑制薬、抗体医薬などによる薬物療法のほかに、脾臓摘出術(脾摘)などがあり、病型や患者さんの状態に合わせて治療法が選択されます。

 薬剤は継続投与が必要なものが多く、特有の副作用が生じることもあり、脾摘も患者さんに大きな負担がかかります。治療に関して、医師からの説明でわからないことがないか患者さんに確認し、必要であれば再度医師に説明してもらう機会を設けたり、看護師からも薬剤の特性や副作用が生じた際の対応について丁寧に説明したりするなど、安心して治療に取り組めるように支援していきます。

 また、治療効果を適切に評価するためにも、重症度の変化を見逃さないことが大切です。何らかの変化が疑われるときは、速やかに医師に報告します。

引用文献

1)厚生労働省:61 自己免疫性溶血性貧血.(2023年9月13日閲覧) https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000089910.pdf
2) 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業 特発性造血障害に関する調査研究班(研究代表者 三谷絹子):自己免疫性溶血性貧血診療の参照ガイド 令和4年度改訂版.p.13.(2023年9月13日閲覧) http://zoketsushogaihan.umin.jp/file/2022/Autoimmune_hemolytic_anemia.pdf

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