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【連載】スケール・評価基準を使いこなそう!

Kellgren-Lawrence分類

  • 公開日: 2024/2/3

Kellgren-Lawrence分類は何を判断するもの?

 Kellgren-Lawrence分類とは、変形性膝関節症の重症度を評価するためのスケールです。Kellgren-Lawrence分類は1957年に提唱された歴史が古いスケールですが、現在でも広く用いられています1)

 変形性膝関節症は、加齢や体重などの影響で関節軟骨の摩耗を引き起こし、膝の痛みや歩行障害をもたらす疾患です。治療としては、薬物療法(アセトアミノフェン、NSAIDs外用薬、ヒアルロン酸関節内注射など)や運動療法(筋力増強トレーニング、陸上運動、水中運動など)、装具療法などの保存療法が行われますが、これらでも改善しない場合は、関節鏡視下手術、高位脛骨骨切り術、人工膝関節置換術といった手術療法が選択されます。適切な治療につなげるためにも、Kellgren-Lawrence分類で変形性膝関節症の重症度を評価することは重要です。

Kellgren-Lawrence分類はこう使う!

 Kellgren-Lawrence分類では、骨棘形成の有無や関節裂隙の狭小化の程度などから、変形性膝関節症の重症度を評価します(表)。gradeが上がるほど重症度も高くなり、0は正常、Ⅰは変形性膝関節症の疑い、Ⅱは軽度の変形性膝関節症、Ⅲは中等度の変形性膝関節症、Ⅳは高度の変形性膝関節症と判断されます。

 Kellgren-Lawrence分類は、単純X線画像のみで簡易的に変形性膝関節症の重症度をスケーリングできますが、grade0で正常と判断されても、MRI検査を行うと74%に骨棘、69%に軟骨病変、52%に骨髄病変が認められ、全体では89%に何らかの異常所見がみられるとするデータ2)があるほか、画像上の変形の程度と患者さんが自覚する症状の強さが必ずしも一致するとは限らない点に注意が必要です。

 スケール上では重症度が高くないと考えられる場合でも、非常に強い痛みを自覚する患者さんがいる可能性もあるため、治療方法を検討する際は、自覚症状も考慮に入れた選択が必要となります。

表 Kellgren-Lawrence 分類

grade状態
0:正常骨棘なし
Ⅰ:疑い微小な骨棘形成が疑われる
Ⅱ:軽度軽度の変形性膝関節症。微小な骨棘形成あり。関節裂隙狭小化・骨硬化・骨嚢腫形成を認めることあり
Ⅲ:中等度中等度の変形性膝関節症。骨棘形成と中等度の関節裂隙狭小化
Ⅳ:高度高度の変形性膝関節症。顕著な関節裂隙の狭小化と大きな骨棘形成
山口智:変形性膝関節症の病態と鍼灸治療.日本東洋医学系物理療法学会誌 2019;44(2):11.より引用

Kellgren-Lawrence分類の結果を看護に活かす!

 変形性膝関節症の患者さんの看護にあたるときは、Kellgren-Lawrence分類による重症度を正しく把握して、日頃のケアに活かせるとよいでしょう。ただし、前述したように、Kellgren-Lawrence分類で正常と判断された場合でも、何らかの異常を有していたり、患者さんが痛みや生活への支障を感じたりしている可能性もあります。スケーリングの結果だけにとらわれず、患者さんの訴えに注意深く耳を傾けることも大切です。

 膝への負担を避けるために、体重管理や生活様式の見直しについても指導を行います。食事や運動で体重をコントロールするのとあわせて、和式の生活スタイル(正座をする、自宅で和式トイレを使用している、布団で寝ているなど)であれば、洋式の生活スタイル(椅子に座る、洋式トイレに変更する、ベッドで寝るなど)を取り入れるよう提案します。

引用・参考文献

1)J. H. Kellgren,et al:Radiological Assessment of Osteo-Arthrosis.Ann Rheum Dis 1957; 16(4):494–502.
2)Ali Guermazi,et al:Prevalence of abnormalities in knees detected by MRI in adults without knee osteoarthritis: population based observational study(Framingham Osteoarthritis Study).BMJ 2012;345:e5339.
●日本整形外科学会:変形性膝関節症診療ガイドライン2023.南江堂,2023.

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