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【連載】スケール・評価基準を使いこなそう!

Mayoスコア

  • 公開日: 2024/4/1

Mayoスコアは何を判断するもの?

 Mayoスコアとは、潰瘍性大腸炎の治療薬で、大腸の炎症を抑える働きをもつメサラジン経口剤の有効性と安全性を評価するために開発された指標です1)。治療効果の判定に加え、大腸の炎症の程度も評価できるため、潰瘍性大腸炎の活動性を示すスケールとしても活用されています。

 潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜にびらんや潰瘍を形成する炎症性腸疾患です。原因不明で根本的治療法が確立されておらず、日本では難病に指定されています。病変範囲や重症度により異なりますが、下痢や血便、腹痛のほかに、発熱、体重減少、貧血など、全身にさまざまな症状を引き起こします。

 再燃と寛解を繰り返すケースが多く、長期にわたり寛解を維持するためにも、Mayoスコアを用いて重症度を評価し、適切な治療を継続して行っていくことが重要です。

Mayoスコアはこう使う!

 Mayoスコアでは、排便回数、血便、粘膜所見、医師による全般的評価の4項目をそれぞれスコア化し、その合計点をもとに重症度を評価します(表)。

 まずは排便回数、血便、粘膜所見の3項目についてスコア化し、続いて、3項目の結果と腹部不快感や全身状態などから医師による全般的評価を行います。4項目の合計は12点満点で、点数が高いほど重症度も高くなり、3~5点を「軽症」、6~10点を「中等症」、11~12点を「重症」と評価するのが一般的です2)

表 Mayoスコア

1. 排便回数*1
スコア3. 粘膜所見スコア
正常回数
0正常または非活動性所見0
正常回数より1〜2 回/日多い1軽症(発赤、血管透見像の減少、軽度脆弱)1
正常回数より3〜4回/日多い2中等症(著明に発赤、血管透見像の消失、脆弱、びらん)2
正常回数より5回/日以上多い3重症(自然出血、潰瘍)3
2. 血便*2
スコア4. 医師による全般的評価(PGA)*3
スコア
血便なし0正常0
排便時の半数以下でわずかに血液が付着(縞状)する1軽症1
ほとんどの排便時に明らかな血液の混入が見られる2中等症2
大部分が血液である3重症3
※点数は3日間の所見に基づく
*1 排便回数は各々の被験者で正常回数を設定し、スコア化する。
*2 血便スコアは1日の内で最も高度な血便状態を記録する。
*3 PGA(Physicianʼs global assessment:医師による全般的評価)は、他の3つの評価基準(排便回数、血便、粘膜所見)、腹部不快感、全身状態、主治医所見および被験者の印象等を参考に記録する。

厚生労働省研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業 難治性炎症性腸管障害に関する調査研究(鈴木班):第二版炎症性腸疾患の疾患活動性評価指標集.p.9.(2024年3月12日閲覧)http://www.ibdjapan.org/for_medical/pdf/doc07.pdfより引用

Mayoスコアの結果を看護に活かす!

 潰瘍性大腸炎では、慢性的な腹痛や下痢などが起こり、日常生活に大きな支障を来します。普段どおりの生活を送れるようにするためにも、症状が安定した寛解期でも油断せず、定期的な受診と継続的な治療に取り組むよう、患者さんに働きかけることが大切です。

 また、重症度が変わると治療内容の変更が検討される場合もあるため、Mayoスコアによる評価を正しく把握し、患者さんから病状の進行が疑われる訴えがあった際は、速やかに医師に報告します。

 潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患では、不安や抑うつを合併しやすく3)、4)、5)、症状の悪化につながる可能性も否定できません。患者さんの話は積極的に傾聴し、安心して治療に臨める環境を整えることが求められます。

引用・参考文献

1)Schroeder KW, et al:Ilstrup DM. Coated oral 5-aminosalicylic acid therapy for mildly to moderately active ulcerative colitis.A randomized study. N Engl J Med 1987;317:1625-9.
2)厚生労働省研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業 難治性炎症性腸管障害に関する調査研究(鈴木班):第二版炎症性腸疾患の疾患活動性評価指標集.p.9.(2024年3月12日閲覧)http://www.ibdjapan.org/for_medical/pdf/doc07.pdf
3)Graff LA,et al: Depression and anxiety in inflammatory bowel disease: a review of comorbidity and management. Inflamm Bowel Dis 2009;15(7):1105-18.
4)Walker JR,et al:The Manitoba IBD Cohort study: a population-based study of the prevalence of lifetime and 12-month anxiety and mood disorders. Am J Gastroenterol 2008;103(8):1989-97.
5)Antonina A,et al.: Psychological problems in gastroenterology outpatients: A South Australian experience. Psychological co-morbidity in IBD, IBS and hepatitis. Clin Pract Epidemiol Ment Health 2008;4:15.
●潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針.厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(久松班)令和4年度分担研究報告書.p.5.(2024年3月12日閲覧) http://www.ibdjapan.org/pdf/doc15.pdf

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