ニコチン依存度のスクリーニングテスト(Tobacco Dependence Screener:TDS)
- 公開日: 2024/4/9
TDSは何を判断するもの?
ニコチン依存度のスクリーニングテスト(Tobacco Dependence Screener:TDS)とは、ニコチン依存症か否かを評価するためのスケールです。WHOの「国際疾病分類第10版」(ICD-10)やアメリカ精神医学会の「精神疾患の分類と診断の手引き(改訂第3版および第4版)」をもとに開発されたもので、ニコチン依存症を精神医学的な側面から評価するのが特徴です。
ニコチン依存症は、血中のニコチン濃度が一定以下になると、不快感や不安感などの精神的な不調が生じ、喫煙を繰り返してしまう疾患です。ニコチンはドーパミンをはじめ、ノルエピネフリン、セロトニン、アセチルコリンなどの神経伝達物質の分泌に関与しており、日常的にニコチンを摂取すると、これらの神経伝達物質の調節をニコチンに支配され、自力で分泌する能力が低下します。その結果、禁煙したり、喫煙できない状態が続いたりすると神経伝達物質の分泌が低下し、離脱症状がみられるようになります。
日本では、2006年に「ニコチン依存症管理料」の算定が開始され、4つの条件〔①直ちに禁煙しようと考えていること、②TDSが5点以上であること、③35歳以上の場合はブリンクマン指数(1日喫煙本数×喫煙年数)が200以上であること、④禁煙治療を受けることを文書により同意していること〕をすべて満たす患者さんについては、禁煙治療プログラムを行う際に保険が適用されます。
TDSはこう使う!
TDSでは、喫煙行動に関する10個の質問に「はい」か「いいえ」で回答してもらい、その合計点でニコチン依存症に該当するかどうかを判断します(表)。1つの設問につき、「はい」の場合は1点、「いいえ」の場合は0点とスコア化し、5点以上でニコチン依存症と診断されます。
表 ニコチン依存度のスクリーニングテスト(TDS)
設問内容 | はい 1点 | いいえ 0点 | |
---|---|---|---|
問1. | 自分が吸うつもりよりも、ずっと多くタバコを吸ってしまうことがありましたか? | ||
問2. | 禁煙や本数を減らそうと試みて、できなかったことがありましたか? | ||
問3. | 禁煙したり本数を減らそうとしたときに、タバコがほしくてほしくてたまらなくなることがありましたか? | ||
問4. | 禁煙したり本数を減らしたときに、次のどれかがありましたか? (イライラ、神経質、落ちつかない、集中しにくい、ゆううつ、頭痛、眠気、胃のむかつき、脈が遅い、手のふるえ、食欲または体重増加) | ||
問5. | 問4でうかがった症状を消すために、またタバコを吸い始めることがありましたか? | ||
問6. | 重い病気にかかったときに、タバコはよくないとわかっているのに吸うことがありましたか? | ||
問7. | タバコのために自分に健康問題が起きているとわかっていても、吸うことがありましたか? | ||
問8. | タバコのために自分に精神的問題(※)が起きているとわかっていても、吸うことがありましたか? | ||
問9. | 自分はタバコに依存していると感じることがありましたか? | ||
問10 | タバコが吸えないような仕事やつきあいを避けることが何度かありましたか? |
川上憲人:TDSスコア.治療 2006;88(10): 2491-7.より引用
TDSの結果を看護に活かす!
禁煙治療に取り組む患者さんは、さまざまな離脱症状が出現し、場合によっては禁煙に失敗してしまうこともあります。禁煙に成功した患者さんの多くは何度もチャレンジしていることを伝え、失敗はマイナスではなく、次に活かすための貴重な経験として捉えてもらうことが大切です。
長期間、禁煙が継続できると、1本くらい吸っても大丈夫だろうと考える患者さんもいるかもしれません。1本でも吸ってしまったら逆戻りしてしまう可能性が高いため、喫煙による健康被害と禁煙の重要性を改めて伝えつつ、苦痛や不安などがあれば丁寧に傾聴することを心がけます。
参考文献
●厚生労働省:e-ヘルスネットTDSニコチン依存度テスト.(2024年3月12日閲覧)https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/tobacco/yt-048.html