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【連載】スケール・評価基準を使いこなそう!

国際的天疱瘡重症度基準(Pemphigus Disease Area Index:PDAI)

  • 公開日: 2024/4/15

PDAIは何を判断するもの?

 国際的天疱瘡重症度基準(Pemphigus Disease Area Index:PDAI)とは、天疱瘡の重症度を評価するためのスケールです。

 天疱瘡は、表皮細胞同士の接着を助けるデスモグレインと呼ばれるタンパク質に対する自己抗体が形成されることで、表皮細胞間の接着が障害され、皮膚や粘膜などに病変が認められる自己免疫性水疱性疾患です。

 主に口腔粘膜に疼痛を伴うびらんや潰瘍が生じる尋常性天疱瘡、頭部・顔面・胸部・背部などに落屑を伴う紅斑や浅いびらんが生じる落葉状天疱瘡、その他(腫瘍随伴性天疱瘡、増殖性天疱瘡、紅斑性天疱瘡、疱疹状天疱瘡、薬剤誘発性天疱瘡など)に大きく分類されます。どのようにして自己抗体が形成されるのか明確には解明されておらず、日本では難病の一つに指定されています。

 症状の改善と再発を予防するためには、重症度に合わせて集中的かつ十分な初期治療を行うことが必要です。PDAIは、治療導入期(急性期)の重症度を評価するのに適しているとされており1)、2)、治療方針を決定する際の重要な指標として役立てられています。

PDAIはこう使う!

 PDAIでは、全身の皮膚、頭皮、粘膜に、びらん、水疱、紅斑といった病変がどの程度みられるかそれぞれ評価してスコア化し、各項目のスコアを合算して重症度を評価します(表)。合計点数が8点以下を「軽症」、9点以上24点以下を「中等症」、25点以上を「重症」と判定します。

 病変範囲を数値化しているため、重症度はもちろん、治療効果が得られているかを客観的に評価しやすい点もメリットといえます。一方で、評価項目が多く、スケーリングが煩雑であることから、項目数を少なくした簡易版が併設されています。

 また、PDAIは医療費助成の対象となるかを判断するための指標としても用いられており、中等症以上で医療費助成の対象となります。

表 国際的天疱瘡重症度基準(PDAI)

国際的天疱瘡重症度基準(PDAI)
厚生労働省:35 天疱瘡.(2024年3月12日閲覧) https://www.nanbyou.or.jp/wp-content/uploads/upload_files/File/035-201804-kijyun.pdfより引用

PDAIの結果を看護に活かす!

 天疱瘡の患者さんの看護にあたるときには、PDAIによる重症度を正しく把握したうえで、ケアを行えるとよいでしょう。

 天疱瘡では、皮膚や粘膜などに疼痛を伴う症状がみられる場合があるほか、治療も長期にわたるため、大きな苦痛や不安を抱えている患者さんも少なくありません。患者さんの訴えには丁寧に耳を傾け、落ち着いて治療に取り組めるような支援を心がけます。また、症状について患者さんから気になる訴えがあった場合は、速やかに医師に報告します。

参考文献

1)天疱瘡診療ガイドライン作成委員会:天疱瘡治療ガイドライン.日本皮膚科学会雑誌 2010;120(7):1443-1460.
2)天谷雅行,他:厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患政策研究事業) 分担研究報告書 臨床症状スコアpemphigus disease area index(PDAI)を用いた天疱瘡の重症度の評価.(2024年3月12日閲覧) https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2014/143061/201415104A_upload/201415104A0005.pdf
●厚生労働省:35 天疱瘡.(2024年3月12日閲覧) https://www.nanbyou.or.jp/wp-content/uploads/upload_files/File/035-201804-kijyun.pdf
●山上淳,他:臨床検査アップデート29 天疱瘡・類天疱瘡を起こす自己抗体.モダンメディア 2019;65(5):108-12.

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