若年発症型両側性感音難聴の重症度分類
- 公開日: 2024/10/21
若年発症型両側性感音難聴の重症度分類は何を判断するもの?
若年発症型両側性感音難聴の重症度分類は、聴力レベルを測定することで難聴の程度、進行具合などを評価するためのスケールです。
若年発症型両側性感音難聴は、40歳未満の若年で発症する両側性感音難聴を指し、次の3つの条件を満たす場合に診断されます。
1.遅発性かつ若年発症である(40歳未満の発症)
2.両側性である
3.遅発性難聴を引き起こす原因遺伝子が同定されており、既知の外的因子によるものが除かれている
遺伝子との関連など少しずつわかってきている部分もありますが、発症メカニズムは明らかになっておらず、根本的な治療法も確立されていないため、指定難病とされています。難聴の程度や経過はさまざまで、進行に伴い、耳鳴りやめまいなどの症状を認めるケースも多くみられます。また、若年で発症することから、言語発達や教育に支障を来すおそれがあるほか、生活の質(QOL)の低下を招き、うつ状態に陥る場合もあります。
前述したように、有効な治療法はありませんが、聴力に応じて補聴器や人工内耳による補聴が行われたり、急激に進行した場合は、副腎皮質ステロイド、血管拡張薬、代謝賦活薬、ビタミン製剤などによる治療が実施されます。難聴の程度により治療法が検討されるため、若年発症型両側性感音難聴の重症度分類を用いて、聴力を評価することは重要といえます。
若年発症型両側性感音難聴の重症度分類はこう使う!
オージオメータという医療用検査機器を用いた標準純音聴力検査を行い、患者さんが聞き取ることができる最も小さな音の大きさ(閾値)を測定し、聴力を調べます。
重症度は正常、軽度、中等度、高度、重度の5段階に分類されており、25dBHL未満であれば正常、25dBHL以上40dBHL未満で軽度難聴、40dBHL以上70dBHL未満で中等度難聴、70dBHL以上90dBHL未満で高度難聴、90dBHL以上で重度難聴と評価します(表)。これにより、日常生活にどの程度の支障を来す可能性があるのかを判断することができ、影響を最小限に抑えるための治療の選択に役立ちます。治療後に評価を行う場合は、直近6カ月間で最も悪い状態で判断します1)。
また、若年発症型両側性感音難聴の重症度分類は、医療費助成の対象となるかどうかの判断にも用いられ、高度難聴以上で医療費助成の対象となります。高度難聴以上に該当しない患者さんであっても、高額な医療を継続することが必要な場合は、医療費助成の対象と認められるため、患者さんやその家族の経済的負担の軽減につながります。
表 若年発症型両側性感音難聴の重症度分類
0 | 25dBHL未満(正常) |
---|---|
1 | 25dBHL以上40dBHL未満(軽度難聴) |
2 | 40dBHL以上70dBHL未満(中等度難聴) |
3 | 70dBHL以上90dBHL未満(高度難聴) |
4 | 90dBHL以上(重度難聴) |
※500、1,000、2,000Hzの平均値で、聞こえが良い耳(良聴耳)の値で判断 |
参考文献
●宇佐美真一:若年発症型両側性感音難聴およびアッシャー症候群.指定難病を理解する.日本耳鼻咽喉科学会会報 2018;121(9):1214-7.
●武田憲昭:遅発性内リンパ水腫,若年発症型両側性感音難聴.耳鼻咽喉科関連指定難病法セミナー.日本耳鼻咽喉科学会会報 2017;120(8):1104-8.
●宇佐美真一,他:厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業(難治性疾患政策研究事業).難治性聴覚障害に関する調査研究.平成28年度 総括・分担研究報告書.(2024年9月13日閲覧) https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/25920