妊娠リスクスコア(初期妊娠リスクスコア、後半期妊娠リスクスコア)
- 公開日: 2024/10/1
妊娠リスクスコアは何を判断するもの?
妊娠リスクスコアは、妊娠・出産に伴うリスクを評価するためのスケールです。2004年に、厚生労働省研究班による「産科領域における安全対策に関する研究」において提唱されました1)。
妊娠・出産にはさまざまなリスクが伴います。例えば、母体年齢が高くなるにつれ、妊娠高血圧腎症、前置胎盤、帝王切開、早産、低出生体重児のリスクが高くなるというデータ2)があるほか、既往歴・現病歴、服薬、BMIなどもリスク因子となる可能性があります。飲酒や喫煙が悪影響をもたらすことも一般に広く知られていますが、妊婦の喫煙・飲酒は完全にはなくなっていないという報告もあり3)、何らかのリスクを抱えた状態で妊娠・出産を迎えるケースが少なくないことが伺えます。
妊娠リスクスコアには、妊娠が判明した初期の段階に評価する初期妊娠リスクスコアと妊娠20週以降に用いる後半期妊娠リスクスコアがあり、スコアをつけることで妊娠・出産に伴うリスクを早期に特定できるだけでなく、どの程度のリスクを有しているか、妊婦本人が客観的に把握するのに役立ちます。また、母子ともに安全な周産期を迎えるために、リスクに応じた医療機関を選択する際の指標の1つとして用いることもできます。
妊娠リスクスコアはこう使う!
前述したように、妊娠リスクスコアには、初期妊娠リスクスコアと後半期妊娠リスクスコアがあります(表1、表2)。初期妊娠リスクスコアでは18項目、後半期妊娠リスクスコアでは11項目について妊婦自身に回答してもらい、いずれも合計スコアでリスクを評価します。
スコアが高いほど、帝王切開や吸引・鉗子分娩、分娩時の出血多量、低出生体重児、児の死亡率、NICU入院率などのリスクが高まることがわかっており4)、高次機能医療機関での妊婦健診や分娩を考慮する必要があるといえます。
なお、スコアが低いからといって安全な出産になるとはかぎらないため、妊婦健診を欠かさず受けて、より安全な状態で出産に臨むことが大切です。
表1 初期妊娠リスクスコア
表2 後半期妊娠リスクスコア
引用・参考文献
2)K Ogawa,et al:Association between very advanced maternal age and adverse pregnancy outcomes: a cross sectional Japanese study.BMC Pregnancy Childbirth20 17;17(1):349.
3)厚生労働省:「健やか親子21」最終評価報告書.p.67.(2024年9月13日閲覧) https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000030713.html
4)中林正雄,他:厚生労働科学研究費補助金 医療技術評価総合研究事業.産科領域における安全対策に関する研究.平成16年度 総括・分担研究報告書.p.20-3.(2024年9月13日閲覧)https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/10215
●厚生労働省医政局総務課 医療安全推推進室:周産期医療施設オープン病院化モデル事業 3年間の取組―資料編―平成20年3月.(2024年9月13日閲覧) https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/i-anzen/houkoku/dl/080328-1c.pdf
●厚生労働省:妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針~妊娠前から、健康なからだづくりを~解説要領.令和3年3月.(2024年9月13日閲覧) https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/a29a9bee-4d29-482d-a63b-5f9cb8ea0aa2/aaaf2a82/20230401_policies_boshihoken_shokuji_02.pdf