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【連載】フィジカルアセスメント症状別編

痙攣とは?痙攣の種類と原因、アセスメントのポイント

  • 公開日: 2011/10/18

自分の身体の動きをコントロールできない。そんな症状の一つが痙攣です。脳もしくは神経伝達ルートのどちらかに原因が潜んでいます。

患者さんからの訴えがあったときに、どんなことを想定してアセスメントをすればよいのか、基本的な知識を解説します。


痙攣の種類と原因・メカニズム

痙攣とは?痙攣の種類

痙攣の様子を適切につかむ

身体が動く運動には、随意運動と不随意運動の二つがあります。例えば自分の意思で顔面や手足を好きなように動かすのが随意運動で、自分の意思とは関係なく動くのが不随意運動といえば分かりやすいでしょうか。

今回のテーマである痙攣という症状は、筋肉が全身または部分的に不随意に収縮する発作的症状です。例えば、健康な人でも経験するこむら返りもその一つです。これはふくらはぎの筋肉が痙攣するもので、「足がつる」ともいいます。

このように痙攣というと、「つる」「ひきつれる」といった筋肉が緊張してこわばった感じの表現や「ぴくぴく」「ひくひく」という筋肉の収縮と弛緩の反復を示す擬態語が用いられることが多いのではないでしょうか。しかし、こうした一般的な言い回しは、痙攣の一面を表していることにすぎません。

痙攣は全身性と顔面やまぶたなど部分的に起こるものに分けられます。

また、全身性の痙攣は
・間代性痙攣
・強直性痙攣
に大きく分けられます。

痙攣が起こったという訴えに接した場合には、一般的な言い回しに引きずられないで、筋肉の収縮と四肢の様子を適切に把握するように努めましょう。

なお、痙攣発作が異常に長く続いたり、短い間隔で頻発する状態を痙攣重積状態といいますが、後遺症が残ったり、死に至ることもある重篤な状態なので注意が必要です。

痙攣のメカニズムと原因疾患

痙攣という症状を引き起こす原因を考えるときに、まず思い浮かべたいのは、身体を動かすメカニズムです。

自分の身体が思い通りに動くのは、大脳皮質→錐体路→小脳→上位運動ニューロン(脊髄)→下位運動ニューロン(末梢神経)→神経筋接合部→筋肉という順に情報が電気信号として伝わり、筋肉が動くという仕組みがうまく働いているからです。

痙攣が生じるのは、このルートのどこかで何らかの原因によって異常な放電が起こり、そこから先に異常な電気信号が伝わってしまい、筋肉の収縮が起こるためです。

したがって痙攣の原因を探ると、脳に起因しているのか、途中の伝達ルートにトラブルが起こっているのかがわかり、そこがアセスメントの出発点になります。

さらに、全身性痙攣は間代性痙攣と強直性痙攣に分けられます。

間代性痙攣
間代性痙攣は、筋肉が収縮と弛緩を反復するもので、四肢は伸展と屈曲を繰り返します。

強直性痙攣
強直性痙攣は、筋肉の収縮が持続し、緊張してこわばった状態になるため、四肢は強く伸展したまま、あるいは屈曲したままとなります。このような、痙攣時の様子もアセスメントの手がかりとなります。

緊急性や原因疾患として精査すべきリストは下記の通りです。

脳の障害によるもの

  メカニズム 主な疾患
機能的障害 何らかの原因で脳の細胞が異常興奮を起こし、それが筋肉に伝わり発症する。原因は不明 真性てんかん
器質的障害 脳の器質的異常が原因となり、痙攣を引き起こす 脳挫傷、硬膜下血腫、くも膜下出血、脳梗塞、脳炎、脳髄炎、脳膿瘍、脳腫瘍

脳の障害以外によるもの

  メカニズム 主な疾患
内分泌・代謝異常 血中ブドウ糖や電解質の異常によって起こる テタニー、低血糖、水・電解質異常
その他   熱性痙攣、熱射病、過換気症候群、こむら返り

脳に起因
脳出血脳梗塞、くも膜下出血などの脳血管障害や脳腫瘍、頭部外傷による脳挫傷。また、てんかんも脳に起因する疾患で、痙攣を伴う代表例です。

脳以外のルートに起因
水・電解質の異常、糖代謝異常、熱性痙攣、過喚起症候群など。

全身性の痙攣が見られる場合は要注意

どのような症状が起こった場合でも、優先事項として判断すべきことは緊急性の有無です。患者さんの意識がない場合や呼吸停止、痙攣の持続などがあれば、緊急対応となります。

患者さんの意識があっても、全身性の痙攣が生じていて、痙攣重積状態につながる恐れがあれば、痙攣を食い止めるための緊急対応が必要になります。なぜなら、痙攣が起こると脳で消費される酸素量が増えるために低酸素状態になるので、不可逆的な脳損傷を招く可能性があるからです。

顔面やまぶたなどの部分的な痙攣は、重篤な状況に陥る恐れはないと考えられます。しかし、身体の一部から始まって全身に広がるような場合には、脳に起因している可能性が高いので、発作時の症状や経過などを問診しながら、原因を精査していきましょう。

また、同じように身体が思うようにコントロールできなくなる症状として麻痺も考えられるため麻痺との鑑別も必要です。

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痙攣のアセスメントと看護のポイント

次は、どうアセスメントしていけばよいのかを具体的に解説します。 患者さんへの質問や観察で原因を絞り込んでいきましょう。

発症の様子や具体的な症状から絞り込む

患者さんが話せる状態であれば本人に、意識消失状態であれば側にいた人に、症状の内容や発症、経過などを聞き取ります。

具体的な症状の様子、内容を聞く

「身体のどんな感じが気になりますか?」

■こんな質問で絞り込もう
「ぴくぴく、あるいはひくひくしますか?」
「ひきつるような感じですか? それとも曲げられたような感じですか?」
「勝手に身体が動くような感じですか?」
「それとも身体の自由が利かない感じですか?」
「震える感じですか?」

■アセスメントのヒント
一口に痙攣といっても、実際には症状の内容は多岐に渡っています。より正確に把握するためには、痙攣という言葉をさまざまな表現に置き換えて情報を引き出すことが大切です。

自分で自分の身体の動きがコントロールできない状態は、痙攣だけではありません。例えば、麻痺もその一つです。

身体が震えている場合は、振戦の可能性があります。振戦はパーキンソン病、ストレス、不安、疲労、アルコール中毒の禁断症状でも生じます。痙攣と誤認しないように鑑別しましょう。

発症と経過を聞く

「症状が出るようになったのは、いつからですか?」

■こんな質問で絞り込もう
「こういう症状が出たのは初めてですか? それともこれまでにもありましたか?」
「今までに何回くらいありましたか?」
「ずっと継続していますか?」

■アセスメントのヒント
これが初めてではなく、過去にも経験がある場合には、てんかん発作が考えられるので、既往歴を確認しましょう。

ずっと継続している場合には、痙攣重積状態になる可能性があるので注意が必要です。

10分間以上継続する痙攣の場合には、痙攣重積状態と考えられます。

症状が出現する部位を聴く

「身体のどの部分に症状が起こりますか?」

■こんな質問で絞り込もう
「どのあたりに起こりますか?」
「全身ですか?」
「特定の場所ですか?」

■アセスメントのヒント
まぶた、顔面、ふくらはぎなどの局所的な症状であれば、筋の痙攣であると考えられます。

全身に起こる場合には、脳疾患が原因のものとそれ以外が原因となったものが考えられます。糖尿病の低血糖症状であれば、血糖値の測定と既往歴や服薬状況で確認できます。

随伴症状や原因の心当たりを聞く

「そのほかに、何か気になることや原因として考えられることはありませんか?」

■こんな質問で絞り込もう
「この症状が出る前に何か不快な症状はありませんでしたか?」
「熱はありませんか?」
「いつもより激しく運動をしたり、身体を動かしたりしていませんでしたか?」
「いつもより水分摂取量が少なかったですか?」

■アセスメントのヒント
てんかん発作による痙攣の場合には、前駆症状が出る場合があります。主な前駆症状としては、めまい、頭痛、しびれ、ぼーっとする、などです。発症の経過や回数などの問診も併せて判断しましょう。

発熱を伴う場合は熱性痙攣の可能性があります。
脱水症や激しい運動直後には、水・電解質の異常によって痙攣が生じることがあります。

緊急性の有無とともに倒れた際の外傷がないかも見る

緊急性の判断で必須なのは、意識状態および呼吸状態の確認です。

●バイタルサインのチェック

脈拍を測ることで、全身状態の把握するほかに、意識レベル、呼吸状態を確認します。

体位の確認

意識を消失している患者さんで、上肢が屈曲し、下肢が伸展した姿勢になっている場合、間脳レベルで障害を受けていると考えられます。これを除皮質硬直といいます。さらに間脳から中脳に障害が及んだ場合には、上肢が回内伸展し、下肢と体幹が伸展します。これらは麻痺の特徴で、この肢位が確認されたら緊急対応が必要です。また、間代性痙攣や強直性痙攣の特徴が見られないか観察します。

血液検査・頭部CT

転倒や転落があった場合、外傷がないかどうかを確認します。

体位の確認

全身性の疾患の可能性もあるので、血液検査で電解質の異常はないか、どこかで炎症が起きていないか(CRPの確認)、低血糖に陥っていないか、また脳疾患の疑いがある場合は頭部CTで確認が必要です。

アセスメントを看護につなごう

痙攣が起こる原因として、運動の命令伝達ルートの中でも重篤なトラブルは、やはり脳の中枢で起こった場合です。脳出血脳梗塞、くも膜下出血などの脳血管障害は生命危機にもつながるので、迅速に対応しなければなりません。緊急性の判断を優先し、救命救急につなげましょう。

緊急性がないと判断できる場合でも、患者さんの不安や苦痛をできる限り軽減する必要があります。

目の前で患者さんが痙攣発作を起こした場合には、慌てずに落ち着いて、呼吸状態や意識状態を確認しましょう。

また、痙攣の場合、緊急性や意識障害の有無にかかわらず、転倒・転落予防に注意しなければなりません。転倒したと思われる場合には、外傷がないかどうか、確認して必要なケアを行いましょう。

脳血管障害などに起因している場合は救急対応が必要

脳血管障害など脳に起因する痙攣の可能性が高い場合は、問診の際に、脈拍を測定して不整脈の有無を確認し、高血圧や糖尿病など動脈硬化を引き起こす既往歴の確認なども行いましょう。

そして、即座に治療を開始する必要があるので、医師に連絡を取り、アセスメントで得た情報を速やかに伝えましょう。

呼吸困難に陥っている場合には、挿管の必要があります。さらに、嘔吐を伴う場合には、誤嚥しないように、気道の確保と体位の確保をしなくてはなりません。その場を離れず、ただちに応援を要請し、患者さんの状態を見守りながら、スタッフを待ちましょう。

緊急性がなくても発作時の転倒・転落に気をつける

繰り返し痙攣が起こる場合には、転倒・転落の防止策が必要です。対策としては、ベッド柵を上げる、患者さんの身体とベッド柵の間にタオルや枕などをおくなどが考えられます。

てんかん発作の場合には、前兆を自覚したら、すぐ看護師に伝えてもらう、転倒・転落を起こさないようにベッド上で安静にするなどの対応を指導します。内服薬の必要がある場合には、患者さん本人および家族にも服薬管理の重要性などを指導しましょう。

糖尿病の低血糖症状の場合も同様です。服薬のタイミングがずれると低血糖症状となって痙攣がみられるからです。

また、痙攣は突然起こり、突然治まることが多いため、症状が落ち着いたら、患者さんや家族に何が起こったのかなどをしっかりと説明することも大切です。

まとめ

痙攣発作イコールてんかんという思い込みは危険です。確かにてんかんで痙攣発作を起こすことは多いのですが、痙攣は症状であり、てんかんは疾患名です。てんかんの症状の一つが痙攣なのです。

AだからBと単純な図式に当てはめず、患者さんに何が起こっているのか、情報を集めて精査、評価、判断するのがアセスメントです。

(ナース専科「マガジン」2010年12月号より転載)

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