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【連載】代表的な電解質異常を学ぼう!

電解質とは?身体のしくみと電解質異常

  • 公開日: 2014/7/24

臨床看護師として理解しておきたい、電解質と電解質異常の基本知識について解説します。


電解質とは?なぜ電解質は重要なの?

電解質とは、水などの溶媒に溶解した際に、陽イオンと陰イオンに電離する物質のことで、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、リン(P)、クロール(Cl)、重炭酸(HCO3)などがあります。

これらは主要ミネラルとしても重要で、身体の機能の維持や調節など、生命活動に必要な役割を果たすために、体内にある一定の範囲内で保持されています。

ところが、さまざまな理由で過不足が生じ、その恒常性が破綻すると、「電解質異常」が起こります。

電解質異常は、臨床のあらゆる場面で遭遇する病態であり、重症例では致死的不整脈など、生命を脅かすことも少なくありません。

さらに最近は、高齢者の増加、心血管障害や悪性腫瘍の増加、薬剤の影響、サプリメントの乱用などにより増加傾向にあります。

電解質異常を早期に発見し、適切に治療することは非常に重要なことなのです。

電解質はどんな働きをしているの?

ここで、主要な電解質がどのような役割をしているのか、簡単に触れておきましょう。

Na(ナトリウム)

細胞外液の主要な陽イオン。Naの増減はClとともに細胞外液量の増減を意味します。

体液の浸透圧を一定に保つ働きがあり、血圧の調整系と密接に関係しています。神経や筋肉の刺激伝達を助け、酸塩基平衡の調節を行います。

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K(カリウム)

細胞内液の主要な陽イオンで、Naとともに体液の浸透圧や酸塩基平衡の維持に関与します。

特に心筋の収縮など、神経や筋の活動に重要な働きをしています。

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Ca(カルシウム)

体内で最も多く存在するミネラルで、骨や歯の構造と機能を支えます。細胞膜を安定させ、心筋や骨格筋の収縮を促します。

骨で貯蔵できるので、ある程度不足しても骨が溶けることで供給することができます。

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P(リン)

細胞内液にある主要な陰イオン。Caとともに、骨にヒドロキシアパタイトという形で蓄積します。

細胞膜や骨の構成に不可欠で、糖代謝に必要な電解質でもあります。

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Mg(マグネシウム)

体内で4番目に多い陽イオン。炭水化物が代謝する場合の酸素反応を活性化したり、蛋白合成などの働きをしています。Caとともに骨や歯の主要なミネラルです。

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Cl(クロール)

細胞外液の主要な陰イオンで、体内の陽イオンとの結合で重要な化合物となります。Naを中和して、水分バランスの維持に関与します。

また、Clが110mEq/l以上であればアシドーシスが、96mEq/l以下ならアルカローシスが推測されるなど、酸塩基平衡状態をみる指標になります。

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電解質異常はどうして起きるの?

電解質は、食事などによって体内に取り込まれると、消化管から吸収されてまず細胞外液に入ります。細胞外液での電解質の過不足は、視床下部にあるセンサーによって感知され、神経伝達系により抗利尿ホルモンを産生分泌します。

これが腎臓に作用して、どのくらい尿中へ排泄するかを調節します。電解質代謝の恒常性はこのようなしくみで、主に腎臓によって維持されています。

電解質の体外への排泄は、ほとんどが腎臓を経由して尿中に排泄されるので、腎機能障害があると、異常低値や異常高値を示します。

一方、腎機能以外に原因がある場合もあります。例えば、嘔吐・下痢など消化管からの喪失や、ドレーンチューブからの排液など腎以外による異常排泄、さらには食欲低下や偏食による摂取不足などです。

このように、電解質異常が起こる原因は、腎に原因があるか、腎以外かに大別することができます。

病状や疾患から推測できること

電解質異常は、臨床では検査値の異常から発見されることがほとんどです。

しかし、患者さんの疾患から電解質異常を推測する視点を持つことで、より早期での発見が増える可能性があります。また、症状や病歴からも電解質異常を推測することができます(下表参照)。

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疾患から推測する電解質異常

疾患から推測する電解質異常

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病歴から類推する電解質異常

病歴から類推する電解質異常

さらに、薬剤の作用による電解質異常にも注意が必要です。薬剤性で多いのはK代謝異常で、その背景には多くの場合、腎機能低下が基礎にあります。

特に、腎保護を目的に使用されるアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬は、高K血症のリスクをはらんでいます。

電解質バランスと腎にはどんな関係があるの?

電解質はその多くが腎臓を経由して排泄されます。しかも電解質バランスの恒常性の維持は非常に狭い範囲にあり、この精緻な調節を腎臓が行っています。このことから、これまで電解質異常は腎疾患の結果として起こると考えられてきました。

しかし、最近になって、電解質異常が慢性腎臓病(CKD)の進行因子になるという研究報告がアメリカで発表されました。主従の関係が従来の考え方と逆転したのです。

今後は、腎疾患の予防および進展を抑えるためにも、今まで以上に電解質バランスに注目することが重要になるでしょう。

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(『ナース専科マガジン』2014年8月号から改変引用)

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