腹腔ドレーンの目的と留置部位・排出メカニズム
- 公開日: 2015/12/12
主に腹腔内にある臓器の切除後に、死腔となって、液が貯留しやすい部位に留置されます。ドレーンは、患者さんの腹腔内がどうなっているのかという情報を得るためだけでなく、治療や貯留されているものを排液するためなどでも留置されています。そこで日々のアセスメントや観察が重要になってきます。
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ドレーンとは|ドレーンの種類と管理
腹腔ドレーンの目的
1.腹腔内の有害な液体を排出させる
2.感染源となりうる液体の貯留を防ぎ感染を防止する
3.排液から患者さんの状態を把握する
といった目的で行われます。
どのような手術を行ったかによって、ドレーンの留置部位は変わります。感染や患者さんの苦痛を軽減するためにも、留置する本数はできるだけ1本に、留置期間は短くするようになってきています。
腹膜炎の場合は、数本を留置することもあります。
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腹腔ドレーンの挿入部位
術後に死腔ができる部位に液体が貯留しやすいため、その部位に留置します。
腹腔ドレーン挿入部
①右横隔膜下のドレナージ
肝右葉と横隔膜の間に留置
②左横隔膜下のドレナージ
脾臓と横隔膜の間に留置
③ウィンスロー孔のドレナージ
網嚢(大網と小網によって形成される腹部の空間で、胃肝の背側にあたる空間)の腹膜腔への交通部に留置。この位置に留置することで、肝下面に留置したドレーンが変位しにくくなる利点がある
④モリソン窩のドレナージ
右腎と壁側腹膜で形成されるくぼんだ部分をモリソン窩といいます。この部位に留置
⑤右傍結腸溝のドレナージ
右の結腸の外側に留置
⑥左傍結腸溝のドレナージ
左の結腸の外側に留置
⑦ダグラス窩のドレナージ
直腸と子宮後面の間に留置。男性の場合は、直腸と膀胱の間に留置
腹腔はどうなっている?
腹腔は、横隔膜から下、骨盤までの間をさします。
腹腔内には、肝臓、腎臓、脾臓、大腸、小腸、胆嚢、胃、膀胱などの臓器が収まっています。腹腔は腹膜という薄い膜で覆われています。また、胸腔と違い、陰圧にはなっていません。
腹腔ドレーンの排出メカニズム
開放式ドレーンを用いる場合と、閉鎖式ドレーンを用いる場合があります。
開放式ドレーンは、ドレーンの端を体外に出たところで切離し、排出された排液をガーゼや吸収性ドレッシング材に吸収させます。
排液が少なく早期に抜去することができると予測される場合に用いられ、自然圧差や重力、オーバーフローを利用して排出させます。
閉鎖式ドレーンは、ドレーンの先端を排液バッグなどに接続します。自然の圧差や重力で排出を行うものと、さらに持続吸引器に接続して陰圧を加えて排出を促すものがあります。
排液バッグは挿入部よりも低い位置になるようにセットしますが、排液バッグが床に着かないように気を付けます。
閉鎖式ドレーンのほうが感染しにくいというメリットがあることから、ほとんどの場合、閉鎖式ドレーンを選択します。
閉鎖式ドレーン用排液バッグ
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● 開放式ドレナージと閉鎖式ドレナージの注意点
理解度UPのカギ
1.排液バッグは挿入部よりも低い位置に
2.ほとんどの場合、閉鎖式ドレーンが用いられる
ドレーン挿入患者さんがいたら、コレをチェック!
手術部位と留置部位
*胃切除、脾臓切除、膵臓切除
→左横隔膜下
*肝切除
→右横隔膜下、ウィンスロー孔
*胃切除、肝切除、胆嚢切除術後も入ることがある
→ウィンスロー孔、肝下面
*大腸の左側を切除
→左結腸傍溝、ダグラス窩
*大腸の右側を切除
→右結腸傍溝、ダグラス窩
*直腸切除
→ダグラス窩
病室に行ったら、まずコレをチェック
全身のアセスメント
1.表情、顔色に変化はないか
2.口調や話している内容に異変はないか
3.バイタルサインに異常はないか
排液のアセスメント
1.量は1日あたり100mL以下か
2.排液の色に異常はないか
3.性状は「さらさら」か
4.臭いはしないか
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● 腹腔ドレーンの排液の色のアセスメント
合併症のアセスメント
1.頻呼吸やSpO2の低下はみられないか
2.腹部膨満、腹痛・圧痛、腹膜刺激症状、腸蠕動音の減弱や消失はないか
3.冷汗はないか
4.チアノーゼはみられないか
5.尿量が低下していないか
刺入部・固定の観察
1.刺入部から浸出液が漏れていないか
2.テープがよれたり、剥がれたりしていないか
3.チューブが抜けていないか
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(『ナース専科マガジン』2013年4月号から改変利用)
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