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透析の看護|血液透析と腹膜透析、導入基準、観察項目、看護計画

  • 公開日: 2021/11/27

透析とは

 透析とは腎代替療法の1つで、疾患等で腎機能が低下した際、余分な水分や老廃物を人工的に除去する療法のことです。血液透析、腹膜透析、血液濾過透析などの方法があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。患者さんや家族の希望、ライフスタイル、身体的状況などを考慮してどちらかを選択します。

■透析患者さんの現状

 2019年末の日本透析医学会による「慢性透析患者に関する集計」では、透析患者さんの総数は344,640人、新規導入患者数は40,885人となっており緩やかに増加傾向にあります。原疾患は多い順に、糖尿病性腎症、慢性糸球体腎炎、腎硬化症となっています。最も透析患者さんの割合が多い年齢層は男女ともに70〜74歳でした1)

 透析によって調整する血液中の成分は主に、水分、クレアチニン、ナトリウム、カリウム、リン、尿酸、カルシウムなどです。

■透析導入基準

 透析の導入基準として厚生省研究班による平成3年度厚生科学研究腎不全医療研究事業研究報告書に透析の導入基準が示されています(表1)。

表1 透析の導入基準
以下の点数の合計が60点以上が透析導入が必要な状態
(1) 症状・所見
・水の貯留(むくみ・胸に水が溜まる)
・酸塩基電解質異常(高カリウム血症、酸の貯留)
・消化管の症状(吐き気・嘔吐・食欲不振)
・心臓の症状(呼吸困難・息切れ・心不全・著明な高血圧)
・神経の症状(意識混濁・けいれん・しびれ)
・血液の異常(貧血・出血が止まりにくい)
・目の症状(目がかすむ)
このうち3つ以上の症状 = 30点、2つの症状 = 20点、1つの症状 = 10点
(2) 腎機能
・持続的に血清Cr8mg/dL以上(あるいはクレアチニンクリアランス10mL/min以下)=30点
・血清Cr 5~8mg/dL(Ccr 10~20mL/min未満)=20点
・血清Cr 3~5mg/dL 未満(Ccr 20~30mL/min未満)=10点
(3) 日常生活の障害の程度
・起床できない高度 = 30点
・著しい制限中等度 = 20点
・運動・労働が出来ない軽度 = 10点
10歳以下または65歳以上の高齢者または糖尿病、膠原病、動脈硬化疾患など全身性血管合併症の存在する場合は10点を加算する。

 上記では腎機能の評価としてクレアチニンまたはクレアチニンクリアランスが用いられています。平成3年と現在を比べると、透析導入患者さんの年齢は高齢化してきています。2013年日本透析医学会による「維持血液透析ガイドライン:血液透析導入」ではクレアチニンは加齢による影響を受けるため、現時点では透析開始をクレアチニンの値のみで判断すべきではないとしています2)。その上で、ガイドラインでは透析導入のタイミングを判断する指標として下記を挙げています。

血清クレアチニン単独で評価すべきではなく、血清クレアチニン値を基にした推算式にて行う。その上で、血清クレアチニンやGFRの経時的変化、患者の体格、年齢、性別、栄養状態などを総合的に判断して、血液透析導入時期の判断をする3)

 腹膜透析の導入については、有用性を活かすためにCKDステージ4になった時点で腎代替療法について説明し、患者さんに十分な情報と知識を提供したうえで、計画的に行います。腹膜透析ガイドライン2019では導入のタイミングを「糸球体濾過量が6.0mL/min/1.73m3未満の場合には、透析導入を考慮する」4)としています。

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第11回透析はどんな仕組みで何を除去しているの?―血液透析(HD)、腹膜透析(CAPD)、血液濾過透析(HDF)
第12回 透析はどんな手順で導入するの?(シャント形成~)

血液透析(Hemodialysis:HD)

■血液透析の仕組み

 血液透析は、腕の血管に内シャントを作成し(バスキュラーアクセス)、透析器であるダイアライザーとつなぎ、血液を循環させて行います。血液透析は拡散の原理を用いています。拡散とは、水溶液中の物質は濃度の高いほうから低いほうへ移動し均等な濃度になろうとする現象のことをいいます。半透膜を隔てて患者さんの血液と透析液を流すことで、血液から老廃物を除去し、不足している成分を透析液から血液へ移動させます。

 水分の調節は限外濾過という血液側または透析液側に圧をかけることで除去します。

*バスキュラーアクセスには、内シャントのほかに人工血管、上腕動脈表在化、一時的留置カテーテル、長期留置カテーテルなどがあります。

■血液透析の特徴

 透析を開始する前に、まずはバスキュラーアクセスを作成します。作成の時期は、初回穿刺時から少なくとも1カ月以上前に行うことが望ましいとされています5)。透析を開始したら、週に3回の通院が必要となります。透析の時間は4〜5時間です。出張や旅行の際には、透析施設の確保が必要となります。

■長期留置カテーテル(カフ型カテーテル)

 バスキュラーアクセスの1つで、静脈内に血液透析用の長期留置カテーテルを作成する方法です。長期的な使用を目的としたもので、「慢性血液透析用バスキュラーアクセスの作製および修復に関するガイドライン」ではカフ型カテーテルと名称を統一するとしています6)

長期留置カテーテル(カフ型カテーテル)の適応6)
1 自己血管使用皮下動静脈瘻・人工血管使用皮下動静脈瘻増設不能例
2 高度の心不全症例
3 四肢拘縮、認知症などによる穿刺困難例、透析中の事故抜針リスクの高い症例など患者病態から本法が最も適切なバスキュラーアクセスと考えられる症例
4 小児の透析例 など

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第9回 透析導入時・透析維持期の看護のポイント

腹膜透析(Peritoneal Dialysis:PD)

■腹膜透析の仕組み

 腹膜透析は、自身の腹腔内の腹膜を用いて行います。老廃物の除去は血液透析と同じく拡散の原理を用いています。水分除去は、浸透の原理を用いています。これは、ブドウ糖などの濃度が血液より高い透析液を使用することで、血液との濃度差を作り余分な水分を透析液に移動させる原理のことです。

■腹膜透析の特徴

 腹膜透析は開始前に腹膜透析カテーテルの挿入を行います。透析後の交換などに1回30分程度の時間を要しますが、自宅や勤務先などで行うため通院は月に1、2回程度となります。出張や旅行は、透析液など必要な物品を持参する必要がありますが、透析施設の確保などは必要ありません。

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第9回 透析導入時・透析維持期の看護のポイント

透析患者さんへの看護

■透析導入期

 腎代替療法の種類について患者さんや家族に対して十分に情報提供を行い、どの療法を選ぶのか選択の支援を行うことが求められます。水分制限や食事療法、薬物療法、シャント造設、社会資源の活用などについて患者さんの理解度を確認しながら説明します。患者さんが透析を開始することを受け入れられているかといった心理面を考慮し、一度にすべてを説明するのではなく、必要であれば段階を踏んで説明していくことも大切です。

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第8回【CKD(慢性腎臓病)】透析導入期(ステージ5)の症状と治療
【CKD指導】透析を嫌がる患者さん

■透析維持期

 透析を行うことで以下のような合併症が発症することがあります。注意深く観察し、早期発見に努めることが大切です。また、シャントが狭窄していないかも確認するようにしましょう。

 体液管理だけではなく、心理面や就業状況、経済状況などにも注意を向け、患者さんを観察します。

透析による主な合併症
貧血、感染症、高カリウム血症、心不全、動脈硬化 など

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第9回 透析導入時・透析維持期の看護のポイント
第13回 透析患者さんの観察やシャント管理のポイントは?

透析時観察項目

 通院してきた患者さんの全身状態や自己管理の状況、仕事をしている人であれば仕事への影響などを確認します。透析中の患者さんにはさまざまな合併症が起こる可能性があります。患者さんの表情などを観察するとともに、悪心・嘔吐や頭痛などの症状がないかを確認しましょう。

透析中に起こる主な合併症
高血圧・低血圧
不整脈
不均衡症候群
血液のリーク・出血

看護計画

「糖尿病になって25年経ったところで透析導入となった患者さん」を例に作成した看護計画を紹介します。

看護問題
#透析導入に伴う身体的・精神的・社会的苦痛がある
#知識不足に関連したセフルケアへのサポートが必要な状態
#シャント造設による感染ハイリスク状態

看護目標
1透析導入を受け入れ、透析導入後の生活に希望をもつことができる
2患者さんとご家族が透析や疾患に対する適切な知識を身につけ、セルフケア行動をとることができる
3感染を起こさない

看護計画
1透析導入を受け入れ、透析導入後の生活に希望をもつことができる

O-P

  • 現在の生活状況(一日の生活リズム・仕事の状況など)
  • 病識の有無と理解度
  • 透析導入に対する思い
  • 不安の有無と程度
  • T-P

  • 不安の表出がある場合は傾聴し受け止める
  • 透析導入後の生活に対する希望を聴取し、それに沿った生活が可能か確認する
  • 導入前後の生活の変化を捉えやすいよう、必要に応じて表などにまとめる
  • 透析以外のことに目を向けられるように趣味の継続を勧める
  • 患者さんの理解度を他職種と共有し、指導に一貫性をもたせる
  • E-P

  • 利用可能な資源の調整と確保
  • 職場や所属団体への協力依頼
  • 類似ケースを提示するなどして、患者さんが導入後の生活をより具体的に考えらえるようにする
  • 2患者さんとご家族が透析や疾患に対する適切な知識を身につけ、セルフケア行動をとることができる

    O-P

  • キーパーソンの有無
  • ご家族の協力体制
  • 患者さんとご家族の病識
  • ストレスの有無と程度
  • T-P

  • 患者さんや家族との信頼関係を築く。必要に応じてかかわるスタッフを固定する
  • 指導後などに理解度を確認し、不足分については都度補足する
  • 活用できる資源や患者会・家族会を紹介する
  • E-P

  • ご家族に、患者さんを支える存在としての家族の役割を意識してもらう
  • ご家族の負担に対するケアも大切であることを伝える
  • 生活指導(食事・水分・運動・シャント管理など)
  • 3感染を起こさない

    O-P

  • 検査データ
  • バイタルサイン
  • 創部の状態
  • シャント音の確認
  • 痛みの有無と程度
  • T-P

  • 創部の消毒
  • 保清
  • 環境整備
  • 薬剤投与
  • E-P

  • シャント造設術の流れについて説明する
  • 感染兆候の観察ポイントを伝え、異常を感じた際は報告するように指導する
  • 創部の清潔が保てるよう指導する
  • 知っておきたい透析関連の略語

    略語 英語表記 意味
    AKI cute kidney injury
    急性腎障害
    AVF
    arteriovenous fistula
    自己血管使用皮下動静脈瘻
    AVG
    arteriovenous graft 
    人工血管使用皮下動静脈瘻
    CGN
    chronic glomerulonephritis
    慢性糸球体腎炎
    CKD
    chronic kidney disease
    慢性腎臓病
    eGFR
    estimated glomerular filtration rate
    推算糸球体濾過量
    RRT
    renal replacement therapy
    腎代替療法
    VA
    vascular access
    バスキュラーアクセス

    引用・参考文献

    1)日本透析医学会:2019年末の慢性透析患者に関する集計(2021年11月24日閲覧)https://docs.jsdt.or.jp/overview/
    2)日本透析医学会:維持血液透析ガイドライン:血液透析導入.透析会誌 2013;46(12):1121.
    3)日本透析医学会:維持血液透析ガイドライン:血液透析導入.透析会誌 2013;46(12):1117.
    4)日本透析医学会:導入.腹膜透析ガイドライン2019.2019,p.3.
    5)日本透析医学会:維持血液透析ガイドライン:血液透析導入.透析会誌 2013;46(12):1131.
    6)透析医学会:慢性血液透析用バスキュラーアクセスの作製および修復に関するガイドライン.透析会誌 2011;44(9):881.


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