Sellers分類(セラーズ分類)|大動脈弁閉鎖不全症・大動脈弁逆流症の重症度分類
- 公開日: 2022/9/20
Sellers分類は何を判断するもの?
Sellers分類は、大動脈弁閉鎖不全症・大動脈弁逆流症(aortic regurgitation:AR)の重症度を評価するスケールの一つです。
ARが疑われる場合、一般的に、経胸壁心エコー図検査(transthoracic echocardiography:TTE)が第一に実施され、重症度についてもTTEを用いた評価(軽度・中等度・高度)がなされますが1) 、心エコー図検査による評価が困難な場合や、心エコー図の所見と臨床症状に乖離がある症例に対しては心臓カテーテル検査が行われます2) 。Sellers分類は、心臓カテーテル検査における大動脈造影でARの重症度を評価するもので、重症度を決めるうえで重要な指標とされています1) 。
なお、Sellers分類は、僧帽弁閉鎖不全症・僧帽弁逆流症の重症度評価にも用いられることがありますが、「弁膜症治療のガイドライン」では、主にTTEを用いて分類するとしています3) 。
Sellers分類はこう使う!
Sellers分類では、心臓カテーテル検査による大動脈造影で、大動脈から左室内へ生じる逆流の程度を確認し、その程度によってARの重症度をスケーリングします(表)。Ⅰを軽症、Ⅱを中等症、Ⅲ~Ⅳを重症と評価し2) 、重症度のほか、治療方針を決める際にも役立てられます。
表 Sellers分類
Ⅰ | 左室への逆流ジェットを認めるが、左室全体は造影されない |
---|---|
Ⅱ | 左室全体が淡く造影される |
Ⅲ | 左室全体が大動脈と同程度の濃さに造影される |
Ⅳ | 左室全体が大動脈よりも濃く造影される |
ARの重症度分類はさまざまありますが、Sellers分類は心臓カテーテル検査によって逆流量を半定量化したうえでスケーリングされるため、正確性が高いスケールといえます。
ARは自覚症状がないケースも多いですが、重症化すると心不全を引き起こします。診断時だけでなく、進行が疑われるときは再検査を行って、重症度を見直すことが大切です。
Sellers分類の結果を看護に活かす!
急性発症のARでは、呼吸困難などの症状を来すことがありますが、多くは慢性の経過をたどり、自覚症状を認めないケースがほとんどです。しかし、進行すると左室肥大による心機能低下を引き起こすおそれがあるため、進行を疑う症状がみられるときは、速やかに医師に報告します。
Sellers分類での評価は、ARの重症度や治療方針の決定に用いられるだけでなく、保存的治療を選択した患者さんへの服薬指導や生活指導などの介入、経過観察の頻度を決定する際の指標にもなります。AR患者さんの看護にあたる際は、スケールによる重症度を正しく把握して、アセスメントやケアに役立てるとよいでしょう。
引用・参考文献
2)日本循環器学会,他:弁膜症治療ガイドライン 2020年改訂版.p.52.(2022年8月31日閲覧) https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/04/JCS2020_Izumi_Eishi.pdf
3)日本循環器学会,他:弁膜症治療ガイドライン 2020年改訂版.p.24-5.(2022年8月31日閲覧) https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/04/JCS2020_Izumi_Eishi.pdf
●日本心臓財団:大動脈弁逆流の原因とその病態.(2022年8月31日閲覧) https://www.jhf.or.jp/pro/special/page02.html