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【連載】急変の判断と対応

重症不整脈(無脈性VTとVf)のアルゴリズムと対応のポイント

  • 公開日: 2014/12/14

急変に遭遇!そんなときに慌てず焦らず処置を行うには、急変対応を繰り返しおさらいしておくことが必要です。
今回は、無脈性の心室頻拍(VT)と心室細動(Vf)のアルゴリズムを解説します。


▼不整脈の看護について、まとめて読むならコチラ
不整脈の看護|検査・治療・看護のポイント


絶対に知っておくべき2つの重症不整脈

VT(心室頻拍)とは

 VT(心室頻拍)とは、心室期期外収縮(VPC)が連続して発生し、心拍数が100~250回/分になる頻脈のことです。心室においてリエントリーまたは異所性刺激が連続して発生することにより、VTが出現します。

VTの波形の例
[図2-2-1] 幅広いQRS波が規則正しく連続して出現

【関連記事】
<読み方・対応編⑦>心室頻拍(VT)
心電図でみる心室頻拍(VT)の波形・特徴とは?

持続時間による分類

 1. 非持続性心室頻拍・・・持続時間が30秒以内
 2. 持続性心室頻拍・・・持続時間が30秒以上

VTの症状

 血行が安定していれば、意識は清明で、動機や呼吸困難が主症状となります。血行動態が悪化し心拍出量を保つことができなくなれば、意識消失します。これを「無脈性VT(pulseless VT)」と呼びます。Vf(心室細動)に移行する危険性があるため、救急処置が必要になります。

Vf(心室細動)とは

 Vf(心室細動)とは、心室筋細胞がばらばらに興奮している状態で、突然死の原因の多くを占める非常に危険な不整脈です。

Vfの波形の例
[図2-2-2] 振幅も周波数も全く不規則な波が連続して見られる

 心室全体が無秩序に収縮、拡張を起こしているため、正常なポンプ機能を維持することができなくなります。そのため、心拍出量を保つことができず、脳や全身に血液を送ることができなくなり、その状態が持続すると短時間で死に至るため緊急処置を要します。

【関連記事】
心室細動(Vf)|心電図でみる波形・特徴とは?
<読み方・対応編⑨>心室細動(VF)

無脈性の心室頻拍(VT)と心室細動(Vf)への対応

【関連記事】
心停止(心静止・PEA)への急変対応 6ステップ

ステップ1 意識を確認する

 心電図モニター上に心静止を発見した、または、心電図の波形が出ているにもかかわらず患者さんが全く動く様子がないなど、様子がおかしい場合は、まず意識レベルを確認します。

 患者さんを呼びながら肩をしっかりと叩き刺激を与えます。それと同時に呼吸が正常か異常かを確認します。呼吸をしていなかったり、あえぎ呼吸の場合は呼吸が停止していると判断します。

ステップ2 応援とAEDを要請する

 患者さんの意識や呼吸がないことを確認したら、ナースコールや大声を出して助けを呼びます。救急カートとAED、医師への報告を依頼し、スタッフを集めます。

ステップ3 脈拍を確認する

 脈拍を確認するためには、頚動脈を選びます。なぜなら、頚動脈は40~60mmHgという低い血圧でも触知でき、いちばん脈拍が確認しやすい部位だからです。頚動脈(胸鎖乳突筋と気管の間のくぼみ)に第2、3、4指をしっかり当て、5秒以上10秒未満で脈拍触知の有無を確認します。

5秒以上10秒未満で脈拍触知する理由

 心拍数が少ない患者さんもいますので、5秒以上触知する必要があります。ただし、できるだけ早く心肺蘇生を開始する必要があるので、10秒以上はかけないようにします。

ステップ4 心肺蘇生を(CPR)を実施する

1 胸骨圧迫

 脈拍を触知できないことを確認したら、意識レベルの低下、呼吸の停止、心拍の停止と判断し、すぐに胸骨圧迫を開始します。

 両手を重ねておき、手首を支点にして、肘はまっすぐに伸ばし、肩から手首までが垂直にの部分にのるように圧迫することで、心臓から全身に血液を送り出します。また胸骨を元の高さに戻すことで心臓の中に血液が充満しますので、手首の高さを十分に戻すこと(リコイル)が重要です。

圧迫する部位・タイミング・深さは以下のようにします。
 1. 部位・・・両乳頭の間(剣状突起は、圧迫すると骨折し臓器を損傷する危険性があるので、圧迫する部位に注意します。)
 2. タイミング・・・1分間に100回以上
 3. 深さ・・・成人で5cm以上、小児は胸郭の高さの1/3以上

胸骨圧迫説明図
[図] 胸骨圧迫

【関連記事】
胸骨圧迫とは|メカニズム、手順を知っておこう

2 人工呼吸

 30回の胸骨圧迫のあと、人工呼吸を2回行います。ただし、感染予防の観点から、ポケットマスクやバッグバルブマスクなど人工呼吸補助器具がない場合は、無理に人工呼吸を行わず胸骨圧迫を続けます。

 人工呼吸補助器具がある場合は、頭部後屈顎先挙上し、補助器具を口と鼻に密着させ、軽く胸郭が上がる量の空気を1秒程度吹き入れます。(たくさんの空気を長い時間送り込むと、胃内容物を嘔吐し誤嚥させたり、胸腔内圧があがるため、せっかく胸骨圧迫で押し込んだ血流を滞らせてしまうので、軽く吹き込むだけにします。)

気道確保の方法実践写真
[図] 気道確保の方法

 応援が来たら、1人は胸骨圧迫、もう1人は人工呼吸を行います。さらに救急カートにある蘇生板を、協力して患者さんの背中に入れます。もし、エアマットを使用していたら空気を抜いて胸骨圧迫が患者さんに伝わるようにします。

【関連記事】
気道確保|エアウェイの挿入手順と頭部後屈顎先挙上法

ステップ5 AEDを装着し作動する

 AEDが到着したら、すぐに開けて電源を入れます。開けると自動的に電源が入るAEDもあります。そのあとはAEDから流れるアナウンスに従います。

【関連記事】
【写真で解説】AEDの手順を知っておこう!

1 パッドの準備

 まず、パッドを患者さんの右胸鎖骨下と左側胸部に貼り、ケーブルをAED本体に差し込みます。パッドの位置にある湿布や貼付薬は剥がし、心臓ペースメーカーの真上にはパッドを貼らないようにします。その間、胸骨圧迫や人工呼吸は続けます。

 もし患者さんの胸が濡れていたら、タオルなどで拭き取り、体毛の多い患者さんには、一度パッドを貼って思いっきりそのパッドを剥がして体毛を除去してから、新しいパッドを貼ります。(AEDには必ず2セットのパッドが入っています。)

2 解析に従って電気ショック

 AEDから波形を解析するアナウンスが流れたら、CPRを一旦止めます。解析中に患者さんの体に触れると、AEDが波形を読み取ってしまい正しい解析ができなくなるためです。

 解析により徐細動が不要な場合、すぐに、「胸骨圧迫30回+人工呼吸2回」のCRPを再開します。2分間経つと再びAEDから解析のアナウンスが流れます。

 電気ショックが必要な場合、患者さんから離れるようにアナウンスされます。CPRをしている応援者、また、周りの人に、患者さんから離れてもらうことを大きな声で知らせ、AEDの充電を待って電気ショックボタンを押します。

 電気ショックが終了したら、再びCPRを2分間継続し、意思や急変対応システムが到着するのを待ちます。ここまでがBLSです。

ステップ6 ALSを実施する

無脈性VTとVfのアルゴリズム
[表] 無脈性VTとVfのアルゴリズム

 医師や急変対応システムが到着したら、ALSを開始します。ALSとは、CPRや除細動を続けながら、薬剤の投与や気管挿管を行う高度なCPRの手技です。CPRを続けながら、まずは状況を医師に伝えます。気管挿管の準備と静脈路の確保をし、医師の指示に備えます。

 無脈性VT/Vfの場合には、除細動と抗不整脈薬を使用します。頚動脈の拍動が確認できず、モニターで無脈性VT/Vfを確認したら、まずは除細動(二相性:120~200J)を行い、直ちにCPRを再開します。
 
 CPRを2分間実施したら頚動脈の拍動と心電図モニターを確認します。頚動脈の拍動が確認できず、無脈性VT/Vfが持続していれば、再度除細動を行い、CPRを再開します。

 CPR実施中にアドレナリン1mgの投与と、抗不整脈薬(アミオダロン、ニフェカラント、リドカイン)の投与を行います。また、心電図で、トルサド・ド・ポアンツを認めた場合には、硫酸マグネシウムを投与します。

 無脈性VT/Vfアルゴリズムを施行中に、心静止、PEAに変化し除細動の適応がないと判断された場合は、心静止、PEAのアルゴリズムに移行します。これらの動作を自己心拍が再開されるまで繰り返し行っていきます。同時に原因検索のために血液検査が実施されるので、採血の準備を整えておきます。

トルサド・ド・ポアンツの波形の例
[図2―2-3] トルサド・ド・ポアンツの波形の例

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<読み方・対応編⑧> トルサード・ド・ポアンツ(TdP)
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