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下痢の看護|種類・観察項目・看護計画など

  • 公開日: 2021/1/1

下痢とは

 下痢とは、何らかの原因で便の水分量が多くなり、液状に近い便を排出する状態をいいます。一般的に、普通便の水分量は70~80%ですが、80~90%で泥状便、90%以上になると水様便となります。

下痢の種類

 下痢の主な種類と原因は次のとおりです。

浸透圧性下痢

 腸管内に高浸透圧性物質が過剰に存在することで、腸管内の浸透圧が高まり、多量の水分が腸管内に移行することで起こります。


 牛乳や乳製品の摂取で下痢を生じる乳糖不耐症がありますが、これも浸透圧性下痢に該当します。乳糖分解酵素であるラクターゼが欠乏あるいは活性が低下することで乳糖が分解されず、腸管内の浸透圧が上昇し下痢を生じます。

滲出性下痢

 腸管粘膜に炎症や潰瘍が起こることで腸管壁の透過性が亢進し、腸管内に多量の滲出液が排出されるために起こります。滲出性下痢の要因として、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)、腸結核、虚血性腸炎、細菌性腸炎(サルモネラ菌、ブドウ球菌、赤痢菌)などが挙げられます。

分泌性下痢

 細菌・ウイルス感染、ホルモンの過剰産生や化学物質の影響などにより、水分や消化液の分泌が異常に亢進することで起こります。

蠕動運動性下痢

 蠕動運動の亢進により食物が短時間で腸管を通過し、水分の吸収が十分行われずに下痢を生じます。過敏性腸症候群やバセドウ病などはこれに該当します。

薬剤性の下痢

 薬剤の影響で腸管の蠕動運動が亢進したり、腸管粘膜が障害されることで下痢を生じます。下痢を起こしやすい主な薬剤として、抗がん剤、抗菌薬、免疫抑制薬、経口避妊薬などが挙げられます。腎機能や肝機能の低下がみられる患者さん、高齢者では特に注意が必要です。


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高齢者の下痢

 高齢者は、加齢に伴う食事摂取量や運動量の低下、筋力の低下などにより便秘になりやすく、下剤を用いて排便をコントロールする場合があります。この下剤の影響で、下痢を生じていることが指摘されています1)


 また、高齢者は多剤併用の割合が大きいうえに、腎機能や肝機能が低下しているため、薬剤による副作用が発生しやすい状態であることも原因の一つと考えられます。

下痢の観察項目・アセスメント

 一時的な下痢であれば問題ないケースがほとんどですが、長期間続いていたり、繰り返す場合は、重篤な疾患が隠れている可能性や、早期の治療・入院が必要になることもあります。


 原因により治療や対処の仕方が異なるため、既往歴や内服歴、排便状況などについて確認・理解したうえで、身体所見や検査データを組み合わせてアセスメントを進めていきます。


 便の性状については、ブリストル便性スケールで確認するとよいでしょう。6または7に該当すれば、下痢と考えられます。


便性スケール

【主なアセスメント項目】

・既往歴

・内服歴(下剤、抗菌薬、鎮静薬など)

・生活歴(海外渡航歴、喫煙歴、飲酒歴)

・便の性状(硬さ、色、形状、量)

・排便回数

・下痢が続いている期間

・腹部状態(腹部の柔らかさ、腹部膨満感、腸蠕動音など)

・脱水の徴候(口渇感、口腔乾燥、尿量減少)

・随伴症状(嘔気・嘔吐、腹痛、発熱、倦怠感、血便など)

・体重減少

・便意を感じやすい状況や時間帯

・食事内容

・水分摂取量

・一日の活動量

・下痢への理解度

下痢のケア

止痢薬・整腸薬の使用

 下痢の多くは数日で自然に治癒しますが、症状が強く、体力の消耗や脱水を起こすおそれがある場合は、止痢薬が用いられることがあります。止痢薬にはさまざまな種類があり、原因により使い分けられます。


種類特徴
抗コリン薬
消化管運動を亢進させるアセチルコリンの作用を抑制することで、止瀉効果をあらわす
蠕動運動抑制薬
腸管の蠕動運動や水分分泌を抑制することで、止瀉効果をあらわす
収斂薬
腸粘膜の保護、抗炎症作用などにより、止瀉効果をあらわす
吸着薬腸内の過剰な水分や粘液、細菌性毒素などを吸着することで、止瀉効果をあらわす

 乳酸菌や納豆菌を補充し、腸内細菌叢(腸内フローラ)のバランスを整える整腸薬が使用されることもあります。

スキンケア

 下痢による皮膚トラブルの要因として、頻回な清拭・洗浄、おむつ内の高温多湿環境、アルカリ性の便が長時間付着することの3つが挙げられます。これらを意識してケアを実施しましょう。皮膚トラブルを起こすリスクが高い患者さんに対しては、予防的スキンケアの基本である「清潔の保持」「保温」「保護」を行うことが大切です。

保温

 腹巻やカイロで腹部を温めることで筋の緊張が緩和され、腹痛の改善効果が期待できます。

食事指導

 下痢の症状が落ち着くまで、一時的に食事を控えます。症状が改善し食事を開始する際は、おかゆやうどん、味噌汁、すりおろしたリンゴといった、消化のよいものから摂取します。


 下痢が続くと水・電解質が失われ、脱水症状を起こす可能性があることから、こまめな水分補給が重要です。ただし、冷水、牛乳、紅茶、コーヒー、アルコールは腸管を刺激するため、避けるよう伝えます。

その他の注意点

 重いものを持ったり、ベルトをきつく締めるなど、腹圧がかかる動作や服装をしないことが大切です。腹部をマッサージしたり、排便時に無理にいきむことも避けましょう。


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看護計画

 「抗がん剤の副作用により下痢を生じている患者さん」を例に、看護計画を紹介します。


看護問題

#1 抗がん剤による下痢に伴う安楽障害


看護目標

・下痢による苦痛を軽減し、治療を受けることができる


OP(観察計画)

・バイタルサイン

・腹部状態(腹部の柔らかさ、腸蠕動音など)

・便の性状、回数、色など

・排泄に対する訴え、思い

・腹部症状の有無

・体重の推移

・不整脈の有無

・水分摂取量

・睡眠状況、食事状況

・検査データ(採血、動脈血ガス、心機能検査)

・画像データ(XP、CTなど)


TP(ケア計画・援助計画)

・医師の指示に基づく薬剤の使用

・必要に応じて清潔ケアの介入を行う

・排泄環境を整える

・スタンダードプリコーションを徹底する


EP(教育計画)

・化学療法の副作用で下痢が生じることを説明する

・排便、排尿回数の管理が必要なことを説明する

・食事や水分摂取の必要性を説明する


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引用・参考文献

1)陶山啓子,他:介護施設で生活する高齢者の排便障害の実態とその要因.日本老年看護学会誌 2006;10 (2):34−40.

●川村三代:便秘や下痢のアセスメントとケア.消化器看護 2019;24(3):47-52.

●厚生労働省:重篤副作用疾患別対応マニュアル 重度の下痢 平成22年3月(2020年12月18日閲覧)https://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/02/dl/s0225-5f.pdf

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