1. トップ
  2. 看護記事
  3. 診療科から探す
  4. リハビリテーション科
  5. リハビリテーション
  6. 機能的自立度評価法(functional independence measure:FIM)

【連載】スケール・評価基準を使いこなそう!

機能的自立度評価法(functional independence measure:FIM)

  • 公開日: 2022/2/13

FIMは何を判断するもの?

 機能的自立度評価法(functional independence measure:FIM)とは、1983年に提唱されたADL(身の回りの必要最低限な活動)の評価方法の一つです。主に介助の必要度合いに着目した評価を簡便に行うことができ、介護負担度の判断が可能な点が特徴とされています。また、現在できる動作や認知機能の評価のみで判定するため、医学的な知識がなくても容易に評価できるところも特徴といえます。

 FIMTMは、最も信頼度が高いADL評価法の一つですが、できる動作などの評価の段階付けが詳細であるため、より正確にADLの状態を判定できると考えられています。また、繰り返し評価を行うとわずかな改善点が評価に反映されていくことから、リハビリテーションなどの効果について正確な判定が可能となり、治療や管理の方針を決める上でも役立つとされています。

FIMはこう使う!

 FIMTMでは、実際に行っている動作(運動項目)を13項目、認知機能(認知項目)を5項目の合計18項目に対して、7~1の段階に評価して全体の合計点からADLの状態を判定します(表)。18項目それぞれについて7段階で採点するため、18~126点と幅広い評価を行うことが可能です。

表 FIMTM
運動項目セルフケア食事
整容
清拭
更衣上半身
更衣下半身
トイレ動作
排泄コントロール排尿管理
排便管理
移乗ベッド、椅子、車椅子
トイレ
浴槽・シャワー
移動歩行・車椅子
階段
認知項目コミュニケーション能力理解
表出
社会的認知社会的交流
問題解決
記憶

運動項目の採点基準
点数介助者手助け手助けの程度
7不要不要自立
6不要不要時間がかかる、補助具が必要、安全性の配慮
5必要不要監視、指示、促し
4必要不要75%以上、90%以下自分で行う
3必要必要50%以上、75%未満自分で行う
2必要必要25%以上、50%未満自分で行う
1必要必要25%未満しか自分で行わない

認知項目の採点基準
点数介助者手助け手助けの程度
7不要不要自立
6不要不要時間がかかる、補助具が必要、安全性の配慮
5必要不要監視、指示、促し
5必要必要90%より多く自分で行う(介助は10%未満)
4必要不要75%以上、90%以下自分で行う
3必要必要50%以上、75%未満自分で行う
2必要必要25%以上、50%未満自分で行う
1必要必要25%未満しか自分で行わない
We used the Japanese version of FIM(TM) version 3.0 (文献1、2) that has culturally relevant modifications for some of the items (文献3、4).

FIMを看護に活かす!

 FIMTMは詳細なADLの評価を行うことができるスケールです。そのため、患者さんの現状を把握するだけではなく、リハビリテーションの成果を評価する際にも適しています。

 ADLが低下していると考えられる患者さんの対応に当たったときは、FIMTMを用いて現状の評価を行い、見守りの程度や頻度、介助の必要性を判断して看護計画を立てるようにしましょう。

 リハビリテーションを継続している患者さんには、経時的にこのスケールを用いてADLの評価を行い、成果を判断しながら看護計画を変えていく必要があります。さらに、いずれかの項目の評価が低下している場合は、ADL低下を引き起こす新たな疾患や外傷を生じている可能性があります。変化があったときは速やかに医師や理学療法士などに報告しましょう。

文献

1)Data management service of the Uniform Data System for Medical Rehabilitation and the Center for Functional Assessment Research; Guide for use of the uniform data set for medical rehabilitation,State University of New York at Buffalo, version 3.0, March 1990
2)Liu M, Sonoda S, Domen K. Stroke Impairment Assessment Set(SIAS)and Functional Independence Measure(FIM)and their practical use. In:Chino N, ed. Functional Assessment of Stroke Patients: Practical Aspects of SIAS and FIM. Tokyo:SplingerVerlag;1997. p.17–139. (in Japanese)
3)Tsuji T, Sonoda S, Domen K, Saitoh E, Liu M, Chino N. ADL structure for stroke patients in Japan based on the functional independence measure. Am J Phys Med Rehabil 1995;74:432/438.
4)Yamada S, Liu M, Hase K, Tanaka N, Fujiwara T, Tsuji T, Ushiba J. Development of a short version of the motor FIM for use in long-term care settings. J Rehabil Med. 2006 Jan;38(1):50-6. doi:10.1080/16501970510044034.

この記事を読んでいる人におすすめ

カテゴリの新着記事

CAGE(アルコール依存症スクリーニングテスト)

CAGEは何を判断するもの?  CAGE(アルコール依存症スクリーニングテスト)とは、アルコール依存症のスクリーニングを行う指標の一つです。名称は質問項目(cut down、annoy、guilty、eye opener)の頭文字をとったもので、欧米を中心に広く使用されており、

2023/3/3

アクセスランキング

1位

サチュレーション(SpO2)とは? 基準値・意味は?低下

*2019年3月11日改訂 *2017年7月18日改訂 *2021年8月9日改訂 発熱、喘息、肺炎……etc.多くの患者さんが装着しているパルスオキシメータ。 その測定値である...

249818
2位

心電図でみる心室期外収縮(PVC・VPC)の波形・特徴と

心室期外収縮(PVC・VPC)の心電図の特徴と主な症状・治療などについて解説します。 この記事では、解説の際PVCで統一いたします。 【関連記事】 * 心電図で使う略語・...

250751
3位

【血液ガス】血液ガス分析とは?基準値や読み方について

血液ガス分析とは?血液ガスの主な基準値 血液ガス分析とは、血中に溶けている気体(酸素や二酸化炭素など)の量を調べる検査です。主に、PaO2、SaO2、PaCO2、HCO3-、pH, ...

249974
4位

人工呼吸器の看護|設定・モード・アラーム対応まとめ

みんなが苦手な人工呼吸器 多くの人が苦手という人工呼吸器。苦手といっても、仕組みがよくわからない人もいれば、換気モードがわからないという人などさまざまではないでしょうか。ここでは、人工呼...

250017
5位

意識レベルの評価法、JCSとGCSの特徴とは?

2019年2月13日改訂 意識障害と意識レベルを評価するJCS(ジャパン・コーマ・スケール)とGCS(グラスゴー・コーマ・スケール)について解説していきます。 厚生労働省が2004年に...

250854
6位

簡単! 楽ちん! 点滴の滴下数計算 2つの方法

皆さんご存知の通り、点滴指示書には様々な書き方があります。 よくあるパターン ●流速が書かれている (例)「○○輸液500ml 60ml/h」 ●1日の総量が書かれている (例)...

251296
7位

吸引(口腔・鼻腔)の看護|気管吸引の目的、手順・方法、コ

*2022年12月8日改訂 *2022年6月7日改訂 *2020年3月23日改訂 *2017年8月15日改訂 *2016年11月18日改訂 ▼関連記事 気管切開とは? 気管切開...

250001
8位

採血スピッツ(採血管)の種類・順番・量~血液が足りなくな

多くの看護師が苦手な「針モノ」の手技。今回は主なスピッツの内容と必要量を紹介します。 【関連記事】 * 点滴と同じ腕(末梢から)の採血はOK? NG? * 血管が見えない患者...

250750
9位

看護問題リスト・看護計画の書き方|看護記録書き方のポイン

ここでは一般的な看護記録を解説しています。また、看護診断名にNANDA-I看護診断を使用しています。実際の記録は院内の記録規定に従いましょう。 【関連記事】 *看護計画の「観察項目...

249544
10位

心エコー検査の看護|目的、種類、検査結果の見方など

【関連記事】 ● 「心不全」への輸液療法|インアウトバランスから見る! ● 心不全による消化器症状(嘔吐、便秘など)とは? 心臓超音波検査(心エコー検査)とは  心臓超音波検査(以...

289420