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【連載】スケール・評価基準を使いこなそう!

Keith-Wagener(KW)分類/キースワグナー分類(慶大変法)

  • 公開日: 2023/2/10

KW分類は何を判断するもの?

 Keith-Wagener(KW)分類とは、高血圧性眼底所見を判定するためのスケールです。

 高血圧は動脈硬化の大きなリスク因子の一つであり、網膜の細動脈にも動脈硬化を引き起こします。重症化すると視力や視野の障害を引き起こすため、早期段階から適切な血圧管理を行っていく必要があります。近年では、高血圧の管理が進歩したことに伴い、重度な高血圧性眼底所見を指摘される患者さんは少なくなっていますが、KW分類において軽度と評価されても、心血管疾患や脳卒中の発症リスクが高くなることも報告されています1)

 このように、KW分類は単に高血圧性網膜症のリスクや重症度を評価するために用いられるだけではなく、高血圧が及ぼす全身への影響も予測できるため、血圧管理計画を立てるうえでも大切な指標といえます。

KW分類はこう使う!

 KW分類では、高血圧による眼底所見を所見なし~Ⅳ群に分類していますが、Ⅱ群をさらに2つに分けたKW分類(慶大変法)が一般的に用いられています(表)。

 所見を認めない場合は異常なし、Ⅰ群は軽度な異常があるものの問題なしとされますが、Ⅱa群は要経過観察、Ⅱb~Ⅳ群は要精密検査となり2)、医療の介入が必要と考えられます。

 また前述したように、軽度であっても、正常な場合と比べて心血管疾患や脳卒中の発症リスクは高くなる1)ほか、Ⅲ群以上で高血圧性網膜症を認める場合は高血圧による臓器障害が生じていることを意味する3)ため、重症度にかかわらず、何らかの異常を指摘された場合は、適切な治療や生活指導を受ける契機にもなります。

表 Keith-Wagener分類

眼底病名分類眼底所見判定*
眼底正常S0H0 所見なしA
Ⅰ群細動脈の軽度の狭細および、硬化(Scheie変法Ⅰ)B
高血圧性眼底Ⅱ群a動脈硬化明らかとなり(Scheie変法Ⅱ以上)狭細もⅠ群に比し高度となる。BまたはC
b上記に加えて、動脈硬化性網膜症または網膜静脈閉塞がみられる。D2
Ⅲ群著明な硬化性変化に加えて、血管攣縮性網膜症がある。 網膜浮腫、綿花状白斑、出血が認められ、動脈狭細化が著しい。D2
Ⅳ群上記Ⅲ群の所見に加えて、測定可能の程度以上の乳頭浮腫がある。D2

*年齢、動脈硬化リスクファクターを考慮して選定してください。
判定区分 A:異常なし B:軽度異常問題なし C:要経過観察 D:要医療(D1:要治療、D2:要精査) E:治療中

日本人間ドック学会 人間ドック画像検査判定マニュアル作成委員会 眼底部門:眼底健診判定マニュアル.p.9.(2022年1月31日閲覧) https://www.ningen-dock.jp/wp/wp-content/uploads/2013/09/9a0e9dd5b5a9c4b9f151c5b3ad9855c82.pdfより引用

KW分類の結果を看護にこう活かす!

 KW分類によるスケーリングは医師によって行われますが、Ⅲ群以上で重症度の高い患者さんはもちろん、比較的軽度の患者さんであっても、適切な血圧管理を行っていく必要があります。異常所見を指摘された患者さんに対しては、毎日血圧を測定して自身の血圧を把握してもらうのと同時に、降圧薬などを処方されている場合は継続的に服用するよう指導します。

 ほかに、塩分の摂り過ぎに注意したり、定期的な受診を促したりすることも大切です。特に重症な患者さんでは目の見え方に注意し、視力や視野の異常が進行していると考えられるときは、速やかに医師に報告しましょう。

引用・参考文献

1)Jiaqi Li,et al:Mild Hypertensive Retinopathy and Risk of Cardiovascular Disease: The Suita Study.J Atheroscler Thromb 2022;29(11):1663-71.
2)日本人間ドック学会人間ドック画像検査判定マニュアル作成委員会 眼底部門:眼底健診判定マニュアル.p.9.(2023年1月31日閲覧) https://www.ningen-dock.jp/wp/wp-content/uploads/2013/09/9a0e9dd5b5a9c4b9f151c5b3ad9855c82.pdf
3)川崎良:眼底検査の方法 高血圧症に伴う眼底変化・糖尿病による眼底変化.日本循環器病予防学会誌 2021;56(3):226-32.
●妹尾正:人間ドックにおける眼科的所見.人間ドック 2021;36(3):367-84.
●張野正誉:高血圧網膜症と血管攣縮性網膜症,眼底所見とその意義.日本の眼科 2013;84(4):430-4.

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