Miller&Jones分類(ミラージョーンズ分類)
- 公開日: 2023/11/3
Miller&Jones分類は何を判断するもの?
Miller&Jones分類とは、膿性痰と唾液混入の度合いを肉眼的に観察し、患者さんから採取した喀痰が検査に適しているか評価するためのスケールです。
喀痰検査には、細菌検査と細胞診検査の2つの種類があり、細菌検査は喀痰内の細菌や真菌などを検出して肺炎など感染症の診断をしたり、検出された原因菌に対して有効な抗菌薬を調べたりする(薬剤感受性検査)際に行われます。一方、細胞診検査は、喀痰内の細胞を調べることで肺がんなどの診断を行う検査で、感染症の確定診断でも用いられます。
喀痰は口腔内の常在菌に汚染されやすいため、正確な検査ができないケースも少なくありません。精度の高い検査を行うには、できるだけ唾液が含まれておらず、膿性部分が大きい喀痰を採取するのとあわせて、Miller&Jones分類を用いて事前に喀痰の品質を評価することが大切です。
Miller&Jones分類はこう使う!
Miller&Jones分類では、患者さんから採取した喀痰について、膿性部分の割合や唾液混入の度合いを5つの段階にスケーリングします(表)。
一般的に、M1とM2は唾液成分が主体で喀痰検査に適さず、正しい検査結果が得られない可能性が高く、P1、P2、P3は喀痰検査に適した検体であるとされています。ただし、Miller&Jones分類による喀痰の品質評価は、必ずしもすべての原因菌に当てはまるわけではありません。レジオネラ肺炎などの重症肺炎や院内肺炎は膿性痰が生じないケースも多く、M1やM2から結核菌が検出されることもあります。
表 Miller&Jones分類
M1 | 唾液、完全な粘性痰 |
---|---|
M2 | 粘性痰のなかに膿性痰が少量含まれる |
P1 | 膿性痰で膿性部分が1/3以下 |
P2 | 膿性痰で膿性部分が1/3~2/3 |
P3 | 膿性痰で膿性部分が2/3以上 |
Miller&Jones分類の結果を看護に活かす!
患者さんから採取した喀痰が検査に適した品質でない場合、正確な結果を得られない可能性が高くなり、診断や治療の遅れにつながるおそれがあります。喀痰採取の補助をする際には、Miller&Jones分類をもとに、採取した喀痰の性状をチェックしてみるとよいでしょう。膿性部分がほとんどなく、唾液成分が多くを占める場合は、再度採取を試みる必要があります。一方で、前述したように、重症肺炎や院内肺炎、結核では膿性痰が出ないことも多いため、患者さんの訴えや症状などを正しく把握して、どのような疾患の可能性があるのか推測することも大切です。
また、検査で細菌が検出されなくても、Miller&Jones分類によるスケーリングがM1やM2の場合は、正確な結果を得られていないことも考えられます。医師の指示に従って検査をやり直すのが一般的ですが、肺炎など重症な感染症を起こしている可能性が否定できないため、再度結果が出るまでは注意深い状態観察が必要です。
引用・参考文献
●原悠,他:咳嗽・喀痰の診かたと薬物療法.日本内科学会雑誌2021;110(6):1063-70.
●日本呼吸器学会 咳嗽・喀痰の診療ガイドライン 2019作成委員会編:咳嗽・喀痰の診療ガイドライン2019.メディカルレビュー社,2019.
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