【連載】こんなときどうする? 採血・注射・輸液の困難ケース攻略法
採血スピッツ(採血管)の種類・順番・量―血液が足りなくなりそう! どうする?
- 公開日: 2015/2/23
- 更新日: 2025/8/5
攻略法1:必要な検査の血液量を把握する
あまり血液量が採れなかった場合、複数本のスピッツに分けて入れる最中に血液量が不足しないようにするには、事前に検査項目と各スピッツの必要量を把握するとともに、患者さんにとって必要な検査の優先順位を理解しておくことが必要です。
また、抗凝固剤入りスピッツは血液と抗凝固剤との比率が決まっています。スピッツに必要量のラインがある場合は、必ずラインまで血液を満たすなど、適量を厳守します。必要量の決まっているスピッツを後回しにすると不足してしまうこともあるため、順番は大切です。主なスピッツの内容と必要量は表1の通りです。
表1 主な採血管と検査内容
採血管種類 | 採血量 | 検査内容 |
血清分離用採血管 (生化学) |
3〜5mL | 酵素検査・電解質検査・脂質検査などで使用し、すべての診断の判断基準になるの で、どのような場合でも採血します。入院時の必須検査である感染症もここから調べます。 |
抗凝固剤(クエン酸Na)入り 採血管(凝固) |
1.8mL | 凝固検査は、血を固める働きの低下が疑われる、抗凝固剤の内服、手術が想定される、DIC(播種性血管内凝固症候群)のリスクが高い重症の場合などで調べます。 |
抗凝固剤(EDTA)入り 採血管(血算) |
2mL | 血液一般検査や血球数算定検査に使われます。だいたいどんなときでも採血します。 |
抗凝固剤(フッ化Na)入り 採血管(血糖) |
2mL | 意識障害ではまず低血糖発作の除外が必要であるため、血糖値を調べます。 |
※採血量は施設によって異なることがあります。
採血に用いる真空採血管は、一定の量に達すると血液が流れ込むのが止まります。翼状針を使用して採血を行うと、最初の1本目はルート内にある空気も真空採血管に入ってしまい、真空採血管内の血液が少ない状態で血液の流入が止まってしまいます。抗凝固剤入りの真空採血管のように血液の絶対量が決まっているものは、翼状針から真空採血管までのルートに血液が満たされている状態で、採血する必要があります(図1)。そのため、翼状針を使用して採血をする場合は、絶対量が決まっているものは、順番を2番目以降にします。
図1 ルートが血液で満たされている状態
攻略法2:スピッツに入れる順番を覚えておく
針を刺入した直後の血液には微量の組織液が含まれており、組織液が混入すると凝固の原因になるため、真空管採血のときは最初に、凝固しても影響の少ない生化学(血清)を採血します。シリンジを使って分注する際は、凝固する前にすばやく抗凝固剤と混和する必要があるため、抗凝固剤入りスピッツから先に分けて入れるようにします(図2)。
図2 採血管の一般的な順番
真空管採血の場合
※翼状針を使用して採血を行う場合は、血液の絶対量が決まっている凝固剤入り採血管が2番目以降になるように順番を考慮する。
または
シリンジ採血の場合
【関連記事】
* 点滴と同じ腕(末梢から)の採血はOK? NG?
* 血管が見えない患者さんと硬い患者さんの穿刺のコツ
* 【採血】内出血した患者さんに言ってはいけないNGワード
この記事を読んでいる人におすすめ

採血|コツ、手順・方法、採血後の注意点(内出血、しびれ等)
採血とは 採血には、シリンジで血液を採取した後に分注する方法と、針を刺した状態で真空採血管を使用する方法の2種類があります。 採血の準備と手順(シリンジ・真空採血管) 採血時に準備する物品 基本的な物品 指示箋 アルコール綿 携帯用針捨て容器 駆血帯

点滴と同じ腕(末梢から)の採血はOK? NG?
Q.点滴より末梢側で採血をすれば、検査数値に問題はないと思うのですが実際はどうなのでしょうか。 A.適切な位置で駆血し、点滴の刺入部から15cm離れた末梢側からの採血による血液データは、点滴の影響を受けない 点滴をしていない側の上肢から採血できないケースもある

【採血はどこから?】右はギブス固定中、左は点滴中の患者さん
元看護師のメディカルライターが、看護の素朴なギモンに答えます。 今回の素朴なギモンは、「右上肢はギブス固定中、左上肢は点滴中の患者さんの場合、どこから採血をすべきでしょうか?」です。 今回の素朴なギモン 右上肢はギブス固定中、左上肢は点滴中の患者

【採血・注射】血管が見えない! そんなときに使える2つのテクニック
攻略法1:解剖生理を理解し、触って探る このようなケースに対応するには、基本となるのが解剖生理学をしっかりと理解しておくことです。 まずは、血管が太くて安定した血量のある「橈側皮静脈」「尺側皮静脈」「肘正中皮静脈」を狙うのがよいですが、注射部位周辺の皮膚の下の血管や神経の

覚えた? 急変時の採血スピッツ5種類(血算・生化学・凝固・血液型・血糖)
急変時に、医師から「採血して!」と一言で指示を受けた場合。 「どのスピッツを準備すればよいのか」「医師は一体何を調べたいのか」と迷ってしまうことがあります。医師はどんな基準で考え、指示を出しているのかを解説します。 【関連記事】 ● 【採血・注射】血管が逃げる・動