採血|コツ、手順・方法、採血後の注意点(内出血、しびれ等)
- 公開日: 2014/12/17
採血とは
採血には、シリンジで血液を採取した後に分注する方法と、針を刺した状態で真空採血管を使用する方法の2種類があります。
採血の準備と手順(シリンジ・真空採血管)
採血時に準備する物品
基本的な物品
シリンジの場合
真空管採血の場合
採血の手順
大まかな手順は同じですが、それぞれの手順に異なる点や注意点があります。
1.確認
採血の指示書を確認します。
2.手洗い
手洗いを行い患者さんのもとに向かいます。
3.本人確認
患者さんに採血の目的と採血量を説明し、採血管に貼ったラベルを一緒に見ながら、氏名、ID番号、採血量を確認します。意識のある患者さんは、本人に名乗ってもらって氏名を確認します。
4.準備
準備穿刺の準備と物品をセッティングします。スムーズに実施するために、あらかじめ使用物品はすぐに使える状態にしておきます。
5.血管選択
血管を選択します。血管の性状や走行は人それぞれです。できるだけまっすぐに走行する血管を選択し、自信がなければ手袋装着前に、駆血帯を巻き、直接血管に触れて走行・怒脹の具合を確認し、穿刺部を特定します。
6.消毒
穿刺部位を消毒します。アルコールによるアレルギーの有無を確認してから、穿刺部位を中心から外側に向かい、広めに円を描くように消毒します。アルコール過敏症の場合は、クロルヘキシジン等アルコールが含まれてないものを使用します。
7.挿入
消毒が乾いたことを確認してから、針先の刃面を上に向け、皮膚に対して15°程度の角度で刺入します。このとき患者さんに手のしびれや強い痛みがないか必ず確認しましょう。針先が血管腔に入ったことを確認したら、血管腔内を進ませる感覚で奥に刺入していきますが、血管を突き抜けてしまう恐れがあるので、針を奥に進ませるのは5mm程度です。
8.採血
穿刺部がずれないようにしっかりと固定し、真空採血管の場合はしっかりとホルダーに差し込みます。採血本数が多く手技に慣れていない場合は、テープで翼状部分を固定します。シリンジの場合も同様に、穿刺部がずれないように注意しながらゆっくりと血液を引いていきます。注射器内筒を強く引いてしまうと、針先に血管が吸い付いて乱流が生じ、血液の溶血が起こる可能性があるためです。
真空採血管、シリンジともに必要量を採取した後は、採血管内の抗凝固剤など薬剤の影響があるため必ずゆっくりと混和してください。
9.抜去
必要本数を採り終えたら、ホルダーから採血管を抜き、その後駆血帯を外します。採血管内で薬剤に触れた血液が、血管内に引き込まれる危険があるため、順番を間違えないように注意します。シリンジの場合は、十分な血液量に達したことを確認してから駆血帯を外します。
10.抜針
消毒綿で刺入部を押さえながら針を抜き、廃棄容器に直接捨てます。その後、患者さんに説明し、真上から3~5分程度圧迫止血してもらいます。抗凝固薬を服用している患者さんには、圧迫時間を長めに伝えます。
11.観察
圧迫止血後に完全に止血されているか、皮下出血の有無、神経症状の有無などを確認します。
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採血の手順(翼状針の場合)
直針使用時と大まかな手順は変わりませんが、針を挿入した後にテープなどで、針が動かないように固定します。
その後、真空採血管の場合はしっかりとホルダーに差し込み採血を行います。
採血の注意点
内出血(皮下出血)
確実に止血ができていない場合、皮下出血を起こすことがありますが、患者さんには「2、3日で吸収されること」などを説明します。その後は引き続き経過を観察します。
ワーファリンなど抗凝固薬を服用している患者さんの場合は、皮下出血斑部位をマーキングしておき、経過観察に努めます。
しびれ(神経損傷)
もし、採血の手技によりしびれが出現した場合、しびれが神経損傷に由来するものであれば、看護師に処置できることはありません。状況を把握した上で、自己判断はせず医師に報告して診察してもらうことがベストな対応です。
一番有名な正中神経損傷では、「猿手」と言って親指と他の指の対面運動(指でOKのポーズをするような動き)ができない状態になります。
迷走神経反射
過度の緊張状態によって引き起こされることが多いので、事前に表情や呼吸状態から緊張の程度を把握し、必要に応じて声かけ、体位調整を行います。
迷走神経反射が出現したら、転倒・転落する危険性があるため横になってもらい、頭を低くして下肢を挙上するか、患者さんの楽な姿勢をとってもらいます。
患者さんのそばから離れず、迷走神経反射以外の原因が考えられる場合には、緊急コールで対応します。
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採血スピッツの種類
採血スピッツにはさまざまな種類がありますが、病棟で主に使用するものは生化学、凝固、血算、血糖の4種類です。針を刺入した直後の血液には、凝固の原因となる微量の組織液が含まれているので、真空管採血のときは影響の少ない生化学(血清)を最初に採血します。その後は、凝固、血算、血糖の順となります。シリンジを使って分注する際は、凝固する前にすばやく抗凝固剤と混和させる必要があるため、抗凝固剤入りスピッツから先に入れるようにします。翼状針を用いた場合、ルート内部の空気が採血管に入るので、その分血液が不足してしまいます。凝固検査などのように正確な採血量が必要な時は、2本目以降に採血しましょう。
また、キャップの色や順番は施設によって異なる場合があるので注意します。
採血管の種類によっては、冷所保存や遮光など取り扱いに注意が必要なものもあるので、取り扱い方法を把握しておくことも大切です。
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採血の穿刺部位と選択
採血には、手背静脈、橈側皮静脈、尺側皮静脈、肘正中皮静脈などの静脈が用いられますが、神経の走行に注意し選択することが大切です。血管の選択は、できるだけ太くて柔らかな弾力性のある血管を選ぶのが一般的です。肘窩部の採血では、橈側皮静脈(肘窩部の親指側)が最も安全といわれており、肘窩部で採血できない場合は、前腕または手背の静脈を穿刺しましょう。上肢が困難な場合は、足背静脈、小伏在静脈を選択します。一般的に、末端にいくほど神経が多くなり、痛みが生じやすいといわれています。
採血を避ける部位
肘窩部内側の尺側皮静脈は、付近を比較的太い神経が走行しているため穿刺を避けます。手関節部の橈骨皮静脈も、橈骨神経浅枝が近く、正しく穿刺しても神経損傷を来す可能性があるため、穿刺を避けます。肘正中静脈や尺側皮静脈を選択したときも、上腕動脈や正中神経などは皮下の浅いところを走行している可能性があるので、それらを損傷するリスクがあることを忘れないようにします。血管や神経の走行は十分に把握しておきましょう。
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採血のコツ・豆知識
●血管が見つけにくいとき、患者さんに手を開いたり握ったりを繰り返す動作をしてもらうことをクレンチングといいます。しかし、これによって筋肉の収縮が起こり、カリウムが細胞から血中に流出してしまうことがあり、正確な検査データが得られなくなる可能性があるので、採血前にクレンチングを行うことは、避けるようにします。
●血管を見つけにくい場合は、手関節から肘に向けて前腕を軽くマッサージしたり、40℃程度に温めたタオルなどで腕を温めると血管が拡張し、確認しやすくなります
●血管が怒張しているように見えたとしても、必ず指で触って、太さや弾力性を確かめることが必要です。また、高齢者の場合は、血管が脆弱で硬くなっていることもあるので、その状態を触れて確認します。
●駆血帯を締める場合の圧は、通常40mmHg程度とされています。強く締め過ぎると静脈が圧迫されてしまい、皮下出血などを生じることがあります。
●血液の採取時間が長くなると、血液凝固が起こり、血清クロール値(Cl)が低下する、血液比重が増加する、など血液の性状が変化してしまいます。このような変化が起こらない時間の目安が2分間といわれています。
●溶血とは、血液中の赤血球が壊れ、赤血球中に含まれるヘモグロビンが血清・血漿中に出てきてしまう状態のことで、これにより正しく得られない項目が出てきます。カリウムや鉄、インスリンなどがよく知られています。
●基本的に採血管は滅菌されていますが完全滅菌ではないので、真空採血管で採血を行う場合は、逆流しないようにすることが大切です。
座位の場合:患者さんに腕が下向きになるような姿勢を保ってもらいます。
臥位の場合:患者さんに上半身を30度以上に起こしてもらってから、腕が下向きになるようにします。
採血の際は、採血管の臀部が下になるように構えるとよいでしょう。
●末梢静脈から点滴投与が行われている場合、血液に薬剤が混入すると検査データが変化してしまう可能性があるので、点滴が挿入されていない手足で採血します。
●血液透析のシャントや人工血管が造設されている場合、シャントや人工血管が閉塞する危険性があるため同じ側からの採血は禁忌になります。
●乳がんなどで腋窩リンパ節郭清をした患者さんも、リンパ浮腫や感染を起こしやすいため、切除側からの採血は適しません。
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内出血をしないためのポイント
内出血が起きる原因
内出血は、血液が組織内に漏れ出したことで起こる現象です。採血では血管に直接針を刺して傷をつけているため、穿刺部位の止血が不十分であれば内出血は起こります。そのため、採血後は反対側の指で5分程度採血部分を圧迫する必要があります。抗凝固剤や抗血栓剤を服用されている方は、10分程度と長めに止血を行います。
内出血を予防するためには、採血後に採血した側の手で重たい荷物を持つことは避けます。また、採血部位をもんだり叩いたりなど刺激しないように気をつけます。
内出血が起きてしまった際の対応
内出血が起きてしまったら、まずその部位を氷枕などで冷やします。強い痛みやしびれ、内出血の拡大が継続する場合は速やかに医師に報告しましょう。
動脈血採血
動脈血採血は、医師が行う手技ですが看護師が介助につくこともあるので手順などを知っておくと良いでしょう。
穿刺部位
橈骨動脈、上腕動脈、大腿動脈が使用されますが最も安全とされているのが橈骨動脈です。その際、尺骨動脈が閉塞していないかを確認(アレンテスト)してから行います。
アレンテスト:穿刺する側の腕を挙上し、両手で橈骨動脈と尺骨動脈を1~2分圧迫。手首から先が真っ白になったことを確認し、手を離す。離すと同時に赤みが戻らなければ尺骨動脈が詰まっている可能性があるためほかの部位を選択する。
穿刺
穿刺する部位を露出し、針を刺しやすいように位置を調整します。動脈血は高い圧で流れるため止血しづらく、また出血傾向のある人では止血した後に再出血することもあるので、医師が穿刺した後は、確実に圧迫・止血されているかを確認します。鼠径部に穿刺した場合は、止血のために安静が必要となるので患者さんへの説明の必要があります。
注意点
通常動脈血採血は、血中酸素濃度を測定するために計測することがほとんどなので、データに誤差が生じないよう測定後は空気に触れる時間をなるべく短くし、すぐに検査室へ持って行きます。
採血のためにスピッツに分注した後は、通常の採血時と同様に扱います。
動脈穿刺は強い痛みを伴う侵襲性の高い処置であるため、安心・安全に処置が行えるよう介助することが大切です。
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