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せん妄とは? せん妄の症状と看護

  • 公開日: 2017/7/6

せん妄とは

何らかの身体疾患または全身状態の変化に伴い精神症状が出現している状態のことをいいます。薬物の中毒、炎症、急性のストレス反応などが神経伝達物質を阻害し、さまざまな精神症状を呈するといわれていますが、まだ病態生理は明確にされていません。
せん妄であれば、身体疾患が治癒すれば精神症状も改善するという経過をたどります。せん妄は、症状により認知症やうつ病と見分けがつかないこともあり、せん妄であるかどうかを判断し適切に対応する必要があります。

① 注意・意識の障害や認知機能低下があるが認知症ではうまく説明できない
② 短期間で出現し、夜に症状が強くなるなど日内変動がある
③ 身体疾患や生理学的結果によるなど、外因的要因によって引き起こされる

これらが全て当てはまれば、せん妄である可能性は高いといえます。

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せん妄の原因

せん妄を引き起こすものとして、3つの因子があると考えられています。

準備因子

認知症、高齢など患者さんがもともと持っている、せん妄になりやすい状態です。以下に当てはまるものが多いほど、せん妄ハイリスクであると考えます。
70歳以上、認知症、視覚・聴覚障害、脳血管障害の既往、うつ病、アルコール多飲、せん妄の既往などが挙げられます。

直接因子 

薬剤、手術、身体疾患など単体でもせん妄を引き起こし得る因子のことをいいます。よくあるせん妄の原因の一つに『高カルシウム血症』がありますが、見逃されやすいので注意が必要です。
また、低活動型せん妄は肝性脳症や尿毒症性脳症などの代謝性脳症で起こりやすいといわれています。

促進因子

便秘、安静、感覚遮断などせん妄を悪化、遷延させる要因で、介入によって除去できるものもあります。せん妄は多くの因子がかかわって発症するため原因の特定が難しく、特に高齢者はより多要因であり、個人差が激しくなります。

また、『せん妄ハイリスク』患者には、せん妄を引き起こしてしまうリスクがあるため睡眠薬(ベンゾジアゼピン受容体作動薬)の投与を避けるべきであると言われており、その他にもエビデンスレベルの高い薬剤はありません。

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せん妄の症状

せん妄は、過活動型(活動過剰型)、低活動型、混合型という3種類に分けられ、それぞれ違った症状を呈します。

過活動型(活動過剰型):興奮、不眠、落ち着きがない、ラインやルートいじりをする、すぐに怒る、会話のトーンが高い、など
低活動型:傾眠、無気力、動作が緩慢、無関心、無表情、食欲の低下、会話量の低下や会話速度が遅い、反応が遅い、など
混合型:過活動と低活動の間を行き来しており、症状が混在する

不穏とせん妄は別のものであり、せん妄は不穏の原因の1つです。混同されることが多いのは、過活動型せん妄や混合型せん妄の症状が不穏の状態と類似しているからと考えられます。

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せん妄の治療

せん妄には直接因子が治療可能な可逆的せん妄と、進行性の疾患に伴って引き起こされる不可逆的せん妄という分け方があり、それぞれ介入の仕方が違います。

可逆的せん妄の場合、血液検査や頭部CT、胸部X線などの検査で原因(直接因子)を同定、治療することで症状の改善がみられます。必要時には、対症療法として薬剤を使用することもあります。

不可逆的せん妄の場合は、原因を取り除くことが難しいので、多くは睡眠の確保や不穏のコントロールを目標とした薬物療法がメインになります。

可逆的せん妄

内服薬を使用する場合、興奮が軽度であれば、レスリン®(デジレル®)を使用します。中等度以上の場合では、抗精神病薬を用いることになります。セロクエル®かリスパダール®のいずれかを使用しますが、セロクエル®は鎮静効果が強く、リスパダール®は、幻覚・妄想に効果を発揮する薬剤なので症状に応じて使いわけます。

注射薬の第一選択はセレネース®で、主に幻覚や妄想といった症状に効果を発揮します。効果に即効性を期待するか、持続性を求めるかで、投与の方法を変えます。
もっとも多い副作用のひとつに、パーキンソニズムがあります。パーキンソニズムは手がふるえる、歩き方がふらふらする、動作が遅くなる、手足が固い、などの症状があります。鎮静効果が得られないことがあり、その場合はサイレース®を併用しますが、呼吸抑制をきたす薬剤のため注意が必要です。

呼吸状態が悪い患者さんはアタラックスP®を使用しますが、呼吸抑制作用はないので、比較的安心して用いることができます。ただし、サイレース®ほどの強い鎮静効果はありません。また、単独使用ではせん妄を引き起こす可能性があります。
セレネース®やサイレース®、アタラックスP®といった薬剤は、いずれも「せん妄」に保険適応はありません。

不可逆的せん妄

鎮静を目的としてベンゾジアゼピンを使用します。その際、単独での使用は避け、抗精神病薬と併用します。

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せん妄の看護

せん妄の患者さんに対して薬物を使用する場合は、興奮が強くなる前の時間帯から抗精神病薬などの投薬を行うことです。せん妄が続いている間は、興奮が強まる前に不穏時や不眠時の頓服薬を積極的に使用しましょう。

せん妄ケアの原則

せん妄ケアの原則は、早期発見、早期介入、せん妄予防といわれており、予防するための介入が重要になります。
日時・場所の説明を繰り返し行う、カレンダーや時計を目に入りやすい場所に置く、日中は覚醒を促し夜間に良眠が得られるような工夫をする、眼鏡や補聴器を用いる、飲水をすすめるなどの対応が有効といえます。
また、便秘に対して排便コントロール行う、安静に対しては動くように促す(早期離床、歩行器の使用)ことも積極的に行います。

せん妄患者さんとのコミュニケーション

せん妄患者さんとコミュニケーションをとる際には、静かな落ち着いたトーンで話しかける、最初から言動を否定せずにまず理由を聞く、本当にせん妄かどうかを会話の流れで確かめる、当識障害の有無などを確認するなどを意識することで、興奮させず、なおかつ自尊心を傷つけることなく対応することができます。

せん妄のアセスメントスケール

リスク因子の有無に関わらず、少しでも違和感を感じたら専用のアセスメントツールを使用して評価します。
主なものに、CAM-ICU、ICDSC、日本語版ニーチャム混乱・錯乱スケール、せん妄評価尺度98年改訂版などがあり、患者さんの状況に合わせて使い分けます。

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