心不全の病態生理|急性・慢性心不全の病態を理解しよう!
- 公開日: 2014/10/15
心不全は、悪化すると死に至ることもあります。そのため、病態のしくみを理解した上で、看護を行う必要があります。
そこで、今回は心不全の病態生理ついて解説します。
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心不全の看護|原因、種類、診断、治療
心不全とは
心不全は「心臓の器質的、機能的障害により心臓のポンプ機能の代償機転が破綻し、心拍出量低下、末梢循環不全、肺・体静脈系のうっ血をきたし、日常生活に障害を生じた病態」です。
つまり、体内の血液循環が障害され、全身の器官に十分な酸素が行き渡らない状態。増悪を繰り返すと心筋障害が起こり、心筋の状態は不可逆に悪化していきます。
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症状の特徴
発症直後は、易疲労感、脱力感を示すことがあります。やがて、呼吸困難や咳嗽、四肢の浮腫など多様な症状をきたし、日常生活に大きな支障をもたらします。
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主な原因
心筋症、弁膜症、虚血性心疾患(心筋梗塞・狭心症)、先天性心疾患といった心疾患のほか、高血圧、甲状腺疾患などが原因となります。
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心不全の分類
表 心不全の分類
進展速度(時間)による分類
急性心不全とは
心臓での器質的・機能的異常によって、心臓のポンプ機能が破綻し、自己の代償機転では血液循環を保てなくなった状態にあり、その症状や徴候が急激に出現する病態を急性心不全といいます。軽症のものから、死に至るものまで、症状や徴候の発現は多様です。
■急性心不全の症状
1. 呼吸困難感
2. 食欲不振
3. 意識障害
4. 心停止
5. 心原性ショック
などがあります。
■原因となる疾患
慢性心不全の急性増悪、急性冠症候群(心筋梗塞・狭心症)、不整脈などの心疾患です。また術後や外傷患者さんの場合、大量輸液によって容量負荷が増加し、健康な心臓であったとしても心不全症状になることがあります。他にも、外傷による心挫傷、解離性大動脈瘤、重症大動脈狭窄症、肺血栓塞栓症などが原因になります。リスクファクターとしては、高血圧、糖尿病などがあげられます。
急性心不全の主な原因
慢性心不全とは
慢性心不全は、慢性的な心筋障害による心臓のポンプ機能の低下によって、代償機転ではカバーできなくなった状態です。主要臓器の酸素需要量に見合うだけの血液量を、絶対または相対的に拍出できなくなります。その結果として、血行動態の悪化が徐々に進行し、日常生活が著しく障害されます。
■慢性心不全の病態
患者さんの多くは、基礎疾患に心疾患があります。それまでは、加療や生活調整などで上手に日常生活に折り合いをつけていたのに、代償機転が破綻したことで徐々に疲れやすくなり「できていたことが疲れてできなくなる」「息切れがする」「手足がむくんできた(浮腫)」などを主訴として、入院してくるケースがほとんどです。
また、慢性心不全が増悪(急性心不全)して、緊急搬送される場合も多くなります。普段はエレベーターやエスカレーターを使っていたのに階段を使ったなど、それまでは何らかの助けを得て行っていたことを、自分だけの力で行ってしまったためオーバーワークとなり、心臓への負荷が大きくなって増悪を起こしてしまうのです。ほかにも、高齢者の場合は筋・骨格系の体力の衰えで心臓への負担が増大する人もいます。
自覚症状から心不全の重症度を分類するNYHA分類をみると、重症度に応じて症状がどのように現れるかがわかります。
■NYHA(ニーハ)分類
Ⅰ度(無症候性)
心臓に疾患はあるが、日常生活では症状(疲労、動悸、呼吸困難、狭心痛)が現れない。
Ⅱ度(軽症)
安静時には症状は現れないが、日常生活の労作で症状が現れる。
Ⅱs : 身体活動に軽度の制限がある
Ⅱm : 身体活動に中等度の制限がある
Ⅲ度(中等度~重症)
安静時には症状は現れないが、歩くなど日常的な身体活動以下の軽い労作で症状が現れる。
Ⅳ度(難治性)
安静時にも症状が現れ、ごく軽い労作で症状が出現する。
■慢性心不全の症状
1.全身倦怠感
2.呼吸困難感
3.運動耐用能低下
4.食欲不振
5.浮腫
■原因となる疾患
1.虚血性心疾患
2.高血圧
3.心筋症
4.弁膜症
5.不整脈
6.その他(サルコイドーシス、内分泌・代謝疾患(糖尿病、甲状腺機能異常)、栄養障害)
■慢性心不全の主な原因
●虚血性心疾患
●高血圧
●遺伝性、後天性を含む心筋症
・肥大型心筋症、拡張型心筋症、拘束型心筋症、不整脈原性右室心筋症、緻密型障害等分類不能群(心筋炎、産褥心筋症、たこつぼ型心筋症も含む)
・全身疾患や外的因子との関係が強い心筋症(湿潤性疾患、内分泌・代謝性疾患、栄養障害、薬剤、化学物質などを原因とする)
●弁膜症
●先天性心疾患(心房中隔欠損、心室中隔欠損など)
●不整脈(心房細動、心房頻拍、心室頻拍等頻拍誘発性、完全房室ブロック等徐脈誘発性)
●心膜疾患(収縮性心膜炎、心タンポナーデなど)
●肺動脈性肺高血圧症
(『ナース専科マガジン』2014年11月号から改変利用)
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