体位変換とポジショニング
- 公開日: 2017/11/21
体位変換とは(体位変換の目的)
自分自身で身動きが取れない人や、身動きが不十分な人に対し、介助者が定期的に体位を整えることを体位交換といいます。長時間同じ部分が圧迫されると、血行不良が起こり褥瘡の原因となります。また、動きが制限されることによる拘縮、変形の予防や、循環障害の予防も目的の1つとなります。患者さんの状態によりリスクの程度が変わるので、体位交換の頻度や方法はその人に合わせて決定します。
【体位変換の目的についての関連記事】
● 第5回 体位変換&ポジショニング
● 効果的な体位変換の目的とポジショニングを知ろう!
体位変換の方法(時間、手順)
これまで2時間ごとに行うとよいとされ、そのように実施している施設がほとんどでしたが、“2時間”という数字に明確なエビデンスはありません。『褥瘡予防・管理ガイドライン 第3版』では「粘弾性フォームマットレスを使用する場合には、体位変換間隔は、4時間を超えない範囲で行ってもよい」とされており、今後はルーチンで2時間ごとに行うのではなく、患者さんの状態や状況に合わせて、実施していくことが必要になると考えられます。
【2時間から4時間にするための考え方】
● 体位変換を2時間から4時間にするためのケアとは?
体位変換の注意点
・1つ行動するごとに患者さんへ声をかけ、不安を軽減する
・ベッドを適切な高さまで上げ、なるべく介助者の身体へ負担がかからないようにする
・ボディメカニクスを意識し、なるべく患者さんと密着することで介助者の負担を軽減する
・拘縮がある患者さんは骨折の可能性が高いので、無理に力を加えない
【体位変換ができないときの対処方法】
● 体位変換ができない場合の4つの要因と対処法
● 体位変換ができない場合の除圧は?
体位変換の流れ
一般的な体位変換の手順を紹介します。
●仰臥位から側臥位(介助者側へ向ける)
①胸の上で腕を組んでもらいます
②枕を手前にずらします
③踵がお尻に付く程度まで、なるべく高くなるように膝を曲げてもらいます(難しいようであれば支えます)
④片方の手で患者さんの肩、反対の手で腰を支えます
⑤腰、肩の順で向きを変えます
●仰臥位から端座位
①片方の手を患者さんの首元から差しこみ、首から肩にかけて支えます
②反対の手で上から患者さんの膝をかかえるようにして支えます
③患者さんの臀部を支点にし、頭が円を描くように回します
④③と同時に膝をベッドの下に降ろします
ポジショニングとは
患者さんの安楽な状態を保持することであり、そのために、クッションなどを使用し身体がずれないようにします。適切なポジショニングは、褥瘡、拘縮や変形の予防になります。
【ポジショニングの基本について】
● 体位変換後、安楽な姿勢保持と除圧が行える適切なポジショニングは?
ポジショニングを行う際の注意点
・患者さんの身体状態(浮腫、痩せ、骨突出、麻痺、ねじれ、ゆがみ、筋緊張の有無)を確認する
・適切なクッションやポジショニング枕(体圧分散用具)を使用する
・なるべく広い面で身体を支え、局所に圧がかからないようにする
【ポジショニングのコツがわかる】
● 【褥瘡予防】ポジショニングを行うときの6つの注意点
ポジショニングにおける良肢位とは
自力で身体が動かせなくなった場合に、日常生活における支障を最小限に抑える角度のことです。筋肉や関節にかかる負担が少ないので、関節の可動域の低下を防ぎます。
【麻痺・拘縮のある人の良肢位について】
● 第10回 麻痺・拘縮のケアと予防のポイント
● 拘縮患者さんの清拭のコツと注意点
車椅子、座位時のポジショニング
安全・快適な座位姿勢を保つ技術をシーティングともいいます。
車椅子、座位時のポジショニングのコツ
・股関節、膝関節、足関節をそれぞれ90度になるようにすることで、大腿後面で体重を支えることができる
・両肩を結ぶ線、両腰を結ぶ線をバックレストに対して平行になるようにする
・上半身の調整をすると時は、骨盤から移動させる
【誤嚥を防ぐポジショニングのコツ】
● 誤嚥を防ぐポジショニング
体位変換・ポジショニングに用いる道具
①クッション
さまざまな種類があるので、用途に合わせて使用します。
・傾斜つき枕
側臥位時に背部に差し込み、背部から臀部にかけて圧が分散するようにする。30度を超えると、臀部に圧がかかりすぎてしまう。
・長方形枕
下肢に隙間ができないように足の間や下に置く。
・四角枕
深い側臥位(半腹臥位)に、上半身の除圧、体圧分散のために使用。胸郭の動きを妨げないような位置に置く。
※円座は、仙骨部への除圧で使用されることがありますが、仙骨部周囲の円座と接している面が、圧迫されてしまうことで中心部の虚血状態を作り、結果的に褥瘡ができやすくなってしまうため注意。
※尖足予防のために使用する場合は、足関節がほぼ90度になるように硬く、支持性のあるクッションを使用する。
②体圧分散グローブ
ミトンを大きくしたような形で、指先から肘上までの長さがあります。外側は滑りやすく、内側は滑りにくくなっています。ベッド上での体位交換時、ポジショニングの圧抜きに使用します。
③スライディングシート
患者さんを持ち上げずに滑らして移動・移乗が行えるシートのこと。
【体圧分散の用具選択のポイント】
● 体圧分散用具の種類と選択のポイント
参考文献
田中マキ子:らくらく&シンプル ポジショニング.中山書店,2010.
田中マキ子:動画でわかる 褥瘡予防のためのポジショニング.中山書店,2006.