【浮腫とは?】浮腫の原因、メカニズム、治療・ケア
- 公開日: 2017/6/15
- 更新日: 2023/1/26
浮腫とは
水分(細胞外液)が血管やリンパ管外に染み出し、皮下組織(間質)に過剰に貯留することです。全身性と局所性のものがあり、そのうち全身性は心疾患、腎疾患、肝疾患が原因で引き起こされ、薬剤や、サプリメントの服用によって起こる薬剤性浮腫も含まれます。局所性は原因不明の一次性とリンパ節を摘出するリンパ節郭清による二次性に分かれますが、ほとんどは二次性です。血管神経性浮腫(クインケ浮腫)も局所性に含まれます。
浮腫のメカニズム
① 毛細血管内圧の上昇
心臓のポンプ機能の低下などで毛細血管内圧が上昇することにより、間質に水分が染み出し浮腫が生じます。心不全(右心不全)では、心臓から全身へ血液を送ることが出来ず右心内にうっ帯してしまい、心臓へ戻れず右心の手前であふれた血液中の水分が手足などの末梢に貯留してしまい起こります。
② 血漿の膠質浸透圧の低下
血管と間質を隔てている血管壁には隙間があり、水分や電解質が行き来して体液の調節を行っています。血中内のたんぱく質のうち67%を占めるアルブミンは血管内で水分を保持する役割(膠質浸透圧)があり、この機能が保てなくなるか血管壁に異常が起きると浮腫が生じます。アルブミンは肝臓のみで作られるため、肝疾患による浮腫のときは著しく低下し、水分を保持できなくなることでお腹に水分がたまり腹水が起こります。たんぱく質が低下する低栄養でも同様です。また、腎疾患では腎機能が低下することでたんぱく質が尿中に排泄され、血液内にナトリウムが増えるため浸透圧により浮腫が生じます。
③ 毛細血管の透過性亢進
なんらかの原因で毛細血管より水分が染み出しやすくなり、間質に水分が貯留し浮腫が生じます。
④ リンパ管の障害
リンパ管が圧迫や狭窄、閉塞することで流れが悪くなり浮腫が起こります。四肢に起こるものは、がん治療のためにリンパ節郭清を行ったことで起こることが多いです。
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浮腫のアセスメント
浮腫には緊急性が高く速やかに医師へ報告すべきケースがあります。適切なアセスメントで浮腫の原因を見極めていきましょう。
抑えておきたい観察ポイント
圧迫痕が残るタイプの浮腫は、アセスメントスケールを用いると分かりやすいです。圧迫痕が残らないタイプで圧痛があれば、炎症を起こしている可能性が高く、下肢であれば深部静脈血栓症を疑います。
浮腫の原因は、発生部位である程度推測できます。例えば、両下肢に浮腫を認めた場合は右心不全の可能性を考えます。これは、心機能低下によって静脈還流も低下してしまい、下肢に血液が停滞するためです。心機能の悪化に伴い、足背から膝下、そして大腿へと浮腫の範囲も拡大します。ただし、これは立位が取れる患者さんの場合であり、ベッド上で過ごすことが多い患者さんでは背部や臀部などに浮腫を認めます。
腎機能低下による浮腫は起床時に増強し、まぶたや顔面に生じるのが特徴です。なかでもネフローゼ症候群は全身に浮腫を認めます。また肝疾患からくる浮腫は腹水を伴うことが多いです。
呼吸困難感、易疲労感、チアノーゼ、尿量の減少といった随伴症状が強く表れている場合は、緊急性が高いと判断します。また、短時間のうちに浮腫が憎悪した場合にも、速やかに医師へ報告し指示を仰ぎます。
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浮腫のケア
浮腫改善のためのケア
浮腫は体内の細胞間質液が増加することで起こります。その量は健康な状態と比べて2~3L程度増えているとされています。その原因は①静脈圧上昇によるもの、②浸透圧の変動によって血管外に水分が漏れ出してしまうもの、③炎症によって血管壁の透過性が高まったことによるもの、の3つに大別されます。①は心不全や腎不全、②は肝硬変やネフローゼ症候群、また低アルブミン血症などの低栄養状態、③は熱傷や炎症性疾患などがもとになるため、疾患の治療や栄養状態を改善する必要があります。
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スキンケア
浮腫がある部位の皮膚は、パンと張りつめ光っているように見えるという特徴があります。また、細胞内に水分を蓄えておけず皮脂分泌能も低下することから乾燥傾向となります。皮膚のバリア機能低下でちょっとした刺激でも傷つきやすく治りにくくなるため、スキンケアで皮膚の保護に努めることが大切です。
保清の際は低刺激性の洗浄剤を選択します。こすり洗いは避け、処置後は速やかに保湿剤を塗布します。外傷を避けるため、爪を短く切ったり浮腫の部位は衣服で覆い露出を避けたりするなどの工夫も必要です。
弾性ストッキングによるケア
下肢に起こる浮腫のケアとして、弾性ストッキングを着用する圧迫療法というものがあります。この弾性ストッキングは、足先から大腿へと段階的に圧力差をつくように編まれた特殊なストッキングです。下肢に圧をかけることで静脈還流を促し、組織液が細胞間質へ流出するのを予防します。ただし、心不全がある場合は静脈内圧が高まり心不全憎悪につながる可能性があるため、弾性ストッキングの着用は避けます。
浮腫を引き起こす疾患と治療、ケア
<心疾患(うっ血性心不全)>
うっ血性心不全(右心不全)では、安静にすることで心拍出量を増加させ、水分の排泄を促します。利尿剤を使用することもありますが、その際は脱水や低K血症に注意が必要です。また、全身への血流が不十分なため酸素が不足して呼吸苦を伴うこともあるので、呼吸状態にも注意します。呼吸苦に対しては、起座位を取ることが有効です。
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<腎疾患(腎不全、ネフローゼ症候群など)>
心疾患と同様、安静にすることでNaの排泄を促します。塩分制限食となる場合もあります。透析が必要になる場合もあるので、治療がスムーズに行えるよう必要に応じて適宜説明を行います。
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<肝疾患(肝臓がん、肝硬変)>
肝性浮腫が起こる主な原因は肝硬変です。門脈圧亢進のためにお腹、足に浮腫が出やすくなります。安静、水分制限、塩分制限に加え、症状に応じて薬剤療法(利尿薬、肝細胞保護剤)、腹腔穿刺などで対応していきます。
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肝硬変による腹水
<その他(クインケ浮腫、遺伝性血管性浮腫、リンパ節郭清後など)>
クインケ浮腫は押さえても圧迫痕が残らず、痛みや痒みがなく、長くても数日で消失します。アレルギー性や遺伝性のものと考えられており、全身に再発を繰り返しますが上気道に浮腫が起きると呼吸困難となることもあります。がん治療が原因となるリンパ浮腫の場合、進行すると皮膚の乾燥や硬化、痛みや痺れを感じるようになるため、スキンケア、セルフケア指導、圧迫、リンパドレナージなど予防や早期治療が大切です。
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浮腫は皮膚組織の機能が脆弱になりドライスキンを引き起こすので、褥瘡の発生リスクが高まります。その上血行不良により治癒しづらい状態となるため、予防が重要となります。
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