ストーマとは? ストーマケアについて
- 公開日: 2017/7/1
ストーマとは
ストーマ(stoma)とは、『消化管や尿路を人為的に体外に誘導して造設した開放口のことをいい、前者を消化管ストーマ、後者を尿路ストーマ』といいます。広義には、腎瘻や膀胱瘻、胃瘻、その他の瘻孔も含まれ、以前は、『人工肛門』『人工膀胱』と呼ばれていました。ストーマを持っている人のことを『オストメイト』と呼びます。
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ストーマの種類
期間・目的部位・臓器開口部の数・機能によって分類されます。
期間による分類
永久的ストーマは、一生涯保有するストーマのことをいい、直腸から肛門に及ぶ疾患で肛門管を摘出する場合や膀胱全摘術による尿路変更術が必要な場合に造設されます。一時的ストーマは、結腸の手術で腹腔内感染や腸管吻合部の安静のため造設します。一定期間経過しストーマを閉鎖した後は、自然肛門から排泄することができるようになります。
部位による分類
■結腸ストーマ
結腸のいずれの部位で造設は可能であり、排泄される便は肛門から排泄される便臭とほぼ同様となります。また、便性は結腸部位によって異なり、下行~S状結腸ストーマはペースト状、横行結腸~上行結腸では粥状から泥状となります
■回腸ストーマ
結腸ストーマに比べて水様便の排泄量が多く、手術直後は1,000~2,000mL以上になることも少なくありませんが、徐々に残っている小腸の代謝機能が発達し、600~800mL程度に安定していきます。体調の変化や食事内容や量、抗がん剤などの薬剤使用により、排泄物の量が変化しやすく、脱水に注意する必要があります。
■その他のストーマ
消化管のその他のストーマとしては、食道で造設される食道皮膚瘻、空腸瘻などがあります。単孔式ストーマは腸管の断端で作成され、ストーマ孔が1つのものです。最近では、双孔式ストーマが多くなっています。
機能による分類
一般的に造設されるストーマは、括約筋がなく非禁制ストーマとなります。そのため、ストーマ装具を使用して排泄管理をします。一方、禁制ストーマは便をためる貯留嚢と失禁防止弁(漏れないようにする弁)を小腸で作成する複雑な手技を必要とし、排泄管理上もカテーテル管理となるため、適応が限られ、広くは行われていません。
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ストーマ造設術
まず、造設前にストーマサイトマーキングを行います。目的はQOLの維持と合併症の予防であり、マーキングの基本は、「クリーブランドクリニックの5原則」です。マーキングは、造設する腸管によって位置が異なります。
【クリーブランドクリニックの5原則】
1.臍より低い位置
2.腹直筋を貫く位置
3.腹部脂肪層の頂
4.皮膚のくぼみ、しわ、瘢痕、上前腸骨棘の近くを避けた位置
5.本人が見ることができ、セルフケアしやすい位置
単孔式ストーマ造設がストーマ造設の基本となっており、様々な場面で応用されています。ストーマ造設は、1.ストーマ貫通孔の作成2.腸管の挙上3.一時開口・粘膜皮膚縫合の順で行われます。
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● 第3回 ストーマの造設ー原因疾患と造設方法
● 第6回 スマートサイトマーキングの目的と手順
ストーマ装具
ストーマ装具は、面板とパウチからできています。面板とパウチが一体化しているストーマ装具はワンピース装具(単品系)と呼び、別々になっている装具はツーピース装具(二品系)と呼びます。二品系装具には、面板とストーマ袋をつなぐためのフランジ(嵌合部)があります。
交換時は、単品系の場合には面板とストーマ袋を一度に交換し、二品系は面板を貼付したまま、ストーマ袋の種類を交換することができます。
面板とはストーマ周囲の皮膚に粘着する皮膚保護剤の着いた部分をいい、面板の接皮側は皮膚を保護する成分で作られています。皮膚保護剤には汗や排泄物の水分を吸収する、排泄物に含まれる消化酵素やアンモニアの刺激を和らげる、皮膚についている細菌を増加させないという役割があります。
パウチは面板に接着し、ストーマからの排泄を受ける袋です。面板は、平型、凸型と形状の違いがあります。
平型:ストーマ周囲腹壁が平らでストーマの高さも十分あるときに使います。
凸型:ストーマ周囲腹壁が陥凹していたり柔らかくしわが多かったり、ストーマの高さが低いまたは陥没している場合に使います。
面板にはストーマの大きさにあった穴をあけてからストーマ周囲皮膚に貼ります。面板にはさみで穴を開ける種類はフリーカット(自由孔型)、既に一定の穴が開いている種類はプレカット(既成孔型)、指で穴を広げられる種類はモルダブル(自在孔型)と分けられます。
装具選択をする最大の目標は、排泄物が漏れることなく、皮膚障害を起こさないことです。腹壁の硬さ、ストーマの形、ストーマ周囲の皮膚の状態、患者さんがよくとる姿勢などで選択する種類が変わるので、患者さんに合ったストーマを選択すればトラブルは減らすことができます。
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● 最終回 ストーマ装具の選択の仕方
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術前~退院後までのケアの流れ
■入院前:不安の程度を確認
外来で術前オリエンテーションを受けていない場合はこのタイミングで行い、ストーマサイトマーキングを実施します。
■術直後:セルフケア指導を開始
患者さんが身体的に回復してきたら、腹部を触る、ストーマをみることなどからセルフケア指導を始めていきます。ただし、セルフケアは強制するのではなく、患者さんの状況に合わせて進めていく必要があります。創傷管理、ストーマの早期合併症の観察、ストーマ装具を使用した排泄管理を同時に行っていきます。
■離床~退院まで:セルフケアを確立
早期合併症の早期発見とストーマ装具の決定、セルフケアの確立が目標となります。座位または歩行が可能となってから、排泄物の破棄指導を開始します。患者さんに説明する時は、ストーマ袋は直腸や膀胱、ストーマ袋の排出口を肛門や尿道口と表現するとわかりやすいといわれています。
排泄物の破棄はトイレで行います。和式トイレでも洋式トイレでも、姿勢を工夫すれば特別な場所を必要とはしません。座っていることがつらいようであれば、臥位で行うこともあります。初回の装具交換は、患者さんにとってストーマおよび排泄経路を直視する初めての機会となるため、拒否的な態度を示したり、マイナスな発言をすることもあります。驚きや衝撃、防御的姿勢を示すことは受容や適応に必要な段階であると考え、保護的に見守っていきます。
セルフケア指導は、まず患者さんに誰に一緒に指導を受けてもらうかを確認します。家族などの支援者にストーマをみせたくないという場合は、患者さんのみでセルフケアを行うこともあります。
高齢者の場合、入院中のセルフケアの確立が難しくても、時間をかけてできるようになる患者さんもいます。「高齢者だからできない」と決めつけず、できるところとできないところを把握し、その人らしい生活が送れるような体制を考えていくことが大切です。そのため、退院後に在宅療養での支援が必要な場合や施設・転院が必要な場合は、この時期に同時に進めていきます。また、退院後の生活がイメージできるように進めていきます。
■退院後:外来で長期的に支援
セルフケアの確立がゴールではありません。退院後の相談窓口としてストーマ外来があることを伝え、定期的に受診してもらうようにします。施設にストーマ外来がない場合は、相談窓口もしくは他施設のストーマ外来の受診を勧めます。外来ではおもに装具のトラブルの有無、セルフケアの確認、障害の克服、体形や生活の変化、日常生活や社会復帰に関する相談などのケアを行います。ストーマがあっても、工夫次第でできることも増え、活動範囲も広がります。退院後も日常生活を安心して送れるよう、外来で長期的に支援していきます。
また、晩期合併症は退院後に発生する可能性もあるので、少しでも違和感を感じた場合はすぐに相談することが大切です。
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観察
術後の装具交換時は、ストーマおよび周囲皮膚、そして腹部全体を直視し、観察できる機会です。
【おもな観察ポイント】
1.ストーマの色:鮮赤色もしくはピンク色
2.サイズ:縦×横×高さ(腹壁から排泄口までの高さ)
3.ストーマ粘膜の浮腫の有無
4.排泄口の位置
5.皮膚粘膜接合部の状態(発赤、腫脹、疼痛、排膿の有無)
6.近接部の発赤、腫脹・びらんの有無・部位
7.皮膚保護材貼付部の発赤、びらん、潰瘍、毛嚢炎の有無・部位
8.皮膚保護材貼付外周部のびらん、潰瘍、毛嚢炎の有無・部位
9.正中創やドレーン等の位置・ストーマとの距離
ABCD-Stoma®のスケールを使うことも有効です。ABCD-Stoma®とはストーマ周囲皮膚障害の重症度を、部位と程度・色調変化の有無によって評価するスケールです。「ABCDStoma®」は、Adjacent(近接部)、Barrier(皮膚保護材部)、Circumscribing(皮膚保護材外部)、Discoloration(色調の変化)の頭文字をとって名付けられたものです。
1)ストーマ周囲皮膚を3つの部位に区分[図1]
2)A、B、Cの各部位ごとに、皮膚障害の程度を5段階で評価
3)A、B、Cの3部位それぞれに、Discoloration(色調の変化)がないか確認
4)合計点数を算出
5)「A○ B○ C○:○(点)D○」と表記
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● 第7回 手術後のストーマの管理と観察ポイント
● 「ABCD-Stoma®ケア」ってなに?
交換
ストーマはさまざまな年代、性別の人が使用するものであるためセルフケア能力は、日常生活動作(ADL)、視力、手指巧緻性、認知機能などから総合的に判断する必要があります。
スキンケア
ストーマを造設すると、皮膚は排泄物による化学的刺激、装具使用における閉鎖環境による炎症・感染、装具貼付による物理的刺激などさまざまな刺激を受けます。皮膚トラブルを起こさないためには、日頃からの予防的ケアが重要です。
排泄物による接触性皮膚炎は、ストーマ近接部に起こりやすい皮膚障害です。排泄物が常時触れることで発赤やびらんを起こします。予防対策としては、ストーマサイズに合わせて面板ストーマ孔を開け、定期的に装具の貼り替えを行います。
物理的刺激から保護するためには、装具を剥がすときに剥離剤を使用し、腹壁の皮膚を引っ張らないようにゆっくりとはがしていきます。洗浄後に水分をふき取る際は、押さえながら拭き取り、摩擦による刺激を減らします。また、洗浄するときのポイントは、石鹸や洗浄剤を泡立て、皮膚をこすらずに洗うとともに、石鹸成分が残らないよう十分に洗い流します。
皮膚保護剤によるアレルギー、感染などの場合は、皮膚科を受診し治療を行います。薬剤による治療が必要になる場合は、軟膏を塗布すると装具が貼付できなくなるため、ローションタイプを処方してもらうようにしましょう。
■物品を準備
ストーマ装具や使用しているアクセサリー、リムーバー、粉状皮膚保護材、石鹸、洗浄後にストーマ周囲皮膚の水分をふき取るためのコットンやガーゼ、ゴミ袋として使用する小さいビニール袋を1~2枚用意します。
■装具をはがして廃棄するまで
装具内にたまっている排泄物をトイレで捨てます。
次に、洗浄後すぐに装具が貼付できるよう、物品を手の届くところに置き装具も準備しておきます。必要であればストーマ孔のホールカットも行います。ストーマ孔のカットは洗浄後に計測してから行います。
リムーバーを使用して、ゆっくりと装具をはがしていきます。リムーバーを使用すると、浸透した部位は簡単に指が入りはがれていきますが、一度に全体をはがすことはできません。指がスムーズに面板下に入らなくなったら、再度リムーバーを使用し、浸透したらはがす、といった手順を繰り返します。
はがした面板を観察し、ビニール袋に入れて廃棄します。平面装具であれば、面板を半分に折りまげてから、ビニール袋に入れるとにおい漏れを軽減できます。凸面装具は折り曲げることができないので、装具を入れた時点でビニール袋を閉じるようにします。
ストーマについている排泄物をティッシュでやさしくふき取ります。その際、患者さんにストーマおよびストーマ周囲皮膚をみてもらい、発赤や疼痛部位がないかも確認します。
■洗浄から装具貼付まで
石鹸を使用し、ストーマ周囲皮膚を面板貼付外から泡立てた石鹸で、中心に向かってやさしく洗います。患者さん本人からは見えにくい下側は、汚れが残りやすいため注意が必要です。その後、シャワーで石鹸のぬめりがなくなるまで、十分に洗い流します。
ストーマ周囲皮膚の水分をふき取り、皮膚が乾燥した状態になるようにします。
ストーマの計測を行い、ストーマ孔のカットを行います。ストーマ孔は、ストーマから全周2~3mm程度大きくすることで、ストーマ粘膜を傷つけずに装具を貼ることができます。ただし、ストーマの種類や排泄物が出るときのストーマの大きさの変化の有無、セルフケア能力、合併症の有無によって差があるため、患者さんが安全かつ確実に装具を貼ることができ、粘膜皮膚接合部における皮膚障害が最小限になるようストーマ孔のサイズを検討します。
ストーマ周囲皮膚が濡れていないかを確認し、ストーマ基部に粉状皮膚保護材を散布します。粉状皮膚保護材を使用するのは、ストーマ基部と近接部の面板が貼付できない部分を保護することが目的です。面板が貼り付く部分に粉状皮膚保護材がついていると貼り付かなくなるため、余分な粉状皮膚保護材は払い落します。
腹壁を軽く伸ばしながら、装具を貼付します。ストーマ近接部が密着するように周囲を押さえます。ストーマが見えにくい、姿勢によって見え方が異なるといった場合は、患者さんがやりやすい姿勢を選びます。
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オストメイトのまたはストーマ保有者の入浴
■左側結腸の場合
術後の回復とともに、便性が軟便から有形便に変化してくると、排便パターンも決まってきます。食後2時間以降で、かつ排便がない時間を選んで入浴やシャワー浴ができます。
■右側結腸、回腸の場合
右側結腸や回腸ストーマは、排泄物が水様性から軟便のため、排便のない時間の確保が難しい状態です。入浴はパウチをつけたまま行い、装具は洗髪後にはがします。身体を洗うのと同時にストーマ周囲皮膚も洗浄します。終了後は、装具を貼付していない間に排泄物で周囲が汚れるのを防ぐために、ストーマにコットンやティッシュなどを当てながら身体を拭きます。
■自宅で入浴するとき
浴槽に、ストーマ装具を取り外して入るか、ストーマ装具を付けたまま入るか、どちらでも構いません。腹腔内圧のほうが浴槽内の水圧よりも高いためお湯がストーマから体内に入り込むことはありません。
公衆浴場では、食前か食後しばらく経った排泄の少ない時間帯を選び、必ずストーマ装具を付けて入ります。
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ストーマの合併症
早期合併症
循環障害 壊死、脱落:循環障害はストーマ造設術直後から発生するリスクがあります。
粘膜皮膚接合部離解:粘膜皮膚接合部離開は、ストーマ造設時の汚染による皮膚粘膜縫合部直下の膿瘍形成、循環障害による局所的な壊死、引き上げた腸管の直径に比較して腹壁にあけた皮膚の孔が大きく、縫合した腸管に著しい張力がかかる場合に発生します。
出血、循環障害はストーマ造設術直後から発生するリスクがあります。
晩期合併症
退院後以降、社会生活を営むストーマ保有者に発生する可能性があります。
■ストーマ狭窄
術後、粘膜皮膚接合部の離開やストーマ粘膜の血流障害が起こった後、周囲の皮膚や皮下組織に瘢痕が形成されて治癒します。
■ストーマ陥没
血流障害によりストーマ粘膜の一部が脱落し、ストーマ口が皮膚より低い位置になってしまった場合や、腹壁の脂肪層の中にストーマが埋まった状態となり、相対的に高さがなくなった状態を指します。
■ストーマ脱出
造設時に比べ、ストーマが外翻して飛び出した状態 また、一度脱出すると再発のリスクが高まります。
■傍ストーマヘルニア
最も頻度が高い合併症で、ストーマ周囲の皮膚が膨らむ状態(膨隆)になります。造設時に腸管を体外に引き出す際、腹壁にあけた孔から腹腔内の小腸や大網などの構造物が脱出する
■出血
面板のホールカットが小さすぎることによるストーマ粘膜の損傷や、うっ血などにより出血することがあります。多くの場合は静脈からの出血で、圧迫止血が可能
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