【冬の感染症など】気象病とは? その他どんな疾患があるか知っておこう
- 公開日: 2016/11/27
冬になると多発する疾患というとインフルエンザやノロウイルスにより胃腸炎などを思い浮かべる人が多いかもしれません。実際には、そのほかにも冬に多発したり増悪したりする疾患があります。ここでは、気象病という概念や冬に多発・増悪する疾患について解説している記事を紹介します。
気象病とは?
気象病は正式な病名ではありません。気温や気圧の変化などが身体にストレスを与え、発症リスクを高めたり増悪するものを「気象病」と称します。
では、気象条件は身体にどのような影響を与えるのでしょうか。乾燥するとインフルエンザなどの感染症が流行することは、よく知られています。その他、気温や気圧の変化によっても体調は変化します。まず、気温の変化は自律神経に影響します。さらに、気温が下がると血圧が上昇します。
次に気圧による変化ですが、気圧が低下すると痛みが増強するといわれています。また、気圧の急激な変化は身体にストレスを与え、自律神経のバランスを崩すといわれています。冬に発症・増悪のリスクが高まる疾患は、心筋梗塞などの循環器系疾患、気管支喘息などの呼吸器系疾患、感染症のほか、炎症性疾患などが挙げられます。
気象病に関する記事
・気候・気象と病気の関係
・冬と疾患の関連性
冬によくみられる感染症
冬によく発症する疾患といわれて、思い浮かべるのがインフルエンザやノロウイルスによる感染性胃腸炎、さらに肺炎ではないでしょうか。これは、乾燥している冬は細菌やウイルスが飛散しやすいことや、咽頭粘膜の絨毛運動が低下することなどが原因と考えられています。
インフルエンザは、小児ではインフルエンザ脳症を、高齢者では肺炎を合併するリスクがあり、重症化すると死に至ることもあるため、院内での発症が見つかった場合も、自身が罹患した際もしっかりと対処することが必要です。
ノロウイルスによる感染性胃腸炎は、激しい嘔吐や下痢、腹痛などが主な症状です。吐瀉物や糞便から直接感染することもあります。
院内で発生した場合は、吐瀉物や糞便を的確に扱わなければなりません。また、手指衛生などのスタンダードプリコーションを遵守することが大切です。さらに、嘔吐や下痢などで脱水症状を呈することがあるため、そういった徴候がないか観察するようにしましょう。
肺炎は市中肺炎と院内肺炎に分類されます。院内肺炎は入院後48時間以降に新たに発症したものをいいます。微生物が肺胞に入り、そこで増殖することで肺に炎症が起こる疾患です。咳嗽、喀痰、呼吸困難、胸痛、発熱、頭痛、全身倦怠感などが見られます。
冬によくみられる感染症に関する記事
・院内感染を防ぐ! インフルエンザ対策
・ノロウイルス性胃腸炎対策と看護ケア
・感染症が発症したときに重要なことは?
・【肺炎の看護】肺炎の病態・種類と観察項目
冬に増悪・発症する狭心症や心筋梗塞
狭心症と心筋梗塞は虚血性心疾患に含まれます。虚血性心疾患とは、冠動脈がさまざまな原因で狭窄したり、閉塞したりすることにより心筋が虚血した状態になる疾患です。
狭心症は、労作性狭心症、異型狭心症、不安定狭心症の3つに分けられます。労作性狭心症は運動などを行ったときに起こります。一方、異型狭心症は夜間から早朝の安静時に起こることが特徴です。労作性狭心症が増悪したものが不安定狭心症で、心筋梗塞へ移行するリスクがあります。
心筋梗塞は、一時的に冠動脈の血流が途絶えて心筋が壊死した状態になる疾患です。主な症状は、激しい胸痛や冷汗、悪心・嘔吐、呼吸困難、30分以上持続する紋扼感など。
狭心症も心筋梗塞も心電図に表れます。労作性狭心症の場合は、ST部分の低下、異型狭心症の場合は、ST部分が上昇します。心筋梗塞は、ST部分の上昇や異常Q波が見られます。心筋梗塞は、心筋マーカーと呼ばれるCK、CK-MB、トロポニンT、H-FABP、心筋ミオシン軽鎖Iなどの上昇が見られます。
狭心症と心筋梗塞に関する記事
・心筋梗塞と看護ケアのポイント
・虚血性心疾患(心筋梗塞と狭心症)を判断するための検査データは?
・心筋梗塞の血液検査|鑑別に用いる4つの心筋マーカー(CKなど)
・【急性心筋梗塞】検査値の看護への活かし方
・心筋梗塞の4段階の心電図波形の変化とは?
冬に発症しやすい脳出血や脳梗塞
気温が低下すると血圧が上昇すると紹介しましたが、脳出血の多くは高血圧が原因のため、血圧が上昇するような気候の場合は注意が必要です。また、脳塞栓は冬だけでなく、猛暑日で脱水症状を起こしているような状態でも発症することがあります。
脳出血の場合は、脳内に出血が起きると頭蓋内圧が亢進し、頭痛や悪心・嘔吐などが見られます。さらに、意識障害があるときは、JCSやGCSを用いて意識レベルと確認します。脳梗塞の場合は、まずはrt-PA静注療法が適応かどうかの判断から始めます。
脳出血や脳梗塞に関する記事
・脳出血の治療と3つの看護ケア
・激しい頭痛を訴える患者さんへの問診・看護
・脳卒中(脳梗塞・脳内出血・くも膜下出血)の基礎と看護の役割
・意識レベルの評価法、JCSとGCSの特徴とは?
冬に増悪しやすい気管支喘息
気管支喘息は冬や季節の変わり目に増悪しやすい疾患です。気管支喘息は慢性の気道炎症や気道過敏症の亢進によって気道が狭窄・閉塞を起こしている状態で、アトピー型と非アトピー型とがあります。重篤な喘息発作の場合、高度の換気障害や心停止、呼吸停止に至る可能性があります。
冬に増悪しやすい気管支喘息に関する記事
・【気管支喘息の看護】症状と診断、治療の流れ
・【呼吸困難の看護】心不全か呼吸不全なのか見極めるための6ステップ!