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排尿障害|種類と原因、看護、看護計画など(まとめ)

  • 公開日: 2020/6/11

排尿障害とは

 排尿障害とは、膀胱に尿をためて排泄するという過程において、何らかの障害をきたした状態をさします。

 排尿のプロセスは次の通りです。
1)膀胱に尿がたまり始めると、その刺激が脊髄を介して大脳皮質に伝わり、尿意となります。
2)大脳は膀胱の弛緩と尿道括約筋を収縮させる命令を排尿中枢に伝達し、蓄尿できる状態を作ります。
3)排尿時には、膀胱の収縮と尿道括約筋を弛緩させる命令が同時に大脳皮質から排尿中枢へ伝達されます。

 このプロセスのどこかの機能が障害されると排尿障害をきたします。

排尿障害の種類

 排尿障害は次の2つに大別されます。

・畜尿障害
膀胱に尿をためることが困難になる障害です。原因には、膀胱排尿筋が過活動となる、尿道括約筋の収縮が弱いなどがあります。症状としては、尿失禁や頻尿が現れます。

・排出障害
溜まった尿を排泄することが困難になる障害です。原因には、膀胱排尿筋の収縮が弱い、尿道括約筋の弛緩が弱い、尿道に異常があるなどがあります。症状としては、排尿困難や尿閉が現れます。

表1 排尿障害の種類と症状

種類 症状
畜尿障害 頻尿、尿失禁(腹圧性、切迫性、混合性、機能性、溢流性)
排出障害 排尿障害、尿閉
その他 多尿、乏尿、無尿

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排尿障害の症状

 排尿障害による具体的な症状は次の通りです。

多尿

 尿量が増加し、2,500mL/day以上となった状態を多尿といいます。多尿の主な原因には、抗利尿ホルモンの分泌量が低下して尿量の調整がうまくいかなくなる場合や、ホルモンの量は問題ないが腎機能が低下してしまっている場合などがあります。原疾患として代表的なのものは、下垂体腫瘍や糖尿病などです。また、夜間帯の尿量が減少せず何度もトイレに起きるものを夜間多尿といいます。

頻尿

 頻尿は、排泄回数が増加した状態です。一概にはいえませんが、8~10回/day以上で夜間の排泄回数が2回以上を頻尿の目安とします。頻尿には、尿量が増えて頻尿となる場合と、尿量は変わらず回数だけが増えている場合があり、前者は多飲や腎疾患、後者は膀胱炎などが原因の1つです。

尿閉

 膀胱に溜まった尿を出すことができない状態をいいます。前立腺肥大により尿道が塞がれてしまったり、服用している薬の副作用、排尿にかかわる神経に障害がある神経因性膀胱などで起こります。

乏尿

 乏尿とは、尿量が減少し400mL/day以下となった状態です。腎機能低下や脱水、尿管結石などが誘因となります。

無尿

 無尿とは、尿量が100ml/day以下の状態をいいます。無尿の状態が続くと体内の電解質バランスが崩れ、腎機能不全の状態となります。

尿失禁

 さまざまな原因により、意図せずに尿を漏らしてしまう状態をいいます。
 尿失禁には次のようなものがあります。

表2 尿失禁の種類と原因

尿失禁の種類 原因
腹圧性尿失禁 くしゃみや重いものを持ち上げるなどした際に、腹圧がかかった拍子に尿漏れを起こす状態。骨盤底筋の筋力低下、加齢、出産後に起りやすい。
切迫性尿失禁 突然、強い尿意をもよおしトイレに間に合わず失禁してしまう状態。原因は過活動膀胱で、神経因性のものでは脳血管障害や脳神経疾患、非神経因性のものでは加齢、前立腺肥大症、子宮脱などが多い。
混合性尿失禁 腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁のいずれの症状も呈するタイプの尿失禁。
機能性尿失禁 排尿機能な問題はなく、認知症、歩行困難、排尿動作に手間取るなど、間接的な原因によってトイレに間に合わず失禁する状態。
溢流性尿失禁 膀胱に溜まった尿を自力で出すことが難しくなるために、溜まった尿が少しずつ漏れ出してしまう状態。前立腺肥大、前立腺がん、尿道狭窄、骨盤内手術後などに多い。

排尿障害の原因疾患

 排尿障害の原因疾患には次のようなものがあります。なお、男性・女性それぞれに多い原因疾患には次のものが挙げられます。

・男性に多い原因疾患:前立腺肥大症、前立腺がん
・女性に多い原因疾患:加齢や出産による骨盤底筋群の筋力低下、膀胱炎

前立腺肥大症

 前立腺が何らかの原因によって肥大した状態です。原因はまだよくわかっていませんが、加齢により増加することから、男性ホルモンの減少によりホルモンバランスが変わるためではないかと考えられています。前立腺はもともと栗の実大ほどの大きさで、膀胱のすぐ下で尿道を取り囲むように位置しています。そのため、前立腺が肥大すると膀胱や尿道を圧迫し、尿の切れの悪さや頻尿、尿閉といった症状が現れます。

膀胱炎

 膀胱炎は、膀胱に細菌などが侵入することで膀胱粘膜に炎症が起きた尿路感染症の1つです。多くは尿道から細菌が侵入し、膀胱で増殖して起こります。尿道が男性より短い女性に多く、免疫力の低下、薬物の影響、放射線治療の副作用などにより発症しやすくなります。原因菌は大腸菌が多く、発熱のほか頻尿、排尿痛などの症状が現れます。上行性に腎盂まで感染が溯ると腎盂腎炎になることがあります。

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・膀胱炎とは?原因・診断・検査・治療について

脊髄損傷

 脊髄損傷は、事故の外傷などにより脊髄に損傷が及んだ状態です。脊髄を損傷すると、膀胱や尿道の知覚が脳に伝達されず、脳からの伝達も膀胱排尿筋や尿道括約筋に伝わらなくなります。この結果、尿意や便意を感じなくなり、畜尿・排尿機能にも障害が現れます。なお、損傷部位に関わらず脊髄損傷では、高確率で排尿障害を起こします。バルーンカテーテルの留置や自己導尿により、排尿管理を行っていきます。

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糖尿病

 糖尿病の合併症の1つである糖尿病神経障害が起こると、排出障害の症状が現れることが多くなります。自律神経が障害されるため、尿意を感じにくくなります。また、尿の出しづらさや残尿も生じます。

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脳血管障害

 排泄機能は脳によってコントロールされているため、脳血管障害では排尿障害を伴いがちです。一般的な経過としては、急性期では尿閉をとなり、病気の進行とともに尿失禁や頻尿などの過活動膀胱に移行することが多いとされています。

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排尿障害のその他の原因

薬の影響

 排尿障害の誘因となる薬剤もあるため、患者さんの服用している薬の内容を把握しておくことは大切です。副作用として排尿障害の可能性をあげている主な薬剤は次の通りです。

1)蓄尿障害:膀胱の収縮と尿道括約筋の弛緩が起こります。
・ハルナール…前立腺肥大症に対する治療薬。α1遮断作用
・アリセプト…アルツハイマー型認知症治療薬。アセチルコリンエステラーゼを阻害
・デプロメール…抗うつ薬
・エチゾラム、メイラックスなど…抗不安薬及び鎮静薬。中枢性の筋弛緩作用

2)排泄障害:膀胱が弛緩し尿道括約筋は収縮します。
・レボドパ、アキネトンなど…パーキンソン病治療薬で抗コリン作用
・ソセゴン…鎮痙薬。抗コリン作用
・リスペリドン…抗精神病薬。抗コリン作用
・ゼスラン…抗アレルギー薬。抗コリン作用
・リスモダン…抗不整脈薬。抗コリン作用
・モルヒネ、MSコンチン、デュロテップパッチ…麻薬。オピオイド受容体を介して排尿反射を抑制

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神経因性膀胱

 排尿をつかさどる神経系が何らかの原因によって障害を受けたことで蓄尿や排出の機能に障害をきたします。排尿中枢は延髄の橋に1つ、そして仙髄に1つあります。橋の排尿中枢が障害されると排尿のコントロールが不能となるため頻尿や過活動膀胱の症状が現れ、仙髄の排尿中枢が障害されると膀胱がうまく収縮しないために排尿困難の症状を呈します。脊髄損傷や糖尿病の合併症として起こる排尿障害も、この神経因性膀胱の1つです。

カテーテル抜去後

 バルーンカテーテル抜去後、尿閉や尿失禁などの排尿障害を起こすことがあります。手術や術後の経過などにより長期間留置していた患者さんのでは、膀胱や尿道の括約筋の働きが低下しているため、しばらく尿失禁を繰り返すことがあります。そのため、カテーテル抜去後は排泄状況の把握と排尿自立に向けた介入が必要です。

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排尿障害患者の看護

観察とアセスメント項目

 排尿障害の原因はさまざまです。どのような症状があるか、その症状はいつごろから自覚し始めたかを聞き取り、排尿障害を引き起こす基礎疾患や手術歴、認知機能やADL低下の有無などを把握して、原因を絞り込んでいきます。後述する排尿日誌の活用なども排尿状態の把握に役立ちます。

主なアセスメント項目
・発症時期
・1日の排尿回数(日中・夜間)
・1回あたりの尿量
・年齢・性別
・基礎疾患・合併症
・手術歴
・出産歴
・ADL
・認知機能
・服薬状況(排尿障害を起こしやすい薬剤を服用しているか)
・1日の水分量
・自覚症状…尿意の有無、尿意の自覚から排尿までの間隔、残尿感、排尿時痛など
・残尿の有無

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排尿障害に関する検査

 排尿障害の原因疾患の鑑別や排尿状態を把握するための検査には次のようなものがあります。

・尿検査:細菌の混入があれば細菌培養にかけ、菌の特定を行います
・尿細胞診:採取した尿を顕微鏡で確認し、尿路系腫瘍細胞の有無を調べます
・画像検査:CTやMRIのほか、造影剤を用いた静脈性腎盂造影検査(intra venous pyelography:IVP)、膀胱造影検査(cysto graphy : CG)、尿道造影検査(urethro graphy : UG)がなどあります。IVPでは造影剤が尿路経由で排泄されるため、尿路通過障害の有無がわかります
・残尿測定:排尿後、超音波を用いて膀胱内に尿の貯留がないか調べます

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排尿日誌

 排尿日誌は、排尿自立指導に欠かせないツールです。排尿日誌に記録する主な項目は、排尿した時間、1回あたりの尿量、尿失禁の有無、摂取した水分量などです。このほか、起床時間や就寝時間、尿失禁が起こった際の行動などを記載すると排尿パターンの読み取りがスムーズになります。

 排尿日誌のほか、頻度・尿量記録、排尿時刻記録のテンプレートは日本排尿機能学会のホームページでダウンロードが可能です。詳しい記入方法や症状別の読み取り方については、以下のリンクを参照ください。
排尿日誌の例

図 排尿日誌の例

 日本排尿機能学会のホームページはこちら。
・日本排尿機能学会|各種ガイドライン・ガイドライン作成委員会

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膀胱訓練・骨盤庭筋群トレーニング

 膀胱訓練は、切迫性尿失禁に有効とされているリハビリテーションです。水分摂取と尿意の我慢を併せて行い、膀胱を徐々に広げることで尿をためられるようにすることを目指します。目標とする1回当たりの尿量は200~400mL、間隔は3時間程度です。
 患者さんが自分の意思で排尿のタイミングをコントロールできるようになると、QOLの維持・向上につながります。

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排尿障害患者の看護計画

 例として「過活動膀胱」の看護計画を示します。

看護問題
#1 排尿機能の障害
#2 過活動膀胱による精神的ストレス
#3 排泄パターンの変調に伴う社会生活への適応困難

看護目標
・排尿パターンを確立し社会生活がスムーズに送れる
・排尿パターンを確立するためのセルフケアが行える

観察計画
・排泄状況(排尿回数・尿量・排尿にかかる時間・尿失禁の有無など)
・1日の水分量と摂取するタイミング
・服薬状況
・ADL
・認知機能
・病識
・感染兆候の有無(血液データ・バイタルサイン・尿検査・画像診断)
・排泄環境(トイレまでの移動のしやすさ・トイレ様式など)

ケア計画
・水分摂取のペースとタイミングの調整
・排尿パターン確立のための排尿誘導
・尿失禁をした場合の環境整備と清潔保持
・傾聴

教育計画
・膀胱訓練
・骨盤底筋群トレーニング
・排尿日誌の記入方法の指導

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術後排尿障害患者の看護計画

 次に例として、「術後排尿障害(カテーテル抜去後)」の看護計画を示します。
 カテーテル抜去後に、何らかの排尿障害が生じる可能性を予測した看護計画を立て、必要に応じて排尿ケアチームと連携を取ってケアにあたります。

看護問題
#1 手術侵襲による排尿機能障害
#2 術後安静や使用薬剤による腹圧低下
#3 排尿障害による不安
#4 尿閉による感染リスク

看護目標
・術後の状態に応じた排尿パターンが確立できる
・排尿障害に対する不安が軽減する
・感染を起こさない

観察計画 
・術式
・カテーテル抜去後の排尿の有無と1回量、性状、24時間尿量
・尿意の有無
・残尿、失禁の有無と程度
・水分量、食事摂取量
・服薬状況、麻酔の種類と使用量
・安静度
・排泄環境(リラックスできるか、腹圧はかけやすいかなど)
・腹部症状(下腹部痛・膨満など)
・不安や精神症状(せん妄など)の有無と程度
・バイタルサイン
・検査データ(血液検査・尿検査・画像検査・細胞診など)

ケア計画
・排尿日誌の記録を通した排尿パターンの把握
・抜去後は3時間おきに排尿誘導
・安全安楽に排尿できる環境の調整
・水分摂取の誘導
・体位の工夫
・保清
・傾聴

教育計画
・術前にカテーテル抜去後の排尿障害について説明
・患者さんの状態に合った排尿パターンと水分摂取のタイミングについて指導
・腹圧性排尿の指導
・排尿日誌の記入方法の指導
・自己導尿の指導

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排尿障害に関するガイドライン

 排尿障害に関するガイドラインには、次のようなものがあります。

・過活動膀胱診療ガイドライン
・脊髄損傷における株尿路機能障害の診療ガイドライン[2019年版](脊椎損傷における排尿障害の診療ガイドライン)
・男性下部尿路症状・前立腺肥大症診療ガイドライン(男性下部尿路症状診療ガイドライン)
・女性下部尿路症状診療ガイドライン第2版

 ガイドラインは適宜改訂になるため、定期的に確認してアップデートしていきましょう。
 主なガイドラインは下記の日本排尿機能学会のホームページで確認できます。
・日本排尿機能学会:各種ガイドライン・ガイドライン作成委員会

<参考文献>
日本腎臓学会:3.腎臓がわるくなったときの症状.https://www.jsn.or.jp/global/general/_3225.php2020年6月5日閲覧.
日本コンチネンス協会:排泄ケアの基礎知識.http://www.jcas.or.jp/care.html2020年6月5日閲覧.
日本排尿機能学会:各種ガイドライン・ガイドライン作成委員会http://japanese-continence-society.kenkyuukai.jp/special/?id=158942020年6月5日閲覧.

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